14 (部活)*(悪霊)
危うくこぼしそうになったコーヒーをテーブルに戻し、古谷は尋ねる。
「……高磯と仲林には会ったんだっけ」目線はコーヒーカップの方。声も決して明るくはない。
「先輩と後輩でしたよね」正直、いつの間にかその事が古谷に伝わっていたのかが分からず烏丸は内心焦っていた。
「自分自身の小説を書いた動機」確かめるように古谷は口に出して言う。
烏丸の方も、何を言っていいのか分からずに沈黙を保ったままである。
「……烏丸サンはさ、幽霊って信じるかい」
「死んだ人が出てくるアレですか、余り信じているとは言えないですけど」唐突な話題に、烏丸の反応は一瞬遅れた。
「どっちかというと生霊を想像して貰えれば有り難いな、けど同じ事か」何処か自嘲的な表情を浮かべて烏丸に笑いかける古谷。
「さっぱり話が見えてこないんですけど」
「烏丸サンの小説の動機がお祖父さんの遺志を継いだものとすれば、それは守護霊のように烏丸サンを助けるんだと思う。動機にしろ、執筆の継続にしろ、良い意味合いで力になる」
「その、例えからして」烏丸は恐る恐る、尋ねるように古谷に問いかける。
「古谷さんにとっての小説の動機は、何かしら暗い意味合いを持っているものでしょうか?」
古谷は否定も肯定もせず、先程飲みかけたコーヒーを再び飲み込む。今度はカップが空になるまで飲み干した。烏丸は、否定がないのを肯定として受け取る。
「今でも、そうなんですか」
「……わからない、かな」烏丸と似たようなことを言う古谷。
時間がそろそろマズイんじゃないか、と古谷が会話を切り上げるようにして話題は打ち切りとなった。