F 受付印受領
高磯の電話が鳴る。
「……荷物見とくから、電話出てきな」
「有難うございます」通知先に覚えが無いのか、高磯は少し不思議そうな顔でその場を立ち去る。
「さて、と」誰にともなく掛け声と共に古谷が動き出す。
『やることは解ってるな?』古谷がポケットから取り出したイヤホンジャック、向こうからは辰巳の声。
『中身の取っ替え、だけで良かったっけか』
『表紙部分は偽装出来るか、始めの部分だけ見られるかもしれん』
『一晩でノートまるまる複製しろとでも言うのかい』
『そこだけ元のまま交換する必要はない、何も起こらなければ友人同士で原稿が混ざりましたで済む』
『……何か起こったら高磯の序盤数ページは消し飛ぶんだが』
『君の損害よりは微々たる物だろ?』
『家にバックアタックは有る、コンピュータ本体に入ってるから』
『ネット回線は切ってるか?バックドアは多分仕込まれてる、高磯さんに関わった人物の小説は削除されてる可能性が高い』
『……本当に自分達は一体何と出くわしてしまってるんだ、じゃあ自分の小説にバックアップファイルはもう無い』
『必要なら今すぐコッチの人員を送らせてコピーさせるが』
『必要ないから高磯のパソコンにクラッカー対策してあげてくれ』
『そうか』
それから数分後、高磯が戻ってきた。
「烏丸さんでした、忘れ物がないかの確認電話みたいで」
あぁ、そっちのと言いそうになり古谷は黙りこむ。