A 第三者介入
翌日、烏丸は再び辰巳に電話をかけることにした。議題は勿論、兄が関わっている古谷と高磯の件についてである。
「それで私に電話が入ったのは一体どういう訳で」
「古谷君と高磯さん、2人がゴタゴタに巻き込まれているのは分かるか」
「アレ現在進行形だったんですか、流石に高校時代の事件は忘れてると思ったんだけど」
「彼らの中ではずっと引きずり続けてる、現在進行形で」
携帯を握り、烏丸は片手で頭を抱える。
「関わって平均数ヶ月しか経ってない私に、解決出来るっていうの?」
「第三者機関的な立場をとってくれれば良い」間髪を入れず兄は言う。
「監査官にでもなれって訳かしら」
「例えで言うなら証言者Aさんで良い」
「ある意味身内みたいなものだから、証拠力は低いと思うけど」
「目撃者は多ければ多いほうがコチラにとって有利に働く」
「コチラって言うのは、誰のことかしら」
「古谷君と高磯さんの方だ。総合的に言えば、だが」
未だに話の全貌が見えず、烏丸は少し黙りこむ。
「兄さん」
「なんだい妹よ」電話口の声は、話し始めた時と同じように軽い。
「兄さんは一体、どういう目的で動いているの」
「彼らの幸運を祈るとともに、彼らを襲う人物に対して正義を振りかざして罪を無理やり償わせる」
「それなら普通、別の人に任せるべきだと思う。そういう役割を持っている人たち、裁判官や検察だっている」
「果たしてそういう存在が高校時代の高磯さんたちを守ることが出来たのか。高校を卒業したからといって、社会に出た古谷君達を守るものは居るのか」
「一体誰を相手にしているのかしら、超法規的措置が使えるような連中?」
ああ、という普段と違う辰巳の低い声が電話口から聞こえる。
「そういう違反者をどうにかするために、奴らにわざと犯罪を犯させる」