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タイトルは「小説の書き方」  作者: ドライパイン
10 自分たちはどうして
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5 右の代理で左が来て

 古谷はその日の2人目の面会人に正直困惑していた。

「ここにまでコーヒー抽出は出来ませんでしたので」何を考えたのかエプロン着用の衣川店長。

「いや別に良いんだけどさ、喫茶店はどうしてるの」

「……卯島さんの代理としての役目も有ったので急ぎで来ました、お客は居ませんでしたが」卯島を思い出したのか表情が曇る衣川。

「あーあの右大臣か」古谷はかねがね悪評を衣川から聞いている。

「私が左大臣みたいに言われると困るんですが」衣川が持ってきたのはというと、至って普通の赤りんご。常識的な持ち物で少し古谷は安心していた。

「代理って、何か用事有ったっけあの人」

「専属の編集者になったと聞いたんですが」

あー、と自分のことでは無いかのように納得する古谷。本当に、実感が沸かなくて一寸自身の感覚に疑問を持つ古谷。

「どうしようかな、書くのを辞めようかと考えてる最中だというのに」古谷は軽い実感のまま呟く。

 ふむ、と言って衣川が考える。

「以前、古谷君の書いた小説を読みました」

「身内に読まれると凄くむず痒いんだけど」どうだったのさ、と一応の疑問を飛ばす古谷。

「……個人的な感想で言えば、他の叙述作品にも似ているトリックや動機が有り、心理描写の技工などは決して上回っているわけではないと思います」刺のある発言に、流石の古谷も少し辟易する。

「追い打ち掛けるとは。まあいいんですけど」ハハ、と乾いた声で笑ってみせる。

「気になったのは最終的に犯人が自責感から犯行を露見させてしまい罪を悔いる展開なんですが」

「うん?」

「どこか皆あっさりしているというか。登場人物が基本的に皆人が良いというか。犯行を犯すのであればもう少し被害者を苦しめてやろうという憎しみや恨み、探偵側の追い詰めてやろうという執念や絶対的意思が有っても良いんじゃないかと」

「感情表現、下手だったのかなぁ」

「私が言いたいのは、そういう淡々とした小説が書けるのも才能の一つなんじゃないかということです」

「……才能、ねぇ」思う所が有ったらしく、少し憂鬱になる古谷。

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