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タイトルは「小説の書き方」  作者: ドライパイン
4 古谷の筆は進まない
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α 物書き古谷の僅かな嘘

 電話のなる音で古谷は目を覚ます。休日で用事もないからといって朝9時までぐっすり眠るのは若者としていかがな物かとふと考えた。

「……はい、古谷です」古谷の電話にはナンバーディスプレイがついていない。マンション売りの類なら嫌だなと思いながら電話をとった。

「河辺先生、おやすみでしたか?」電話口からは女性の声。正直古谷はその人物の声を今は聞きたくなかった。彼自身にも電話がかかってくる思い当たりがあるので、申し訳ない気持ちもあったが。

「いや、ゴメンナサイ」と寝起きの声ながらたじろいでしまう古谷。

「そんなことはどうでもいいんです、重要じゃないんです。来週分のコラムは出来上がっているんですよね」電話口の声は畳み掛けるようにして問いかけてくる。

「大丈夫です、今からメールで送信しますので」念の為に昨日の夜書いておいて良かった、と古谷は胸をなでおろした。

「良かったです、ウチのような弱小地方新聞のさらに週刊部のコラムでも、欠けてしまうと読者の人には変に思われますし」電話の向こうから怒号。前から古谷は思うが、この人は身内から恨みを買いすぎている。多分わざとなんだろうけど。

卯島ウシマさん、編集部の空気わざわざ悪くしなくてもいいでしょう」自分にはあまり関係ないがこの人に辞められても困ると考える古谷。

「いいのよいいのよみんなサボり魔ばっかりなんだから」後ろの怒号も全く効かないという風に話す卯島。それじゃあメールお願いしますね、といって電話が切れた。バリバリの編集者であるし、けして悪い人ではないんだがな、と古谷は頭をかいた。

 パソコンに向き合ってふと古谷は思う。

 僕は烏丸さんに幾らかの嘘をついている。

 まずは僕は「かつて」物書きであったのではなく、「今も」物書きであるということを。


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