J 疑惑者多数
既に受付時間終了後の出版社。人もややまばらになってきた待合室のなか烏丸は周りの様子を伺っていた。
事前に烏丸と入れ替わりで待機していた人物から聞くに、原稿を持ちだしたらしい人物は今のところ見つかっていないらしい。
「じゃあ問題はコレ以降原稿を外に持ち出す人物が居るかどうか、ですね」
「もう既に持ちだされている場合を除いたら、だけど」見張りの交代要員の男性が不安そうに呟く。
「……つかぬことをお聞きしますが、しっかり見てました?」
「昔からウォーリーを探せとミッケは大の苦手で」
「今度強化合宿が有るそうなので参加してみては如何です」
「えっ、それ本当?」とても興味深そうに聞き出す男性。
「マ、マジにしないでください」ジョークを仕掛けた側が焦る羽目になった。
一度散会し、じっと受付部先を見つめる烏丸。
受付作業が終わって向こう側も一段落とばかりに、やや引き締まってない顔ぶれも見られる。
そもそも原稿が紛失される事を知らないであろう人物達も多いのだろう、と烏丸は予測した。
時刻は昼過ぎ。受付時間が1日の午前中だけに限られているのも既に異常な状況だがそれを受け付ける側の人物達も確かに大変だっただろうな、とぼんやり思う。
その最中、妙に怪しい人物を烏丸は見かけた。