16 (動機)*(not同期)
『あの古谷君が誘うとは』烏丸の感想だけが真っ先にメールに出てしまう。
『ホントですよね、意外というか』全く関係のない所で被害を被る古谷。後輩の返事も辛辣だった。
『誘われて、そのままミステリの道へ進んだという感じかしら?』
『私の場合は結構迷いました、単に読むだけの部員になろうかなと思っていた時期が長くて』
『最終的に決断する理由とか、何かしらがあったの?』
『文藝部が他の部活に関わった事がありまして。その時に小説を書こう、と決意したものです』
『決意と来たか。色々と重い物が有ったかしら、ごめんね』
『お気遣いすいません、重い事件では有りました。だけど忘れたりはしたくないです』
文面を読み、ふむ、と烏丸は呟く。恐らく時期からして古谷も知っている物事だろう。古谷と高磯、決して同時期に小説を書き始めた訳では無いのに、動機は互いに重いものを抱えている。文藝部という場に、一体どれほどまでの苦い思いが有るのだろうかと疑問に思わざるを得なかった。
『古谷君の書き始める動機って、聞いたことが有る?』念の為に、烏丸の方から尋ねる。
『古谷先輩に直接聞いたりはしませんでしたけど、そのまた上の先輩から少し聞いたりはしてみました。上の先輩と協力して、文藝部とは違う部活のゴタゴタを解決しようとしたみたいです』
『ゴタゴタの内容については不明、と』
『解決しなかった、とは言ってましたけど詳しくは聞けませんでした』