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タイトルは「小説の書き方」  作者: ドライパイン
A 喫茶店にて二人は語る
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1 オマージュと方程式

「小説の『参考にした』っていうのはどこまで許されるんでしょうかね」パインジュースをストローで吸い込んだ後、唐突な疑問を口にする烏丸。

「パクリとオマージュの差ってなんだろうな、の部分だよな」一方の古谷はウインナーコーヒー。烏丸につらててストローを持って来てしまっていた。

「和歌や川柳だったり、そのネタを知っている人にとっては面白いと感じさせるネタを作れればいいんですけど」あっという間にグラスのコーヒーを飲み込んでしまい、手持ち無沙汰な烏丸。鞄から文庫を取り出す。

「分からない人にとっては『こいつは何でこの発言をしたんだろう』としか思われないのは辛いよな」クリームをスプーンで掬って食べる。烏丸は驚いたような顔をした。

「なんでクリームだけ食べるんですか……」

「甘いし美味しいし」これが自然だという風に古谷が返答する。

「ソフトクリーム頼んだほうがいいんじゃないですか?」

「あれは甘すぎるし冷たいから」

「食にうるさいと家庭を持ったら苦労しそうですねぇ……」と呆れ顔の烏丸。

 普段は普通の嗜好だから大丈夫だ、と古谷は言う。言いつつまたクリームを掬って飲み込む。コストパフォーマンスは悪いんじゃないかと烏丸は考えた。

「『方程式もの』ってあるじゃん、あれは設定ないし条件自体をまるまるパクっていることになる」と急な話題転換を試みる古谷。言われ続けるのが面倒になったのだろうか。

「ある意味原作のネタバレを前提にして、そこから覆す意味合いが大きかったりしますから」

「それはパクリだけど、それ以外の部分で評価しようがある、からなのかな」曖昧に濁す古谷。

「結果的には」思うところがあったのか、やや俯きがちに問う烏丸。

「評価されるかどうかが焦点、というところなんでしょうか」

「む……」考えこむように、目線を天井の方へ向ける古谷。

 互いに考えこむ。ふたりとも飲み物の容器は空っぽである。注文のために古谷が手を挙げた。

「私はアメリカンコーヒーで」時節はまだ暖かいといえども、少し口が冷えた烏丸。

「ウインナコーヒー、コーヒー抜きで」一方で常識はずれの注文をする古谷。

 かしこまりました、となんでもないように注文を書くウェイター。思わず目を見張る烏丸であった。

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