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タイトルは「小説の書き方」  作者: ドライパイン
10 自分たちはどうして
182/191

6 女死会、アゲイン

 サイドカー付きのバイクで出版社からそう遠くない位置にあるビジネスホテルに到着する。もうフロントには連絡が行っているのか、竹内はさっさと入り口近くのエレベーターに乗って行く。仲林と烏丸も慌ててついて行った。地上五階、ズラリと並んだネームプレート付のドアが並ぶ廊下。竹内はその内の1つの前で足を止め、ドアをノックする。……しばらくすると観念したかのような表情で高磯が現れた。

「……居場所、バレてましたか」

「最近の情報戦争は恐ろしいのよ、SNSでいつの間にか場所が特定されてたり」

「私ボッチなのでSNS使わないんですけど。立ち話もあれなので上がって下さい」

 つらつらとついて行く3人。ビジネスホテルの一室は4人が集まるには狭すぎる。高磯が部屋の椅子、残りの3人がベッドに座ることになった。そうしつつも、口火を切る者は居ない。

「妹さんが居ないけど、このメンツはあの時を思い出しますね」初めに言い出したのは仲林だった。

「闇鍋したんだっけ? 皆でワライタケでも食べれば空気が良くなるかな」不参加者の竹内、とんでもない事を言い出す。

「コワイのでやめて下さい、第一どっからそんなもの手に入れろと」高磯はいつもどおりといった風に突っ込む。

「ああ、山に潜れば案外見つかりますよ」烏丸はというと、早速思考がサバイバルな方向に進んでいった。

「……古谷先輩、書くのを辞めるそうです」高磯が告げる。その情報を知らない3人はしばし沈黙する。

「私もね、文藝部に居た時に相談されたんだ。書くことを続けようか迷っているって」少し迷ったふうに、竹内が続ける。

「私自身も酷いことをしてしまいました。これから書くかどうか考えている最中です、だけど古谷先輩は今回の事件で責任を追う必要は全く無いです」

「責任感、なのかな。古谷先輩は確か高校時代にもう書くのを辞めようか考えていたと思うけど」仲林が思い出したように呟く。烏丸は、先程の電話の事を思い返していた。

「……もう、書くことを辞めるんですか?」烏丸の問いかけは高磯自身に対してであった。

「私が、ですか」確認するように高磯が返事をした。しかし、二の句が継げないでいる。

「古谷君が何とかして守りたかったのは原稿だけじゃなかったと思う。きっと別に何かを」何か、を具体的に烏丸は言えずにいる。

「まあそこを具体的に言うのは難しいよね」軽い調子で、だけどほんの少し優しい顔で頷く竹内。

「……古谷先輩は、私の小説のほうが優れているから書かないなんて言ってました。……そんなことは無いです。あの人の小説が無かったら、私は高校時代に何もかも終わらせていました」慟哭するかのように切れ切れな声。普段あまり表情が顔に出ないと言われる高磯も、今度ばかりは泣きそうな表情を隠しきれて居なかった。


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