6 定例会議終了
「烏丸サン、テーマはこれでいけそう?」
「混ぜ込み過ぎで収拾つかなくなるか不安では有りますけど。これに決めようと思います」と頷きながら烏丸は返す。
うし、と立ち上がりながら古谷が呟く。烏丸のお題決定で二人が予想していた以上に時間が過ぎていて、喫茶店の客はすっかり入れ替わってしまい、長針が一回り半していた。コレ以上コーヒーとチョココロネで粘る気概は古谷にはあんまりなかった。
「また一週間後にでも、こことは別でいいからさ」古谷の持ってきた資料は鞄から殆ど出していないため、鞄は喫茶店に来て床に置いた時のままであった。烏丸のものとは違い軽そうに肩に掛ける。
「どうせ書店で会うでしょうし綿密に決めなくても良いとは思いますけど……」古谷は烏丸のバイト先の書店で常連である。理由は単純に近所なため。
「バイト中に私語は厳禁だろ」冷静な返しをする古谷。
「ウチの本屋には滅多に人来ませんし、店主も下手に私のクビを切ることは出来ないですよ」何やら裏に色々と有りそうな笑顔を見せる烏丸。
「店長の秘密でも握っているのか」と細目をさらに細める古谷。店長は烏丸の叔父であるが、黒い笑みにはそれ以上の何かが感じ取られた。
「ヒミツです」表情がますます不気味な笑顔になる烏丸であった。
「脳内メーカーにかけたら『闇』とか出てきそうだなアンタ」
ふふっと笑いながら烏丸も立ち上がる。
「それじゃあ支払いはお願いしますね若干時代遅れの古谷さん」
「個別支払いだこのお馬鹿」後払い用のレシートを突き出しながら古谷が睨む。
「デートは男持ちですよ」
「万一恋仲になっても払ってやんねー」レシートを更に押し付けた。
こうして、一度目の2人の小説書きの会議はお開きとなった。
次回辺りから2人の背景事情について書いていきます。