PROLOGUE 序章
PROLOGUE 序章
ブリタニア私設研究所跡
かつて、人の身で魔王に行きついた少女、アリス・ペンドラゴンの姉であり、
伝説の勇者王アーサー・ペンドラゴンにより崩壊させられた研究所である。
風が吹いていた。
冷たい、冷たい風が吹いていた。
モンスター達から様々な技術を駆使して少しずつ居住地を奪い広げていった人類。
世界の人々はヒトの手によって滅びようとしていた。
A YEAR AGO 一年前
とある小国にて
とある2代筆頭貴族の片割れの嫡子が、国王に謁見を願い出て受理された。
合わせて王によって招集されたもう片方の貴族の当主もまた、馳せ参じた。
「陛下。」
「なんだツイッター公子。研究か探索に興じていた汝が政治の場に顔を出すとは珍しい。」
先程まで首を垂れていた男はやけにすっきりした顔で王に応えた。
その表情は陰気くさいなどと揶揄される男のイメージとは違い、
何処か少年のようで、また、青年期を迎えたものに見られる覚悟の強さを秘めていた。
「陛下は、この世界のありようについてどう思われますか?」
「ありよう、とは?……それは、余の政治に対する考え方を問うておるのか?」
「アンリッ!! …すみません陛下っ!!こいつは昔から喋り下手で…。」
親友の非礼をどうにかして撤回しようと招集された片割れを庇う男の名は、
「よい、バー公。余もこやつの性質など理解しておるわ。」
「はっ、ありがたき恩情にあります。」
ガリ・ガリクントスイカ・バー
つい半年前、先代のバー公当主である父親が亡くなったが、
その後を継ぎ、バー公爵としての任をしかりとこなしている、
名君の器が垣間見えると評判の将来を見込まれて縁談の話も多い若き公爵であり、
もう一つの公爵家の嫡男アンリ・ファーボル・ツイッターの親友である。
そんな輝かしい未来を約束されたガリとは違い、
アンリは次代の暗君とまでは言われないが、引きこもりの印象を周囲から持たれている青年である。
しかしこう見えて冒険者としての能力はそれなりのものである。
「して陛下。なぜ我々を招集なさったので?」
「ふむ。それは余が知りたい。ツイッター公子。此処に我ら3名のみで話したい話と言うのはどういう案件だ?」
「えぇ、それについては先の話に戻ります。」
「この世界のありよう…か?」
「はい。…正確にはこの星における覇権の話です。」
「それは、この国としてか?…それとも人類としてか?
どちらにせよ扶桑、ブリタニア、プロイセンなどは無視できぬな。」
「どちらかというと後者にあたります。…陛下は誰に仕えておりますか?」
「アンリッ!! 失礼にも程があるぞっ。へ、陛下っ!!どうぞ平に、平にご容赦願います。」
「ふむ。此処に余達以外の者がいれば別であっただろうが、
此処には余達以外はおらぬ。不問としよう。
…先程の質問であったな。そうだな、余は王であるからして余の上にあるものは神だけだ。」
「お答えありがとうございます。陛下、してその神とは?」
「神とは……神であろう。それ以外何であるのか。」
「私は、神を知りました。」
「何?」
「どういうことだ?アンリ。」
「只管研究に研究を重ね、書物を読み漁り、探索に向かい、
遂に神を識ったのです。」
「ふむ、興味深い、申してみよ。」
「神とは■■■■■=■■■■■■様です。」
「ん?聞き取れなかったぞ?もう一度申してみよ。」
「はい。■■■■■=■■■■■■様こそが世界の支配者なのです。」
「あっ……アンリ…まさか…まさか…。」
「ふむ、バー公今のツイッター公子の言、聞き取れたか?」
「あ…あっ…。」
「バー公?」
「はっ、い、いえ、陛下。私にも聞き取ることができませんでした。」
「汚■情報■域の最奥の幾数の玉座の中でもその頂に至った御方、
デ■■■ス=ス■ル■■ア様こそが世界を統べる御方なのだと私は悟ったのです。」
「まっ、まさかアンリお前…汚れた輪廻に触れたのかっ!?」
「流石だよガリバー。僕の事をよくわかっている。
君もこちらへ来るんだ。歓迎するよ。きっと、きっと至れるさ。」
「……余には今だ理解できぬ。どちらでもいい、説明してもらおうか。」
「アッ、アンリッ、今のは冗談なんだよな。冗談なんだろっ!!そう言えアンリッ!!」
「…陛下が■■■■■=■■■■■■様の偉大さに触れるに届かないとは、残念です。
■■カ■■=■■■■ィ■様…そうですね、氷結地獄の主と言えば解かりますか?」
「……残念だ、ツイッター公子。汝が邪教徒だったとは。
今のは聞き流すことはできん。余は汝を排さなければならない。」
「僕も、残念ですよ陛下。名君である陛下を中心にこの国をあの御方に捧げることができたのならと、
そう思っていたのですけどね…。」
「…せめてもの恩情だ。バー公、汝が介錯せよ。」
「はっ、そのお優しさに感謝します。………なぜだ、なぜ道を誤った、アンリ。」
王は自らの宝剣をガリに渡した。
「くっ、何故だっアンリッッ!!」
渡された宝剣でガリはアンリに斬りかかった。
しかし、その宝剣はアンリの『手』によって弾き返された。
思わずバランスを崩したガリはそのまま弾き飛ばされた。
壁に激突するガリ。
朦朧とする意識を必死に覚醒に向かわせながらガリが見たのは細い左手で王の首を掴んで持ち上げ、
右手の手刀でその根元を切り落とすアンリの姿だった。
「嘘だぁぁぁぁっっっ!!!!!!!」
絶叫するガリにアンリはゆっくりと詰め寄る。
慣れ親しんだはずの親友に恐怖を覚え、後ろに這い下がろうとするが、
既に後ろには壁があった。
「ガリバー、僕は至るよ。至って見せる。
更なる真理へ、更なる神理へ。
…追ってくるがいいガリバー。
仲間になるにしても、敵対するにしても、
僕は君を待っている。
――――――――できれば戦いたくはないけどね。
じゃあ、さよならだ。」
「アンリィィィィィッッッッッ!!!!!!!!!!!」
バー公爵の絶叫が響いた日、
小さな王国は壊滅的な災害に襲われた。
特に、王城の被害は大きく、中でも王の首が無い死体が発見されたことと、
二大公爵の頭首と嫡男が行方不明になったことはこの国にとって大きな痛手だった。
それでも、他国の庇護を受けながらも、もはや国と言うよりはただっぴろい農村となりながらも
人の共同体集落としては復興させた、第一王子の手腕は見事だったというほかない。
だが、この日より急速に顕われた邪教徒達の指導者、『虫の使徒』によって、
人の世界は緩やかに、しかし確実に崩壊に向かっていた。
本編とは微妙にあちらこちらとは細部の歴史が違う未来です。
BLにするかどうかは未定。
えぇ、親友同士の決裂とか物凄いキュンキュン来るんですケドね。