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第8限目   私はノーマルです





剣道部の見学の後、俺は命と合流した。

そして現在、将棋と囲碁をしている・・・・・命が。


―――ミコトさん、つよっ!!


将棋部の部長からあっさりと飛車と角を奪取。その際、歩やら金やらを消費したが、飛車・角を手中に入れて負けるなんてことはありえない。いや、むしろ負けるほうが難しいだろう。

これは部長が弱い気もするが、おそらくは舐めてかかった結果がこれなのだろう。素人の俺でも気がつくミスをしていた。

偉そうにふんぞり返っていた部長は呆然。

 

 さて、実は命、囲碁と将棋で、多面打ちなるものをしている。囲碁のルールは良く知らないのだが、相手の石を囲んで領土を広げるという認識でおおよそ間違いないはずだ。俺が隣のオセロ部で連勝を重ねている間、軽快に盤上は埋まっていたようだ。

会長―――こちらは部ではなく同好会―――はそれなりの実力者らしく、よせをする前に投了(リザイン)

これまた命の勝利に終わった。

こいつがこんな特技を持っていたとは・・・・なんとも底が知れない奴である。



しかし、


―――あれ、おかしい?


そう思ったのは命の片づけを手伝っている時だった。

将棋部の部長さんと囲碁同好会の会長さんの顔が同じとかそう言うレベルじゃない―――同じ、というか双子らしいのだが―――もっと圧倒的な違和感。拭っても拭い切れない油汚れのような、ヌメリとした感じ。

つまり、嫌な予感というヤツだ。



「ぜひ、ぜひ我が囲碁同好会に入ってくれ!!君の打ち筋に神の一手を僕は見たっ!!」

「いや、ここは部費の出ない(。。。。。。)同好会ではなく、是非とも将棋部にっ!!」

「くっ、卑怯だぞ!(ひろし)っ!!」

「うるさいっ、(つとむ)。彼のような才能はしっかりとした環境があってこそ輝く物だ。弱小同好会に置いていて良い物ではないのだよっ!」

「だめだ、だめだ!!命君には我が囲碁部の救い主になってもらわなければならないのだ。命君!!ここは一つ会長の座を渡す心積もりだ。どうかひとつ受けてもらえないだろうか?」

「なっ!!」

・・・・・・etc。


さすがの命も困り顔かと思いきや真剣に悩んでます、こいつ。


さて、この状況の何がおかしいと感じるのだろうか?


いや、一般的な観点から見ると色々おかしいのかもしれないが、命は見ての通りハイスペックだ。たいていのことはこなす事が出来る超人である。たとえ、博と勉?。男二人(双子のそっくりさん)だとしても、その能力を頼られ、言い寄られる事は少なく無い。

男女かまわず、それなりの信頼を引き出す事が出来る稀徳なやつなのである。

そのはずなのだが・・・・・やはりこの状況はおかしい気がする。


・・・・いったい、何がおかしいのか?


―――わかった!!


 命に言い寄ってきていた中学生時代(。。。。。)女子(。。)が回りに居ないんだっ!?

俺と命が通っていた中学から、この高校はそれほど離れていない。ならば命目当てに進学しないまでも、偶然同じ進学先になることだってあるはず。

 砂糖に群がるアリのような彼女達が居ないのだっ!!


 命は鈍感野郎だ。

 聡いんだか鈍いんだか時々わからなくなるが、まぁ良い奴である事も確かだ。

 それは女子にも共通認識だったため、彼女達はかなり積極的に動いた。弁当作りから色仕掛けから友人である俺に対して・・・・絡め手で来たときは勘弁してくれと思ったが、まぁ肉食系女子の名に恥じない働きをしていた。その点は雑食系男子である俺も認める所だ。その彼女達が簡単に諦めるとは思えない!!

 この命が男だけに言い寄られるという“異常事態”という名の平和の裏には陰謀があるに違いない!!


―――断じて陰謀だっ!!―――


 自分の教室内の把握に努めていたが、自身の身の安全の確保のためにも、早急に女子分布の把握に努めなければなるまい!!と心の中で即決。

 そうなると、つい先程、印南を気絶させた事が悔やまれるっ!!奴の女子への熱意は並々ならぬ物が在る。それを活用しない手は無いのだ!!

つまり、

「命、ちょいトイレに行って来る」

「うん・・・・・悩む」

「・・・・・・存分に悩んでくれ」

実を言うと、この時命が悩んでいたのは“どうすれば二人を落胆させずに入部を断れるのか”という事だったのだが、この時俺はてっきり会長の座が欲しいのかと思っていた。この事実を俺が知るのは少し後の事なのだが、まぁこれは余談だな。




ともかくっ、印南の力を借りるために保健室にダッシュ・・・・・・おろ?


部長だか会長だか勉だか博だかが、言い争ってる後ろの窓の向こう。

分かり難かったが、ともかく窓の外でキラリッと何かが光った。


命が武道経験者で、人の視線や殺気などに敏感なのは以前いった記憶がある。

しかし、俺も実は視線にはそれなりに敏感だ。


それは、なぜか?

危機回避能力に優れているとまではいかないが、不陰気(間違いではない、念のため)、要するに不穏な空気や気配には敏感にならないと生きて往かれなかったのだ。


そしてこれには、・・・・・覚えがあるっ!!


かつて、“逃げ足のジョー”と呼ばれた足を駆使し、嘘だけど、下駄箱まで到達。

文化部の部室練は二階にあったので、そこを覗けそうな木を探す。


いたっ!!



「ぎゃぁーーーーー!!!でたーーーー!!げふっ!!」


「あんた、相変わらず失礼な奴ね」


「げふぉんっげふぉんっ!!?」

木から飛び降りて来た悪魔に肋骨を折られた。

「変なナレーション入れてんじゃないわよっ!!」

「痛い、痛い!!なんで分かったんだ!?」

「口に出してたわよ!!」


げしげしっ!



~1分後~



「盗撮女」

「死にたいの?社会的に」

「勘弁して下さい」

この女、本当に社会的に俺を殺そうとした事がある。


以前、命と俺が出来ている、つまりゲイだのホモカップルだのという噂が流れた事がある。


そんなにべったりしてるかっ!?

と、当時は憤慨したものだが、それはこの女、“田中 真紀”の仕業だったのだ!!


・・・・・・正直に言って、口に出す事もおぞましいのだが、俺と命のカップリングで小説から同人漫画まで―――クオリティーが高いから、なお悪い―――売りに出そうとし、内容は・・・・・おぇ、俺が総受けだった。

なまじ美少年だから、あいつに対する女子軍の妄想バイタリィーは並々ならぬ物がある。


曰く、冷たい感じの柏崎君ラブ。


曰く、運動してる時に髪をかきあげる仕草が素敵っ!きゃぁーーー!!


曰く、むらむらする。




・・・・確かに“ドラ○もん”でいう所の出来すぎ君キャラではあるが、命も一人の人間であり、怒ることもあれば、弱ることもある。

幸運かどうかは知らないが、俺はたまたま、そうゆう命を目にした時があるのだ。


現実には居ない王子的な奴なので、幻想を抱かれ易いのかもしれない。

その点では命に同情しない事もない。

が、本人はさらっと何気なく受け流すから性質が悪い。

それでまた人気が出るのだ、はぁ。



「・・・・何、勝手にため息ついて落ちこんでんのよ」


「いや、人生は無情だなぁ、と」


「はぁ?ほんと時々意味分からないこと言うわねー。また、寝ぼけてるんじゃないの?」

「・・・・田中サンこそ木の上で何してんだよ」


「ふっ、聞いて驚きなさい」

「聞きたくねぇ」

「新しい構想を練ってるのよ」


「やっぱりかっ!どうせ、そんな事だと思ったよ、命をネタにするのは良いけどさ、せめて俺を巻き込むのを止めて下さいっ」

「ちょ、ちょっと、泣くことないでしょ」


「いや、まじで、田中サン絵うまいよ?うまいけど、そこで俺と命が・・・・こう、まぐあう?ってのは・・・・」

「ま、まぐわうって!!あんたっ何言ってるのよ!!私のは、高尚な文学なのよ!!そんないかがわしい物じゃないわ」

「なんでそこで赤くなるのさっ!!完全にサブカルチャー入ってるくせに・・・・」

「うっさいうっさいうっさいー!!同人誌はちゃんと取引で回収してあげたでしょ」

「そ、そういう問題?」

「・・・・なんか、文句あるようね」

「めっそうもございません」


ほんとめっそうもない・・・・。

取引の内容とは・・・・・俺の沽券(こけん)に関る問題なので口外しないが、軽い女性不信になったとだけ言っておく。

ともかく、命及び田中真紀のせいで、俺は女子の友達が少ない、というか一人しか居ない。なので高望みはしないから、普通の話しやすくて、良識のある人と友達になりたかったのに・・・・俺の周りには変な女しか居ないのだろうか・・・。



「・・・・終わった」


「あ、あんたねぇ・・・・私をおちょくってんの?」


「何が?」


「また、口に出してたわよっ!」


「今回はわざとです」

「死ね!」


げしげしげしげしっ!!



~3分後~



実を言うと、文学系女子然としてるので、田中サンの攻撃は痛くない。

結果はごらんの通り、


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・・はぁ、どう、思い、知った?」


「・・・・めがねずれてるよ」


「むか・・・・って、あれ?そういえば、あんた眼鏡かけてるじゃない?」


「・・・・まぁね」


「伊達めがね?」


「はぁ?なんで伊達めがね・・・・意味無いっしょ」


「だって・・・・似合ってるし」

「えっ、聞こえなかった。なんて言ったの?」

「なんでもいいでしょ」

「はぁ、田中サン・・・・クラス、何処?」

「A組だけど、それが何?」

「Aには近づかないようにします、じゃ」

「ちょっと、待ちなさい」


襟を掴まれた所為で“ぐえっ”とかいう声が漏れて、涙目になった。

俺はこの超A級指定の危険人物から一刻も早く離れたいのだが、

「ナンデショウカ?」

「えっ、えーと」


何かいいづらいことでもあるのか、ものすごく“もじもじ”してます。

ふむ、即効で逃げようとしてもまた捕まりそうな気がするので、ここは状況を有効に使おう。


「・・・・あのさ、中学の時の同級生って誰か見かけなかった?」



返って来た答えは信じられないものだった。

つーか、まじかよ。




1年前はもっとだらだら出来てていたのになぁーのすずかぜです。

なんとか・・・・4月中に更新できた。

かなり中途半端で終わってますが、まぁそれはそれで・・・・。

早い人は昨日より前からゴールデンウィーク、皆さんは何処でお過ごしなんでしょうねー?人生は一度きりと言いますし、メシはおいしく、旅行でもしたい物ですなぁ~。

はい、休みのないすずかぜでした。

では、ごゆるりと

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