12 (開始)*(疑問)
「当てずっぽうでも良いので、答えてみませんか」祖父の小説について、烏丸は再び疑問を投げかける。
「そんな事言われても困るんだが」お盆にコーヒー2杯をのせて、古谷がキッチンから戻ってくる。アインシュペンナー、コーヒーと同じ量のクリームをのせているもので『一頭立ての馬車』という意味がある。馬車の御者たちにとって、手を温める事が出来て人気だったのが由来とされる。
「グラスに注がないんですか」しかし、古谷が持ってきた容器は普通の陶器コップ。
「そこまで凝るのが面倒になった」さっさと座って飲み始める古谷。烏丸も頂きますと呟き口にする。
「遺言か、暗号かを少し考える」一口飲み終え、古谷が再び話をしはじめる。
「ミステリですねぇ」烏丸は感心したかのような表情をする。
「やっぱり違うか」
「違うかは本気で調査しないといけないから分かりかねます。でも、見つけられる事を前提としているかは重要だと思います」
「……適当に扱われてたのか」
「装丁どころかページもむちゃくちゃで、所々床に落っこちてたり。あそこだけゴミ屋敷になってましたよ」
「烏丸サンが見つけたのも、完全に偶然だと」念押しするよう古谷は尋ねる。
「……そこまで事実確認はしてないんですよね、うちの祖母でさえ祖父の部屋には入ったりしなかったと言っていましたし」
「お祖母さんがアウトドアなのに、お祖父さんはインドア系なのか」
「一度祖母は連れ出したみたいですが、なんでも相当過酷なものを見たらしく」
「アウトドアとインドアの溝は深いな」
「しかもそのときの恐怖の日記がメモの中に残ってました、多分相当ヤバイの見たんだと思います」
「今度お祖母さんに聞いてみても良いかな、恐ろしいけど気になる」