23 9歳の頃からの訓練
調理班と遊戯班に分かれてから、キッチンで鍋の材料を調理し始める三菜と仲林。仲林が野菜の皮むきや水洗いをしている最中、三菜の方は鮭(捌けないのに何故か高磯が購入)のうろこを手早くほぐしてゆく。中学2年の若さながら、最近料理し始めたと思えないような包丁の扱いに仲林は驚いた。
「普段三奈ちゃんが料理するのかしら? お母さんがその、エキセントリックな御方らしいけど」
「私かお婆ちゃんです、ただ大抵は私なんですけど」苦笑と共に三菜は頷く。
「そりゃまた凄い、学生が帰ってから料理って厳しいでしょ」高磯や仲林が所属していた文藝部では特に毎日集合のルールが無かったものの、各人なんとなく集まることが多かった。普通の体育会系部活はもちろん、文化系部活でも集合は多いだろうと仲林は推測する。
「部活もギリギリなんですよ、部員が練習してる中帰るのは色々申し訳ないんですけどね」
「ほう、理解有る部員で良かったね」人参をピーラーで手早く剥きながら会話する。
「理解"させた"の方が正しいんですけどね……」部員に母親の料理を『説明』した時のことを思い出す三菜。
彼女の所属は軽音楽部だが、グループで合わせるタイミングがなかなか無いためペチペチベースを弾いていることが多い。そもそもグループメンバーがバラバラな行動を取るため、拘束されずに済むと三菜は笑って説明した。
「ちなみにお婆ちゃんのお料理はどうなんです?」
「アウトドア基質なので、味付けの濃い煮物やスープが大半なんですよ」ロールキャベツとか、と不服げに語る三菜。
「お婆ちゃんなのにか」仲林はというと、てっきり歳を重ねると薄味が好みになると思い込んでいた。
「塩分も脂肪分も体動かして消費する脳筋タイプですよ」
「ムキムキでBMI凄そう」頭のなかに浮かぶのは、ある映画で格好良く溶鉱炉に落下した御方。
「和食派の私には耐え難い物が有りました」飲み物には緑茶派の三菜。
「アナタ本当に中学2年か」飲み物は普通の水派の仲林。