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タイトルは「小説の書き方」  作者: ドライパイン
7 女四会、そんでもって女死会
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間-4 考え事

 昔、推理小説をまだ本格的に書く前の話。ある友達に言われた一言を古谷はふと思い出す。

「罪を犯した犯人と、探偵の推理ゲーム。そんなものが本当に楽しくて読んでるの?」

 そんな安直な理由ではなかった。だけれども、その時に言い返すべき言葉が古谷には見つからなかった。

 探せばいくらでも自分のジャンルについて弁護は出来ただろう、と今でも思う。事実、推理やミステリというジャンルは今までも沢山読まれてきたし書かれている。推理ゲームではなく、ヒーローである探偵が悪人を懲らしめる勧善懲悪モノだ、と言いくるめることだって出来たはずだと。

 だが、古谷はその時直観的に感じたことがある。相手には多分理解してもらえないだろうと。向こうが古谷自身が書く『小説』を好きになってはくれないだろうなと理解していた。その感情を古谷自身のものとして理解できたことはまだない。基本的に古谷自身にとって嫌いなジャンルは存在せず、冗談や揶揄こそすれども種類そのものの区分けで作品の善し悪しを決めたことがない、と自分では信じている。

 ならば自分自身は何故推理小説を書き始めたのだろうか、と考えた。

 答えは出ない。


 その日の夜、烏丸妹からメールが来ていた。中には数枚の写メール。

 鍋から火柱が上がって驚く烏丸姉妹と文藝部の後輩2人。仲林が言ったとおり、烏丸姉妹が変わり者で有ることは事実だと改めて理解した。まず火柱が上がっている状態で冷静に写メールを撮る辺りが変人だと。

 そういう変人たちなので、自分の知らないうちに繋がっていても不思議ではないと彼は思う。以前からそういうパターンは経験していたからだ。

「でもなぁ」思わず呟きが、彼の口から漏れる。

 出来れば、文藝部の事を考えるのは後回しにしておきたかった。

 そうするのが正しくないのは分かっていたが、そのまま誰からも忘れてしまってもらうほうが、自分自身にとっても相手にとっても幸せだったのかもしれない。そんな事を思いつつ、携帯画面の写真をぼうっと眺めていた。

「……原稿、進めるか」

 言い聞かせる、主に彼自身に。

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