N 彼女にとっての反抗
「利権が絡んだ以上、こっちは確実にやらなきゃいけないんでね。取り敢えず今渡してもらえばお咎め無しってことにしとく」辰巳が前に出て小説を差し出すように脅しを掛ける。
「中傷……利権……一体何のことを言ってるんです?」事態の展開に当惑する烏丸。
「知られないままなら良かったのに、私は仕方なく加わっただけなのに」
「こいつらはいじめグループの一員だった、高磯さんや標的が入れ替わった後の人物達にとっては許せない人物だ」
「それを告発するための小説だった、っていうんですか」
「仕方なかったじゃない、そうしなければグループのなかで次に殺されるのは自分だったのに」
「だとすればどうしようもなかったのか、それを高磯さんたち本人の前で言えるのかい?」辰巳の口元に笑みはない。
黙りこむ犯人。
「兄さんが介入するのは、その告発を世に出すためだったってこと?」
「企業的にはグループの中に厄介な人物が居たから、その排除を目的として行動しているらしい。だが個人的には」壁に張り付いて逃げるかのようにする女性から原稿を奪う辰巳。
「小学校から続けておよそ9年。高磯が被害に晒され続けていた期間だ。その内にメンバーは手を変えその中身も変わりつつあった。だが、その中心人物と被害者だけは変わらず。そこの犯人もグループの途中加入者の一員でしか無い。俺達が敵に見ているのはその中心人物、出版社を乗っ取り手中に収めている人物の娘だ」