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風紀委員会委員長 結城 織姫

「ほっ・・」

満天の星空の下、俺は屋根に昇ってコーヒーを飲みながら星を眺めていた。

「やっぱり、龍一の淹れてくれるコーヒーはサイコーだぜ」

「いやいやそれほどでもない。って、ゆかり、どうしてお前がここにいるんだろうな」

俺の横にはお隣さんで幼馴染で紫色のツインテールの少女、神崎ゆかりがいる。

「それは、先輩がコーヒーを私に淹れてくれたからだぜ」

「いやいや、後で飲もうと思った一杯を勝手に注いじゃったのはお前だぞ」

「まあ、気にしない気にしない。それにこのまま帰ってもさみしいだけだぜ」

「さみしいって・家に誰もいないだけでさみしいなんて留守番すら出来ないじゃないか」

「気にしないでほしんだぜ。だって龍一が助けてくれるし。私が寂しい時はいつもそばにいてくれるから、一人で留守番できなくても問題ない、問題ない」

「だってな・・ゆかりってほっとけないところあるから」

俺はゆかりをほっとけないのだ。俺は彼女を妹のように思っている。だからかもしれないがさみしいと言わればほっとけないのだ。

「・・・しょうがないなあ、もう少しここにいてもいいぞ。コーヒーも淹れてやる」

「サンキューだぜ」

可愛らしい笑顔を向けてくるゆかり。俺はこの笑顔が好きだった。この笑顔をみると俺までなんだか嬉しい気持ちになるからだ。

・・・・・

・・・

・・・

それからしばらく星を眺めていた。俺はゆかりに頼まれて、コーヒーを追加で淹れて、持っていくと彼女は屋根の上であるのに関わらず寝てしまっていた。

「zzzzzzzz・・・」

完全に爆睡してしまっている。

「ったく、危ないやつだな・・」

屋根の上で寝ていてはいつ落下するかわからないので、ゆかりをとりあえず俺のベッドに運ぶことにした。

「よっ!」

俺はお姫様抱っこという形でゆかりを抱えた。これでも目が覚めないとなるとそうとう眠いが深いようだった。

そして、ベッドにゆかりを運んで布団を掛ける。

「ふあああああ・・」

俺も眠くなってきたので、入浴を済ませ、ベッドが使えないのでソファーで寝た。

・・・・

・・・・

・・

翌日

バタン

「イタッ」

俺は目が覚めると同時にソファーから落下した。寝相が良いと言えない俺にとってはソファーで寝るのは無理があったのかなと思うばかりだ。

「大丈夫か、龍一」

「あ、ああ・・」

ゆかりが声をかけてくる。だが、その格好は大変危ない格好だった。服を着ておらず、タオルを巻いただけの格好だった。風呂上りだと思うがそれを考えてもこれはよくない。

「・・・・ゆ、ゆかり、早く着替えた方がいいんじゃないかな」

「龍一、もしかして見惚れちゃってる?」

ゆかりは無邪気な笑顔でそんなことを言う。

「そんなことはいいから・・さっさと着替えてこい」

「はーい」

ゆかりはどこに行ったかは知らないが、俺のいるリビングから出て行った。

ここで俺の自己紹介をしよう。

俺の名前は五条 龍一。桜丸高等学校二年で生徒会会計。

俺はゆかりが出て行ったのを確認し、制服へ着替える。さらに思いっきりはねている寝癖を治し、顔を洗う。

「よし!」

俺は仕上げに両頬を軽く叩いて、目を覚まし、朝食の準備をゆっくりした。と、行っても昨日の残りのカレーに軽く火を通すだけだが。なので、ゆっくりとはあまり言えない早さで朝食(残りもののカレー)は完成した。

「これはこれは美味しそうな匂い・・」

カレーの匂いに吊られてゆかりが戻って来たようだ。

「おっ、丁度いいタイミングで来たな。朝食出来てるぞ」

「そうみたいだぜ。で、匂いから察するにまた、カレー?」

朝食のメニューを予想し、残念そうにするゆかり。これは少々心外だ。

「そんなに残念そうにするなよ。確かに夕食と朝食が同じメニューっていうのは飽きるかもしれない。でもな、カレーは違う。カレーは寝かせた分だけうまくなるんだ」

「・・・・龍一、そんなこと言ってももう通用しないぜ。これで朝食と夕食がカレーなの、一週間連続だぜ」

「あはは・・そうだっけ?」

ゆかりの言っているこれは正しい。俺は一週間、朝食と夕食はカレーである。

今までの会話でわかったかもしれないが、俺とゆかりは朝食と夕食を一緒に食べている。これもゆかりの両親は現在海外に出張中で(俺の両親もだが)ゆかり自身も料理できないからで、心配になった俺がゆかりに初めて飯を作ってあげたのがきっかけで現在に至る。

だから、ゆかりも一週間カレー生活を送っている。俺は一週間カレーでも飽きないが、普通の人は飽きると思われるので、ゆかりが文句を言うのは当たり前と言えば当たり前。カツカレー、チーズカレー、納豆カレーなど毎日違う種類カレーでゆかりがカレー尽くしでも飽きないように工夫しているのだが、そろそろ限界のようだ。だが、あと一日はこの生活が続く。

なぜなら、一週間前に友人を招いてカレーパーティーをしたのだが、気合を入れすぎて必要以上に作りすぎてしまい、カレーが大量に余ってしまったからだ。ゆかりにはすまないと思っているが、こうして飯を作ってあげている立場としては、カレーの処理に付き合って貰わねばなるまい。

「先輩、手抜きしてない?カレーの種類だって最近は野菜カレーとチーズカレーの二種類をローテーションしてるだけだよね」

ゆかりがジト目でそんなことを言ってくる。

「べ、別に手抜きなんかしてないさ」

少し動揺してしまった俺。これではさらに怪しまれてしまう。

「・・・で、先輩、手抜きをしてないと言うのであれば、その証拠を見せてほしいぜ。今日のカレーは何カレー?」

「聞いて驚くなよ、今日はビーフカレーだ!」

「・・・・・・」

俺の返答を聞いて黙ってしまうゆかり。何かいけなかったのだろう。野菜カレーでもチーズカレーでもない種類のカレーの用意したのだけど。

「龍一、ビーフカレーって、あの具なしカレーだぜ。それって、野菜カレーとチーズカレーのローテーションより手抜きに思えるんだぜ」

「・・・い、いや、そんなことはない。ちゃんと種類を変えたじゃないか」

「種類を変えればいいってわけじゃないぜ」

「・・・文句の多いやつだな、文句があるなら食べなくてもいいぞ」

「そんないじわる言わないでほしいぜ。文句なんかないから」

「よろしい」

俺はゆかりをなんとか説得し、朝食のカレーを二つテーブルに置いて、ゆかりと共に朝食を済ませたのだった。

・・・・

・・・・

・・・・

それから学校に行った俺とゆかり。俺はゆかりと別れ、2-Aの教室へ向かった。

「よう、龍一」

「おっす、信也」

俺に声をかけてきたのは、俺の友人の鳶一 信也。目つきの悪さとツンツンした髪が特徴だ。

「龍一、お願いがある」

今日会って早々にそんなことを言ってくる信也

「どうしたんだよ、朝から早々お願いだなんて」

「ああ、ちょっとな」

それから信也はお願いについて話し始めた。

「実はな、朝、風紀委員に大切な物を取られた」

「大切な物って、なんだよ」

「・・そんなのは決まってる」

「いや、わからないんだけど」

「はあー・・エロ本だ、エロ本」

「・・・・・」

俺は予想外の言葉に黙ってしまう。だが、俺の反応を全く気にしないかのように信也は淡々と話を進める。

「で、お願いっていうのは取られたエロ本を取り返してほしいということだ。ということで、お願いだ、風紀委員から俺のエロ本を取り返してくれないか」

「・・・・・」

ふざけたお願いにもう言葉も出ない俺。

「・・・本当は俺が自分で取り返しに行こうと思ったんだが、なんせ、風紀委員長がな面倒な奴だからな。俺みたいな一般の生徒じゃ相手にしてもらえないだろう、だが、龍一、お前みたいに生徒会役員の生徒なら相手にしてもらえると思ってな」

俺に頼んだ理由を述べた信也。だが、それでも俺はわざわざあの風紀委員長を相手にエロ本なんていうものを取り返しに行ってやろうとは思わなかった。

「悪いけど、パスだ。大切なものは自分で取り返してくれ」

「・・・仕方ないな。お願いが聞けないっていうならこれをばらまくか」

俺が信也の頼みを断った直後、信也がある写真を見せてくる。

「こ、これは・・」

俺は写真を見て驚いてしまう。

写っているのはダークブラウンの髪の女子。しかし、あくまでも見た目だけ。でも、正体は俺の女装姿である。元々女顔であるうえにある人物の素晴らしいメイク技術のおかげでこれが男とすら疑われないだろうが、やはり自分の女装姿を見られるのは恥ずかしい。

「さあ、どうする龍一、ばらまくかれたくなければ俺のエロ本を取り返してくることだ」

「うっ・・・わかったエロ本を取り返してきてやるさ」

俺は信也に迫られて俺は自分の名誉を守るため、頼みを聞くことにした。

そして、放課後、俺は風紀委員の活動拠点である応接室の前にやってきた。

「・・・・」

俺は覚悟を決めて扉を開ける。

コンコン

「し、失礼します・・」

俺はノックをし、応接室の扉を開けて中へ入る。

ギロッ

俺を見るなり睨みつけてくる風紀委員の面々。それもそのはず、俺の所属する生徒会と風紀委員会とは敵対関係にあるのだから。俺がエロ本を風紀委員から取り戻すのを躊躇ったのはそれが理由である。

「・・・・」

応接室はアウェー感が半端ない。これでは用件を伝えることはできないどころか話もできない状況だ。逃げ出したい気分だ。だが、逃げ出すわけにもいかない。信也の頼みを実行し、成功させなければ俺の女装姿の写真がばらまくかれてしまう。そんな恥ずかしい思いをするのは勘弁願いたい。それにもしも俺の女装だとばれた場合は俺の立場、名誉に関わる。そんな最悪の事態は避けなければならない。さあ、どうしたものか・・俺は考えこんでしまう。

「なにかようですか、生徒会役員の五条 龍一」

風紀委員の一人が俺に声をかけてくる。

「あ、あのですね、じ、実は・・」

俺の声が震えてしまっている。俺は風紀委員全36名に睨まれてビビってしまっているようだ。情けない限りだ。できればこのアウェー感をなんとかしてくれないかと思う俺。そんな俺に救いの声が差し伸べられる。

「みんな・・・見回りの時間だから、校内を巡回してきて・・」

応接室の奥から声が聞こえる。冷たく静かな不思議な雰囲気を放った声。

「「「はい!!!」」」

風紀委員の面々はその声に応じて学校の巡回をしに応接室を出て行った。

「ふう・・助かった・・ありがとうございます、結城先輩」

俺は救いの声の主に感謝する。

「いえ、ただ私も彼らが邪魔だったから・・」

部屋の奥から出てくる、女性。銀髪の髪、蒼い瞳、そして、不思議な雰囲気が特徴だ。彼女こそ、風紀委員会委員長、結城 織姫。俺が風紀委員会のメンバーで唯一まともに話せる人物である。

「で、先輩、実はお願いがあってきました」

「知ってる・・とりあえず座って」

話が早くて助かる。俺は指示された、応接室の奥のソファーに座る。すると俺の目の前にお茶とクッキーがおかれる。

「どうも・・」

俺がお礼を言う。すると、何故か織姫が俺の相向かいではなく隣に座ってくる。これでは話をするのに不便ではないだろうかと思う。

「で、龍一君、お願いって何?」

俺の心配をよそに本題に入る織姫。俺は少し戸惑うも対応し、ありのまま事情を説明した。

・・・・・・

・・・・・

・・・

「・・驚いた・・まさかあの写真がまだあったなんて」

そんなことを言いながらも若干笑みを浮かべる織姫。俺には織姫が一体何を考えているのかはわからなかった。

「で、例のものを返してもらえないでしょうか」

俺は織姫に信也のエロ本を返すように説得する。しかし・・

「それはできない。持ち物検査で回収したモノは返さないのは規則だから」

と言うイカにも風紀委員会委員長らしいコメントで説得は失敗する。

「そこを何とか・・」

俺は必死にお願いする。

「・・・・」

しかし、織姫は黙ったままだ。俺もダメかとあきらめかける。しかし、返ってきた言葉は意外なモノだった。

「構わない、あなたの親友からとったモノを返しても」

「えっ、いいんですか?」

ありがたい話であるが、さっき規則うんぬん言っていたので驚いてしまう俺。

「龍一君の頼みなら断る理由はないし、むしろ優先的に聞いてあげたいと思ってる・・でも、私も委員長だから立場もあるから、条件をみたしたらあなたの頼みを聞いてあげる」

「条件?」

俺は織姫に問う。

「条件一つ目、龍一君の女装写真のデータを提供すること」

「・・・・えっ?」

俺は意外な条件に驚いてしまう。一体何が目的なのだろう。俺の女装姿などもらって嬉しいのだろうか。まさか・・信也のように俺の弱みを握るつもりなのだろうか・・

「龍一君の女装姿の写真」

織姫は俺を急かしてくる。

「・・・・・しょうがないな」

俺は覚悟を決めて写真を提供することにした。ケータイを取り出し信也から嫌味のように送られてきた俺の女装姿の画像をそのまま織姫のケータイへと送信した。

「・・・いい、すごくいい」

画像を受け取った織姫は目を輝かせて画像を見ていた。それを俺の女装姿がそんなにいいのだろうか、もしかして、先輩はそっち系の趣味があるのか?と思いながら見守る俺だった。

「で、二つ目の条件・・」

織姫は写真をみながら次の条件を述べようとする。俺も気をとり直してそれを聞く。

「これ食べて」

織姫はクッキーを指差す。

「クッキーを食べることが条件ですか?」

「うん、そう」

なんだ、それだけでいいのか、ずいぶん簡単な条件だなと思いながらクッキーを手にした。だが、クッキーを口に運ぼうとした瞬間、その手は振り払われる。

「違う・・」

織姫はそう言ってクッキーを手にし、俺の口にクッキーを近づけてくる。

「・・・?」

何をするつもりなのだろう?俺はそう疑問に思う。

「龍一君、口開けて」

まさか・・

俺は織姫の言葉を聞いて織姫の考えを悟った。

「はい、あーん」

「いや、先輩、それはちょっと・・」

「あーん」

俺の反応を無視しさらに迫ってくる。

「あの、先輩、それはよくないんじゃないかなと・・・恋人でもないんだし」

「いいから。あーんしないと頼みは効かない」

そう言ってさらに迫ってくる織姫。

「わかりましたよ」

俺はこれで頼みを聞いてもらえるなら安いものだと納得して口を開ける。

「あ、あーん」

クッキーが口に運ばれようとした時応接室の扉が開く。

「・・・龍一、何してんの?」







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