第一話 記憶無き友
とりあえずよろしく
チャイムが鳴った。
亘は、誰だ、こんな深夜に…と思いながら玄関に向かった。
亘は埼玉から上京してきた。
28歳だ。今は週刊誌の出版社で働いている。
どうせ、間違えたピザの配達だろうと思った亘は、ドアを開けた。
亘は友達がいない。
とゆーか、今はいない。
上京する前に親友とお別れの宴会をした。
それ以来、友達はいない。
でも仲間はいる。
会社の仲間だ。
おっと、仲間も友達だと思ってる皆さん。
そうですけど、その仲間は亘の家に遊びに行っていない。
亘も、仲間の家に遊びに行っていない。
開けると、まだチャイムを必死に押していた。目も真剣に。
亘は唖然としていた。
今、深夜に大きいリュックとハムスターらしき小屋を持ちながら、真剣にチャイムを押している人が今、目の前にいる。亘は、我慢しきれず言った。
「もう、開いてますよ…」
その男はえっ、って感じで亘を見た。その後、いきなり泣き出して、
「うぉおおおお!!会いたかったぁ!橋本ぉ」
と膝をつきながら泣いていた。
いわば、泣き叫んでいた。
でも、今は深夜だし、この階には赤ちゃんがいる部屋もあるし、すごく迷惑だ。
「と、とにかく中に入れ。近所迷惑だし」
と言って亘は、男を部屋の中に入れた。
「んで、名前は?」
「五反田…」
「五反田?オレ、記憶力はいいけど五反田は覚えてないなぁ。それより、オレ、おまえと会ったっけ?」
「ひどいなぁ、会ったじゃないか」
「いつ?」
「それは、…」
話が長くなるので、じつは、五反田はオレが小さい頃隣だったじいさんの孫、オレをみたのは7秒らしい。
「はあああ!!?7秒?たったの?」
五反田は頷いた。
「い、いや、ふつうは7秒しか会っていない人の家に転がり込むか!?」
「まあ、オレはそんなタイプじゃない」
「なんだこいつぅ!すげーうぜー!!」
すると、五反田はハムスターらしき小屋からすごく太ったハムスターを出した。
「なんだこれ―――!」
亘は叫んだ。
「オレのたびの友、テムてムだ」
五反田はスマイルを送った。
「なんだおめ」
読んでくれてありがとう。




