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19 5戦2勝1引き分け
電話がかかってくる……どちらも取れない。
「高磯さん、電話かかってますよ」
「三菜ちゃんの携帯にもかかってるわよ、電話取らないと」
「高磯さんが電話とったらとりますよ」
「じゃあ私後でとるから、お先にどうぞ」
テレビ画面からは風の音。指はコントローラーの赤いボタンに添えたまま、破裂音をまつ2人。
「……ぐぬぬ」
「……ふーむ」
耐久戦と化していた携帯との戦い、譲れない2人のプレイヤーの戦い。
勝負は刹那の内に決まる。
パン、と小気味よい破裂音と共に画面が光る。
ボタンを押す2人、結果は引き分けで同時判定。
「これで5戦マッチは継続ですか」
「正直これってチキンレースの様相を呈してるんじゃないかしら」
「構わないです、私はこの刹那に掛けます」
「その心意気は尊敬に値するわ、小説家ということを置いておいて」
「いや正直ここで引くとかえって虚しいというか」
「言わないでそれは」