34 百味ビーンズを食べるかの如く
火をみたショックから立ち直ったのか、仲林はキッチリと高磯に制裁を加えて戻ってきた。
口元を既に真っ赤にしながら、高磯が戻って来る。相当来ているのか、顔に力がなく口角が下がっていた。
「さて、出汁を少し加えて食べ始めるとしましょうか」
「高磯先輩、その状態で食べれるんですか……?」同じ学校ではないが一応先輩を付ける三菜。
「ふぁいふぉうふ、すぃばるくしたらなほるふぁ」もはや呂律も怪しい高磯。大丈夫らしいが、水を呑んでくると台所へ向かってゆく。
「軽く余ってたインスタントの出汁は加えたけど」仲林と高磯が帰ってくるまで左程かからなかったため、烏丸姉妹は味見をしていない。
「箸でとったものを取り敢えず食べるんでしたっけ」6人分の土鍋を前に、覚悟を決める仲林。フランベ以上の衝撃は多分無いだろうと、彼女はどこかで期待していた。こういうのはサッと取るのが正しい、迷い箸をせずに挟んだものを取り敢えず鍋から取り上げ自分の小皿に移す。硬いものだったのか、カランという音が響いた。
「……あさり……あさり?」小皿に入ったのは、やや小振りな二枚貝。
「あ、それ私が入れたしじみです」答えたのは三菜。今朝のスーパーで仕入れたものだった。砂抜きはしていたと彼女は聞いている。
「一周回って安心したけど、鍋に貝類はあんまり見ないよね」そんなに量も無いので、仲林はつるりと頂くことにした。出汁の味自体がマトモだったので、一応頂ける。
「やっとマトモに口が回るようになった……」台所から余分な量の水入りコップを持って、高磯が戻ってくる。
「あ、次香波ちゃんだよ」
「そんなぁ」とても弱ったような表情を見せる高磯。




