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第6限目   落下想起!?





「起きなさい」


「・・・・・むり」


「十秒待つわ。10、9・・・、0、死ね」


「ぐほっ!!?」


い、痛い。冗談抜きで痛い。噴火が起こって、噴石+落雷に当ったぐらい痛い!!

つまり、痛い!!!


「ごっほ、ごほ・・・・・い、いくらなんでも、おーぼーだ、らんぼーだ」

何が起こったのか簡単に解説すると、自分の部屋で寝ていた、黒木誠君はお隣さんのちづ姉に喉仏を襲撃され、起床。

・・・・・ホントに痛い。



「あんた、こうでもしないと起きないでしょう」

不機嫌そうな顔を隠そうともせず、きっぱりと言った。


そんな事は無いと反論したいが、自分の寝起きの悪さは重々承知している。起きたと思っても、記憶がトンでたりするのが、誠クオリティーなのだ。

が、しかしだ・・・・・。


「じぶん、途中で数えるの面倒臭くなったやろ!!そこは普通、律儀に数えるとこやんけ!!」

動揺しながらエセ関西弁で抗訴・・・・・。


「私の辞書に普通の文字は無いわ」

・・・・・敗訴。

腕組んで、きっぱり断言しよったで、奴。

ちなみに『抗訴』は脳内造語なのであしからず・・・・・あるのかもしれないけど。



俺の部屋からずんずんと音を立てて出ていくちづ姉。

それをなんとなく見送りながら、うつむきがちに髪をくしゃりと掻く。

気取るわけじゃないけど、爽やかな朝とは到底言えない、はぁ。


睡眠を要求する目蓋に抗いながら、身体を起こす。

起床時に朝日を浴びるのが本当は良いとされているが、残念ながらマイルーム影になっていて全く光が入ってこない。隣に3階建ての家がある所為かもしれないし、単に日が差す条件が無いだけかもしれない。眠い。ああああああああああ、体内時計と実際の時間は誤差があって・・・・・体内時計・・・の方が・・・・・・長い・・・・・・・。



ガクッン



「あっ、危っね!・・・・階段踏み外すとこだった」


冷汗をかきながら、思わず独り言。

ちづ姉の処置もまんざら間違いって訳じゃないのだ。

ただ、この階段を踏み外すって確立は結構高い。3回に2回ぐらいは・・・・はははは・・・・朝日浴びて体内時計リセットしよう!!




我が家は一軒家だ。しかし、ここには俺一人しか住んでいない。別に両親と死別したとかいう理由じゃない。息子をほっぽり出して、仕事を理由にして海外を飛びまわってる親だというだけ。この歳になれば気楽でいいのだが、当時は何気に辛かった気がする。大人になってああいう親にだけはなりたくないものだ。

親代わりと言うわけではないが、ちづ姉のモーニングコールも堂に入ったものである、うん。


常に家に親がいない俺は、昔からの習慣で朝食は加賀家のお世話になっている。本来なら、これからこれからちづ姉とご相伴に預らなければならないのだが、母方の従姉にあたるちづ姉は大学入学を控えた身である。時間が有り余っている身分として、これから二度寝でもするのだろう。基本的に寝ることが好きな家系なのだ、ウチは。



顔を洗い、歯を磨き、制服に身を包み・・・・・顔を洗う。

2度顔を洗うのは当然、途中で寝そうになるからだ。蛇足だったかな?これは。

ともかく、この工程をこなすと、鞄を引っ掴み、いざっ!!隣のお宅へ!!





 ◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆


【~昨日の出来事~】



じぃっと見詰め合う事しばし・・・・この子、美人さんだな、って俺はおやじか!?


「・・・・」


「・・・・」


・・・・いやーでもパッチリ二重で、鼻梁(びりょう)も整ってて、間違いなく美人さんですよ、はい。


「・・・・」


「・・・・」


・・・・・・・・俺、ホント何やってるんだろ・・・・。


女の子と見詰め合えば、そこには何か期待して良い物があるんじゃないんですかね、普通は!!

すわ、沈黙に怯えるとは・・・・・桑田さん信者としては・・・・。


「・・・・覚えてない?」

と、妄想してる場合じゃない。


答えずにいると左程、残念そうでもなく小首を傾げられる。

・・・・俺が残念なような、そうでもないような。


「それっていつの話?」


「・・・・私が下校してる時の帰り道。2人の男に絡まれた。そこにあなたともう一人の男の子が来て、助けてくれた」

ん?それは・・・。


「私の腕を掴んで引きずろうとしてた男の腕を持っていた竹刀で打ちこんだ。もう一人の男の子は殴りかかった男をふわっと掴む様に投げてた」

「もしかして・・・・その後、君の手を掴んで逃げた・・・・?」


「そう」


これは心当たりがある。幸いというかなんというか、ちょうど剣道の大会の帰りだ。いやがってる女の子を車に連れ込もうとしてるのを見て、かっとなって助けに入ったんだ。

よく考えてみると中学生の分際で大それた事をしたもんだ。命が居たから良かったものの、危険な事に首を突っ込んでリンチにでも遭ってたらやばかっただろうな。

中2の喧嘩量なんか、たかが知れてるし、その時に何か武道をやった経験とかもなかったし。

警察に通報して、ハイさようなら~が常識的な判断なのだろう。

・・・・・間違った選択をしたとは思ってないけど・・・ね。


「・・・・・それにしても、よく俺の顔を覚えてたね。もう2年前ぐらいの事だし、けっこうあの時暗くなかった?」


「それは・・・・・あの時のあなたが格好良かったから」


「えっ!?」


ふ、不意打ちに顔を赤らめるなんて反則だ!!卑怯だ!!

か、かわいいじゃないか!?

表情が無い、無表情も表情のひとつなのだと、今日俺は知った。

なぜなら、そこから変化する顔つきによって印象ががらりと変わる。


ギャップ萌えだ。


くっ、命じゃなくて俺にこんな役回りが来るなんて・・・・いや、さっきもデートに誘われてたな・・・。

つまり・・・・ついに春が到来か!?



「・・・・剣道部、入るの?」

うっ!どうしよう・・・・。

ちょっと浮かれてて忘れてた。

剣道部は防具もろもろが高い。せこいと思わないでくれ。実際のところ、高校に入って本格的に始めるとしたら、一式そろえていた方が良いだろう。しかし、やはり高価な買い物になる。

封麗学園の剣道部がどれだけの強さなのかは分からないが、普通の運動部の部活動ならば毎日練習がある。自前の防具を持ってないと何か不便だろうし、何よりかっこがつかない。

はぁ、一先(ひとま)ずは他の部活も見てみたいし・・・・。


「もうちょっと考えて決めるよ。」

「そう」

「うん、そう」

「・・・・私、氷ノ山(ひょうのせん)有紀(ゆき)

「あっ、俺は黒木誠。もし入部することになったら、よろしく頼むよ」

俺がそう言うと、一瞬複雑そうな表情を浮かべ、笑って頷いてくれた。

その一瞬の合間が気になったものの、こちらも頷き返し、手を振りその場を後にした。




正直に腹を割って話そう。後ろ髪惹かれまくりである。

自分が暴漢から助けた子と再会なんて、どんなギャルゲーだよと思う。男性諸君は同意してくれるだろうが、よしんば助けた子と再会したとしても、その子が可愛いとは限らない。

いや、誤解を恐れなければ可愛いという感じではなく・・・・美人。見る人から見たら冷たい印象を受ける人がいるかもしれない。しかし、赤くなった顔は花開くような愛嬌(あいきょう)があったように思う。

彼女を助けた後、俺の方は助けた女の子をろくに観察もせずに(気恥ずかしさも手伝って)駅まで送り届けて、さっさと命と合流したが、いやはやこんな形で身を結ぶとは・・・・。


なははははっ、うらやましーだろう!!と飛びまわって報告したい。

デート(?)に誘われといて不謹慎なと思うことなかれ、再会の感動は本人の劇的衝撃が有ってこその物なのだ。薄情な様だが、人生にリセットボタンは無い。むろんセーブ機能も無いのだから、身に覚えの無い事よりも、確実にプラスメーターから始まる覚えの有る事の方が嬉しいに決まってる。



「誠」

「おお、命君ではないか」

呼び声に両手を広げて答える俺。


「・・・・ずいぶんとご機嫌な様子だな?」

大げさな様子に、命の顔には苦笑と、またかという呆れが浮かんでいる。

そんなにしょっちゅう情緒不安定になっているだろうか?


「それで?その喜びを俺にも分けてくれないのか?」

片手を差し出し、普通の奴がやったらキザに見えそうな仕草で命が答えてくれた。

こうしてちゃんと乗ってきてくれるのが命の良い所である。



 ◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆



事の次第を話すと命が引っかかったのは名前だった。

足を止めるとポツリと呟く。


「ひょうのせん・・・ゆき?」

「あれ、もしかして知り合い?」

違っててくれと焦りながら聞くと首を振った。


「いや・・・・・めずらしい名字だと思ってな」

「まぁ、確かにな。でも一学年四百人近くいるんだから、めずらしい名前もいっぱい有るだろ」

命は釈然としない表情で頷きながらも納得したのか、再び足を動かし始めた。


う~む・・・・俺のほうには心当たりはないのだが、何か知ってるのだろうか?




歌詞転載の注意があったので修正。書きあがってる分だけでも、更新した方がいいのかな~?


ごゆるりとば

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