29 もぐもぐ
しかし、心の中で4人が思っていたことは1つ。
「面子の割に、食べてる料理が普通だ……!」
「いや、烏丸姉妹の味の嗜好が案外普通で安心しました」
「どうも最近は、普通の料理ばかり食べてて牙が抜かれたと言いますか」
「味の好みと性格って、余り関係ないと思うんだけど」
「私の経験上、ぶっ飛んだ人物に限ってPoison-cookingをするんですよ」
「例の先輩だっけ?」
「携帯保存飲料とか飲まされたなぁ……」虚ろな目で呟く高磯。過去の記憶がフラッシュバックしたかのように手をこめかみに当てる。
「外宇宙からの侵略が発生した場合を想定して、供給が簡単でかつ保存が効く、調理の手間が掛からない食べ物を開発しようと考えた人物が居まして」
「一体何を食べさせられたんですか……?」サバイバル生活に関しては、それなりの自負がある三菜。この話題に興味津々で食いついてゆく。
「灰汁を抜いた、一応食用に適する学校に生えていた雑草とタンパク質を混ぜ込んだ、ジュースのような何かを」当時の味を思い出したのか、高磯は今スグ忘れようとするかの様にとっさに鍋のだし汁を小皿から吸う。
「採取が簡単なタンパク質とは一体」
「学校に出来たハチの巣を、生徒会と共同で退治しました。火薬を扱いたいとかいう不純な動機で生徒会も接触してきたので、まあ裏取引みたいなものです」当時1年生だった高磯と仲林にとっては、生徒会すら異常な軍団であったことに当時酷く混乱したものである。
「蜂の巣は結構食用に適するけど、雑草と一緒じゃねえ……調味料は無人島には無いし、塩味でなんとか誤魔化すかな」もう既に自分が食べるときの計画を想定し始めている三菜。
「マイシスター、アンタのサバイバル技術はもう充分理解したから普通に料理の技能を鍛えなさい。そして生徒会はいつからそんな過激組織になってるのかしら」一人暮らしを始めてから四年近い烏丸にとっては、もう当時の食生活には戻りたくなかった。