10 (How done it)*(Why done it)
「持ってきてる私が聞くのもなんですけど、この袋にいったい何が入ってるんですか」
「豆」
「シャカシャカしてたのでそれは分かるんですけど」
「振ったのかよ」顔をしかめる古谷。
「マラカスって振ってて楽しくなりませんか?」卯島の勢いが移ったのか、烏丸は調子付いている。
「店長に連絡入れとく」
「オッケー嘘ですゴメンナサイ」あっさり降伏。
「アインシュペナー用のコーヒー豆で苦味が少ない豆を取り寄せて貰ってるんで」
「……それってまたウィンナコーヒーじゃないですか」
「更に甘いタイプだ、ザラメ糖も入れてる」
コーヒー淹れてくるから、と言って烏丸を居間に残してキッチンへ向かう古谷。
取り残された烏丸はというと、することもなく部屋を見渡すことになる。古谷の家には居間のテーブルとは別に机があり、その上にはデスクトップパソコンと原稿用紙などの筆記用具が置いてあった。
「書いてる小説ってサイトに載せてるものですか?」黙っているのも変なので、烏丸はキッチンへ声を投げかける。
「それとは別に賞に応募する予定がある」古谷の表情は見えない。しかし、高磯へのメールに書かれていた賞の事だろうと烏丸にはスグ分かった。高磯と既に連絡をとっているのだろうか、と疑問に思うも話題の切り口が見つからない。何より、高磯には秘密にしておいて欲しいと言われている。
「そういえば、さ」古谷の方から切り出してくる。
「何でしょう?」考え事をしていて、少し頭が真っ白になる烏丸。
「烏丸サンがさ、小説を書く理由ってなんだっけ」