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第3限目   朝には弱い・・・よね?



 朝はやはり眠い。それに今日は雨だ。

 空が暗いと眠くならないか?それにはちゃんと理由があるのだよ、ワトソン君。

 まだニンゲンが火を使う事を覚えたばかりの頃、狩猟民族だった我らが先祖。しかし、雨の日に狩りをするのは効率が悪い。暗いし、地面はぬかるむし、動物も隠れる。そうだ、雨の日は洞窟で寝よう!と、なった我らが先祖。その記憶がDNAに刻み込まれているのだ。つまり、雨の日は眠くなる。決して俺が朝に弱いわけではないっ!!


(・・・我ながらテンションがおかしい。このままだと目的の駅を寝過ごしそうだ)

立ったまま寝れるわけもないという事に気がつかないまま、ぎゅうぎゅう詰めになった電車の中を見回す。


――何か眠気を覚ますものはないだろうか?


と、近くで恥かしそうに“もぞもぞ”と動く女の子を発見!

 最初、トイレに行きたそうだから折り紙で便器を折ってあげることを想像・・・・・眠さで頭がどうかしている身でもさまざまな障害があることに思い至って、中断。

(―――本当にアホで済みません)

 誰に謝ってるんだろうと思いつつ、よくよく見てみればクラスメイトの遠見さんだ。眠気覚ましに話しかけようか思案して、気がついた。


(―――痴漢に遭ってる!?)


 眠い頭の中で、助けようと大合唱する天使。いや、めんどいからこのまま見なかったことにして、更に寝たまま海に行こう、とナイフをちらつかせる悪魔。


(―――悪魔・・・・優勢。よし、海に行こう)


 ふざけた思考を持てあましながら、迷惑そうな視線をやり過ごし、痴漢男と遠見さんとの間に体を割り込ませる。驚いた顔をする遠見さんを無視して痴漢男に睨みを利かせた。

 以前、友達から朝の誠の目は怖いと聞いたことがある。眠さで歪められた目はラリッてるとか・・・・。そんな誠に話しかけてくる印南とかは案外大物なのかもしれない。


 かち合った視線に威力を乗せてすごすことしばし、次の駅のアナウンスが聞こえてきた。俺の視線の威力に真っ青になった男は慌ててその駅に降りていった。

 なり行き場腕の中に囲うことになった遠見さんと目を合わす。安心させようとにっこり笑いかけるも、どこかぼーっとした顔。若干顔は赤くて、密着した体は温かい。視線が合ったことに今気がついたかのように、はっと顔を下に向ける。また顔を赤らめる。


(―――ま、痴漢現場を目撃されて、良い気分になる人はいないよな)


 英雄的行為と朝効果でハイになった思考の片隅で罪悪感を覚える。


 誠自身がやろうと思えば、痴漢男を捕まえる事も出来たはずだ。しかし、打算めいた考えで“あの男を捕まえたら、事情を話したりなんやかんやで、遅刻する(。。。。)上に目立つ(。。。)”と思ったのだ。いや、大事になるのはこの子にとっても望ましい事じゃないかもしれない、などと自己弁護するも、どこか言い訳染みている事を否定できない。

 だんだんと熱の冷めていく気分を味わいながら、後悔が頭の中で飽和する。


(―――はぁ)


極端なのもので、朝の自分はやはりおかしいと思う。

目的の駅に着くと、学校に向かう他の生徒と一緒に駅に排出される。

最終的に後悔でいっぱい。

(―――薄情かないや捕まえなかった時点でそんな事言えた義理じゃないかはぁ俺はなんて駄目な奴なんだ最低だクソだ迷惑な奴なんだそうだ死のう)



「あああ、あの、ありがとうございましたっ!!」


 遠見さんは、視線を浴びる事にも構わず――顔が真っ赤にはなっていたけど――かなりの大声でお礼を言ってきた。


気恥ずかしさとほんの少しの報われた気分を味わいながら、軽く手を挙げてそれに応えた。



 俺は多少の幸福感を味わいながら登校。しかし、基本的に朝起きた事を覚えてることが出来ない俺。綺麗さっぱり、何が起こったのか忘れてしまった。それが俺の一番嫌いな面倒を引き起こす要因になろうとは、このときは知る(よし)もなかった。




◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆




「あー文化系の部活は今、仁尾が配った冊子の部室で活動している。あいにくの雨で室内系の競技しか今日は活動してないようなので、仮入部は明日以降にしたほうがいいと思うぞ。なにか質問はあるか?」

うーむ・・・とりあいずは命と回るとして、なにか面白そうな部活があるかな?


「はいはーい。先生質問。部活の掛け持ちはいくつまでですか~?」

印南か。

「知らん、委員長に聞いてくれ」

「委員長~?」

「・・・・先生」

仁尾さんの怒り顔は迫力があるな・・・・。

「冗談だ。そんなに怒るな、仁尾。あー印南、部活ごとに掛け持ちを嫌うところもあるだろうから、そこはそれぞれの部活に自分で伺いを立てろ。ま、体育会系の部活はあまり掛け持ちはお勧めしないな」

掛け持ちか~・・・個人的に帰宅部でも良いやと思っているのだが・・・・。

 このあいだ、仁尾さんと作った冊子には色々と書かれているが、そのうちのいくつかが異彩を放ってる。

 俺としてはかなりお近づきになりたくない。


『超・超能力部』

これで部費が取れてるのか?


『漫画研究部』

絵がすごい。プロ顔負けだ。書いてる人に興味があるが、全く知識のない俺が行っても迷惑になりそうだ。


『ネガティ部』

・・・・・部なのか、これ?ただの親父ギャグだろ。


 ざっと見ただけでも怪しい部活がかなりある。部に認定されてないものも合わせれば、百近くはありそうに見える。回るのをしっかり決めないと量は半端ないな。


「これなんかどうだ」

命が指差したのは・・・・。


『叫部』


 ・・・・・これらの部を考えた奴はアホなんじゃないだろうか?

 実態はワンダーフォーゲル部のようだ。山登って叫ぶらしい。オカルト系の部活かと思ったのだが、意外と体育会系。

 所属人数は10名。冗談としか思えない部活に入る奴がいる事が驚きだ。掛け持ちをしてるんだろうな、これ。


 呆れて命の顔を窺うと・・・・・わぉ、こいつ入りたそうにしてるよ。


「他に質問がある奴もいないようだし、ここで解散」

若林の合図と共に日直が礼の号令を出す。まぁ、今日の日直は俺と如月さんなんだけどね。



日直の義務である日誌につらつらと文字を書き連ねていると、遠見さんともう一人が声をかけて来た。

「やっほー、黒木クン~ウチらと一緒に部活の見学に行かない?」

 この人は確か、双海(ふたみ)梨花(りか)だったかな?

 小さめの体つきに、ほっそりとした手足。パッチリとした両目が活発そうな雰囲気(ふんいき)をかもしている。印象通りの性格らしく、数日を待たずにクラスのムードメーカーになっているようだ。

 印南のお奨め美少女ランキングとかに乗っていそうな人だ。

 こっちを見る目が半笑いなのと、ニヤニヤと口元が笑っているところが気になるといえば気になるが・・・。


「く、黒木君!!ご一緒してもよろしいでしょうか」

 元気な双海さんとは対照的におずおずと恥かしそうにやってきたのは遠見さん。こちらは前髪が長すぎて野暮ったいきらいがあるものの、印南のアホが図書委員に立候補した事からも分るように美少女といっても差し支えない容姿を持っている。個人的にはビクビクと怯えてる様が、悪いことをした気分にさせるので苦手なのだが・・・・・はて、美少女コンビに声をかけられるような事をしただろうか?


 黙ってるのも悪いと思い口を開く。

「あー命。柏崎もいっしょに回るけどそれでも良いなら・・・・」

 口にしてから気がついた。なるほど、命がお目当てか・・・・期待していたわけではないが、気がついてみればなんて事はない。中学の時の修学旅行の班分けで命と一緒になろうと女子が争う事態が起こった。その結果、血で血を争うことになって・・・・・俺は命同じ班だった所為もあって、それを止める部隊に任命された。思い出すのも嫌になる忌まわしい記憶だ。

  

 俺の言葉に頷く2人から命に視線を移す。命は今、俺の日直の仕事を手伝って黒板を綺麗にしている。その掃除の仕方はあいつの性格が表われているかのように丁寧だ。


「命ー?双海さんと遠見さんが一緒に部活回らないかって言ってるんだけど・・・」

「俺の方は異論はない。・・・雑巾を洗ってくるから、二人に回りたいところを聞いておくといい」

宣言通り、雑巾を洗いに行った命に苦笑しながら、双海さんにじゃれ付かれてる遠見さんに聞く。


「それじゃあ、どこか行きたいとこある?」




◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆




「それでこうなるわけね・・・はぁ」

俺達は現在『超・超能力部』の部室の前にいる。


「頼もう~!!」


俺の呟きを意にかえさずに双海さんが、大声を出しながらガラガラと引き戸を引く。

部室練の端っこの方に位置する。活動さえ不明な部活を覗こうと言ったのは意外にも遠見さんだった。彼女の事だから文芸部を希望するかと思ったのだが・・・まぁ、見学するだけなら自由。

 いつものいやな予感はしないから大丈夫だろう。もっとも、予感がした時には手遅れの時がほとんどなのだが・・・・。


「・・・すみません、黒木君」

あれ?顔に出てたか?気をつけたつもりだったのだが・・・・。

「いや、全然大丈夫だから。なにをやってるのか、多少興味あったし。なぁ、命」

「その通りだ。どうせ2人で回ってもつまらなかっただろうしな。遠見さん達に声をかけてもらえて光栄だ」

ナイス命。命の言葉でほっとした顔になる遠見さん。そりゃ声をかけておいて嫌われたら大変だろうからね。


「・・・・3人ともなにしてるの、はやくはやく」

 双海さんが部室のドアを開けて俺達を急かす。

 中に入ってみると意外にも片付いている。もっと痛い連中が、ごちゃごちゃしたものを持ちこんでカオス状態になっているのを期待と共に想像していたのだが、若干残念。


「誰もいないじゃん」と俺。

「誰もいないようだな」と命。

「・・・ほんとにいません」と遠見さん。

「にゃはっはっはっはー・・・・・・・・いないね」と双海さん。

「いないならしょうがないんじゃない?」と・・・・・誰?


ばっと、いっせいに振り向くとそこには白衣を纏った女の人がいた・・・・。



…to be continued

オッス《すずかぜらいた》です。

・・・・あまり話が進みませんね?

恋愛要素ゼロ、とまではいかないものの・・・火種がーーー!!火力がーーー!!

・・・・足りません。


さて、誠君ですが。彼には重大な病気があります。それはタイトル通り、朝に弱いこと。朝起こった事を彼は覚えておく事が出来ません。しかも、睡眠時間を削られると・・・・狂暴化します。《すずかぜ》は便宜上モーニングバーサーカーと呼んでます。略して『モバ』。

これで、波瀾を起こしてくれれば良いなと願っています・・・。


最後にご感想とご意見、特に如何こうして欲しい、これは違うからこうした方が良いなどといった具体的な意見を募集中です。

ではでは、ごゆるりとば

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