間-3 不通の電話
竹内に、念のため電話を掛けてみるも通じない。
どうしたものか、と携帯電話を下ろした時にちょうど電話が振動する。メール、だった。
『ききT=レヽこ`⊂ヵゞぁゑωT=〃け`⊂〃、τ〃ωゎUτ<れゑ?』
……本気で無視してやろうかと考えこむ。古谷が小欄を投稿している新聞社の、卯島からのメールであった。
そもそも彼女がギャル文字を送ってきたのが、彼女の友人に送るつもりのメールを誤爆してこちらに送ってきたのがキッカケである。それ以降、陳謝どころか開き直ってギャル文字だけのメールを送ってくる。ある意味その精神力を古谷は尊敬していた。
「……もしもし」メールが来た段階なら時間が有るだろうと考え、古谷は早々に電話を掛ける。
「おお、休日にノータイムで掛けてくるとは暇人かしら古谷君」
「卯島サン、それはブーメラン発言というのでは」
「残念ながら私は休日出勤よ」
「別にそれは誇る所ではない」
「それより、一つ確かめたいことが。新しい作品を書くつもりなのかしら?」
「話が早い、というか自分をすっ飛ばして進んでいる気がしますが。卯島サンの所にも烏丸辰巳が来たんですか」
「誰かしら、それ?私の情報源はお上からの連絡よ、古谷修一が新作を書く予定があるからそのサポートに回れって」
「益々自分抜きで話が進んでますね、それ」事態の不透明さに、乾いた笑いが出そうになる。
「当面は私のお仕事も中断、分社を通じて当面は貴方の編集者として働くことになるわ、ちゃんと原稿書いてくださいね」
「……それじゃ、卯島さんは出向ってことですかい」
「暫くそっちの近所のマンスリーマンションにでも済むから、明日会いましょう」
「引っ越すにしてもエラく荷物少ないですね」真っ先に疑問に思ったのがソレだった。聞くべき点はそこではないのに、何故か聞いてしまう。
「そんなに身重じゃないのよ、私は」古谷の疑問を軽く笑ってあしらい、卯島は通話を切る。