D 待機時間中
受付開始時刻が遅くなるとの知らせが受付に届き、古谷と高磯の2人は一旦待合室から出てビル内の廊下で立ち話をすることにした。
「古谷先輩、手提げかばんなんですね」
「高磯は普段からリュックサックで行動するっけか」
「今日だけです、原稿が案外重たかったんで」
「炭素の分だけ重たくなってるだろうな」
「工学部らしい発言といいますか。大学に入ってから理科系全く身近に触れなくなったもので」
「こっちはコッチで、小説書いてなかったら簡単な漢字も間違えそうだよ」
「英語は使うんですか」
「……たまに?」
「疑問形なのは大丈夫なんですか」
「第一外国語は単位が『可』だったもので」
「表現でぼかしてもダメです、要するにD評価だったと」
「そんなこといってもさ、大学入ったら単位所得難しくならない?」
「気持ちは分かりますが評価低いと後々に響きませんか」
「大丈夫……多分……きっと……maybe……」
「なんで段々声が弱くなってるんですか、文藝部の時の古谷先輩は輝いてましたよ」
「先輩と後輩2人に振り回されていたのを輝いていたと評するのか」
「振り回してましたっけ」
「自覚なしかよチクショウ」