10 そして小説を書きはじめる
騒動が起こって2日間、手をつけていなかった烏丸自身の小説。
残ったページは後数枚程度になるだろう。
書き残したプロット、何処かにおいてきた伏線。時にはノートをめくり、ネットのページを見返したりを繰り返して執筆を続ける。
小説をもう書こうか止めてしまおうかの境地に立っている2人。あくまで書くことは別の手段でしか無かった1人と、彼女に打ちのめされてしまっていた1人。
自分の小説がどちらにとっても無意味なものだろうことを烏丸は理解している。どちらの助けにもならないことは分かっている。
それでも烏丸自身は小説を書くのを止めない。
何故だろう、と自分に問いかける。そこに答えは存在しない。悩んでいる2人に聞いても本当の答えを2人はまだ持ち合わせていないだろう。
だから、と烏丸は思う。私が書かなければならない。私でないと、私自身の小説に決着を着けることは出来ないのだから。
病室でスマートフォンをいじる古谷。烏丸のことを思い出し、彼女の小説のページを開いてみる。
「今日だけで何ページ書いてるんだ、あの人」ズラリと並んだ更新日は今日を指し示す。古谷が公募のために執筆を始めてから、烏丸の小説を読む頻度は少なくなっていた。その分まとめて読んでいたが、自分自身でも読む時間が少なくなったなと思う。
「純粋に書く、かぁ」一人病室で呟く。