2 笛吹けど会議は踊る、傍にはそば枕
「だからその厚い物体Aは何なんだよ」烏丸は軽々持っているが、実際の見た目は国語辞典並の厚さである。振り回せば十分痛い。
「一週間で書き上げてきました、総計は大学ノート13冊分です」
「烏丸、嘘をつけっ」そんなに早く書けないだろ、と古谷はこぼす。
「そのうちノートのはじめの方だけ書いているのが12冊です」
「またそのパターンかよ懲りないな君は!」以前も日記帳が途切れていた烏丸。
「古谷さん、喫茶店で会議するって決めたんだからもう少し静かにしましょう皆見てます」今更の事だというのに、烏丸はわざわざ注意した。烏丸がノートを取り出した瞬間、客の視線が一気に集まったというのに。
「だったら燃料をワザワザ投下するんじゃねぇよぉ……」疲れてテーブルに突っ伏した古谷。本がちょうどよく枕の高さになっているのがまた腹立たしく感じられた。
「ちなみに枕台に適する高さになるよう計算しました」
「一瞬心地よかったのはそのせいかよふざけんな」ガバっと起き上がり突っかかる。
「枕にしてないでそろそろ開いて下さいよ、ノートたちが泣きます」
「泣きたいのは僕なんですけど」古谷再び枕に倒れこんだ。