転入生は、もう意味わかんない
ピーンポーン
あっ天音ちゃんだ。
「おはよう、天音ちゃん。」
「おはようございます。有紗ちゃん。今日も可愛らしいですわね。
それはそうと私じゃなかったらどうするんですか?
ドアを開ける前から言ってましたよね?
わたくしであればドアの向こうからでも有紗ちゃんの足音や気配や匂いや吐息で察っせれますけど、
有紗ちゃんはまだでしょう?…それとも愛の力で有紗ちゃんもわたくし限定で…」
えっ、何それ怖い。
次の日学校に天音ちゃんと一緒に行くと凄く騒がしいです。
「モデルが こーせーでー。」
声の大きな男子が何か言っていますけど、興奮しすぎて聞き取れません。
「どうしたんですか?皆すごく興奮してますけど。」
「あっ有紗ちゃんっ!? どっどうしたんだい?」
どうしたもこうしたも、急に喋りかけた私も悪いですが、
クラスメイトに対して急にどもり過ぎなあなたもどうしたんでしょうか?
「有紗ちゃん……いえ、言っても無駄ね。」
何で溜息つくんですか天音ちゃん。
――あぁなるほど、騒がしいの嫌いでしたよね。
先天性超域聴力でしたっけ?
完全記憶能力者が忘れたいことも忘れないように、聞きたくない音域や音量まで聞こえてしまうって、
凄く大変だものね。
「天音ちゃん、大丈夫?」
「はいっ?……有紗ちゃんが心配してくれるのなら大丈夫ですわ?」
なんかうまく会話が成立しているようで全くかみ合ってないような気もするけれど、
それはひとまずおいておいてもう一度他の人にも聞いてみます。
「何かあったの?」
「えっ?聞いてないの?転校生の話。…いや、転入生か。
(っていうか喪侮谷かわいそー。ナチュラルに知らないなら用無し扱い受けて落ち込んでる。
姫宮に悪気はないんだろうけど。)」
転入生??この時期に?
……まぁこの殺伐とした世界ならやむを得ない事情なんていくらでもあるもんね。
「一体どんな子が来るのかな?可愛い子なのかなー。」
「浮気ですか?」
えっ、天音ちゃん何言ってるの?
「えっ?…んーとそれで引立さん他に知ってることは?」
「も、喪部谷が詳しいんじゃないのかな?なっ、お前詳しいだろ?」
引立さんが何故か急に喪部谷君に話を振ると、
喪部谷君の表情が喜色を浮かべ出し、
「モデルがっ、そうモデルガー。」
何を言っているのかはわかりにくいけれど何が言いたいのかはなんとなくわかります。
モデル?転入生?…転入生がモデル?意味わかんない。
モデル?美人?……美人……?
…………………まさか、っね?
そんな小説や漫画のようなことを考えていると、
緋咲先生がやってきて私は妄想を中断することになりました
「おい、お前達、おはよう。」
「「「「「おはようございます。」」」」」
緋咲先生は挨拶には厳しい先生なので、先生が挨拶すると皆それにしっかり返す。
…勿論厳しくない先生にもしっかり挨拶しますよ?
「知ってるものもいると思うが今日は転入生を紹介する。…入ってきていいぞ。」
入ってきた転入生は、私の妄想の続きでした。
「初めまして、竜筆有栖です。姫宮さんの親戚です。よろしくお願いします。」
漫画や小説のようなお話きたーーーー。と思ったら私への注目必死な爆弾発言!?
お母さん親戚来るのなら教えてよ。聞いてないよ。
「有紗ちゃんの浮気者ー。」
えっ?天音ちゃん意味わかんない。っていうかなぜ有栖さんも不敵に笑っているの?
その挑戦受けた、見たいな?もう、意味わかんない。
全て漢字にしたのは、扶桑に来た人は皆名前を漢字で書く必要があるとの、
アリスさんの勘違い。