21 7番勝負、そして延長戦
烏丸と仲林が買い物から戻ってくる直前でも、高磯家の2人は懐かしいゲームに興じていた。
「これ、そろそろメールか何かで連絡した方がいいんじゃ……」流石に心配になってきた高磯。
「チキンレースの様相と化した訳ですか……私はとことんまで行きますよ」無駄なところで勢いのある三菜。
その時、ガチャリと玄関の方から音。ワンルームの部屋では、リビングから隠れたり逃げたりする経路も全くない。お互いに、しまったという顔を見合わせる。何故か凄く楽しそうな笑顔で買い出し組が帰ってきた。
「香波ちゃーん、何か忘れてないかしらー?」片手にスーパーのビニル袋、もう片手には調理ケースに入っている謎の茶色の粉。
「三菜いるよね、降伏は無駄よ抵抗しなさい」鞄に材料、手の構えが戦闘態勢に移っている烏丸。
「因みに調理の用意とかしてくれてた?」念のため仲林が高磯に尋ねる。
「……あっ」完全に記憶から吹っ飛んでいた高磯。買い出し組が出る前に、少し用意をしてくれと約束していたのだった。
「死亡確認」宣告後、仲林は素早い動きでケースから指で少し粉をとり高磯の口に付ける。件の激辛カレー粉。高磯は無言で悶絶し、フローリングに突っ伏す。
材料が入っている鞄を置いた烏丸はというと、部屋の三菜の方へズンズン近づきあっという間に羽交い締めにする。
「烏丸流アウトドア格闘技、腕緘」そのまんまアームロックを仕掛けていた烏丸。
「アタタ、そ、それ以上いけない」技をかけられていながら、案外三菜の方は余裕のある返しをする。
「というかカレー粉そういう使い方していいのかしら」技をかけつつ疑問を口にする烏丸。
「食べればいいんです、食べれば」そういうものなのか、と思うのみであった。