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第2限目   放課後




「結局、代議委員てどんな役職なんだ?」

と聞いてくる命に答える。

「・・・一番面倒な役職だよ。委員会の会議全部に出席して、それを記録報告する役割なんだ。会議が重なった時は重要性の高いものに出席すれば良いんだけど・・・・・」

面倒なんだ。

「・・・ふむ、誠向きじゃないか」

おまえがやってみろよ・・・・はぁ。


「ん?なんの話をしてるの?」

如月さんが興味を示したのか、話しかけて来た。

・・・・いい機会だから命の事も紹介しておこう。

「あーと、如月さん?こいつの名前は・・・」

「知ってるよ。柏崎命だったよね。同じ保健体育委員だし、覚えとかないと失礼ってもんでしょ」

なるほど、そういえばそうだったな。命の方は如月さんを紹介する必要は無いな、なぜならこいつは・・・・。

「私は・・・」

「如月瞳さん」

一度聞いた名前と顔を一致させるのが得意なんだ。この特技が少なからずこいつのモテメーターに関係している事は明白だろう。正直スペックの違いをこうゆう時に感じる。


「おお、柏崎君やるな~。ねね、それでなんの話をしてたの?」

「・・・性は長いから、名前で呼んでくれて構わない。それと誠が代議委員に向いているという話だ。」

「ああ、なるほどね。苦労を背負い込みそうな所は向いてるかも・・・」

如月さん!君に俺苦労の何が分かるって言うんだっ!!




 ◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆




朝は基本的にだれる。夜更かしをしているワケではないが、歳の所為かだるい。

「歳っておまえ、まだ16だろ」

アホ印南(いなみ)


「勝手に人の思考を読むな」

「口に出してたぞ」

うっさい、オタク野郎。

今、俺達は電車に揺られてる。電車通学中というワケだ。

「まーこーと」

「・・・今眠いから話しかけるな」

「おまえさ、教室でどの子が好み?」


「・・・・・」


「うちのクラスってかなりレベルが高いよな~。しかも噂によると今年入ってきた中に、白銀財閥の孫娘が通ってるらしいぜ。ま、金持ちイコール美人ってワケでもないけどさ」


「・・・・・」


「仁尾さんとか、如月さん、双海さんもよかったな~。でもやっぱり一番は遠見さんでしょ。あのどじっ子レベル。まじで萌え~だわ」


「・・・・・」


「・・・・・寝たふりをするのは勝手だがな、男らしく生きたらどうだ?」


「・・・・・うっさい。二次元に生きるのが男らしいのかよ?」


「ぐっは、痛いとこ突くねぇ。でも、二次元だけじゃ無いぜ。ちゃんと三次元にも興味持ってるだろ。ったくよー、秘蔵AVの数々を貸し合ってたあの頃が懐かしいぜ」


「あ、アホかおまえ。大きな声でそんな事言うな」


「いーや、言わせてもらうね。高校生になったんだ。単なるエロガキを卒業して、俺達は真なるエロ紳士になるべきだ。だから好みのタイプを教えろや。似たタイプの子のAV貸してやるからさ、ほれほれ~仁尾さんなんかおまえの好みにストライクじゃないの~?」

 好みのタイプ?知るかそんなもの。こいつのせいで当時好きだった子にAVの交換現場を目撃されて、がんばって近づけた距離がおしゃかになったのは今でも記憶に新しい。格好つけるわけじゃないが、過去から学ばないほど愚かではないつもりだ。あー眠い。



 駅を出て封麗までの道のりをまとまらない思考で歩く。

 思考というよりも、ボーとしていると言った方が正しい。朝の俺は記憶喪失になることたびたびだ。お構いなくぺちゃくちゃと喋り続ける印南に視線を向ける。と、そこでようやく思考が働き出したのを感じた。昨日起こった事に記憶が行き付く。


「・・・・・印南、殺す」

「へ?ごっふ・・・唐突に・・ちょ、たんまグハッ、は、話せば・・・」

「分らん!!」

印南のタコをぼこぼこにし、すがすがしい気持ちで登校を再開する。ぼろぼろになりながらも印南も付いて来た。

「・・・・・俺なんかしたっけ?」

おまえのせいでめんどくさい役職につかされたんじゃないか、俺が忘れてもおまえに忘れたとは言わせん。

文句もそこそこに教室に入り、鞄を机に下ろす。

「黒木君・・・」

委員長か。

「どうしたの?仁尾さん」嫌な予感がする。


「放課後、教室に残りなさい。代議員の仕事があるから」

嫌な予感ほどよく当たるものだな・・・。


「それって拒否権は「無いわ」ですよね」

・・・・・もう一発印南をなぐっとくか。




 ◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆




「黒木君」

お昼休みの弁当を抱え、命に声をかけようとした時にそれは聞こえた。

「え?俺の事ですか・・・?」

 今日はよく声をかけられる日だなと思いながら見る。ドアから顔を覗かせ、俺に声をかけてきたのはきれいな黒髪の目立つ美少女だった。少女といっても、腕章の数を見れば1個上の2年生だとすぐにわかる。

「そ、あなたのこと・・・・お昼、一緒に食べない?」

その言葉に、にわかにざわめく教室。

「わかりました。行きましょう」

俺は大事になるのを恐れ、その言葉に頷くと面識の無い先輩を急かした。



 目的地があるのか?迷い無く先に進む先輩の後ろ姿をなんとなしに眺める。背中まで流された髪は、黒檀の色を為しながら透き通る様だった。手入れが大変そうだな、なんて現実逃避をしていると目的地に着いたようで、揺れる髪が停止した。

「あれ?屋上、カギって閉まってませんでしたっけ?」

「ふっふっふっふ・・・・・じゃーん!カギはここにあります!!」

なるほど、突き出された右手にはそれらしきものが握られている。でも、なんで持ってるの?


俺の疑問をよそに屋上の扉を開けるとさっさと入っていく先輩。

ドアを潜り抜けるも、三月の気温はまだ肌寒く、思わず身震いをしてしまう。


「さっ、こっちに座りなさい」

用意が良いことにレジャーシートが引かれている。

「あの先輩、俺と面識ありませんよね?」

「ん?話聞いてない?千鶴先輩から」

千鶴・・・・ちづ姉?聞いてないんだけど・・・・・。

しかしながら、ちづ姉の名前が出てきた事からそっち関連という事がわかった。が、嫌な予感がする。


「私、生徒会長になりたいんだ」

へぇ~・・・もきゅもきゅ・・・・ごっくん。

「そんで、千鶴先輩が今年入学してくる黒木誠君を頼れば一発でなれるよって言ったんだ」

ふ~ん・・・もきゅもきゅ・・・ごっくん・・・・ごほごほ、み、水・・・。

お茶を手渡してくれた先輩にお礼を言い、無責任な事を言ったちづ姉に恨みを捧げる。


「・・・あの~、失礼ながらお名前など教えていただけませんか?」

「私は、朝倉ほのか。・・・・ホントに聞いてなかったんだね」

「ええ、まぁ。・・・・・ちょっとトイレに行って来ます。俺に構わず、弁当食べてて下さい」

手を振ってくれる朝倉先輩に背を向け、携帯のアドレスでちづ姉を探す。

軽い着信音と共に電話にちづ姉が出た。


「はい、加賀です」

「ちょい、ちづ姉!!生徒会長になりたいって人が俺のとこに来たんだけど!?一体何を言ってるんだ」

「あら、誠。元気にしてた?」

「くっ、白々しい。朝も家で顔を合わせてるだろっ!それよりも朝倉先輩どうすればいいんだよ?」

「あらあら、誠は頼ってきた先輩一人も助けられないのかしら?それにあの子は絶対誠の好みのタイプだと思うのよね~」

「そうゆうことじゃなくて・・・・」

「うふふ・・・私は困った誠の顔が好きなの。じゃあね~・・・」



ブチッ、つーつー



(―――き、切りやがったあのアマ。・・・・・俺にどうしろと?)

絶望的な気分で汗をかきつつ、すっかり温まった身体を冷やしに屋上にとぼとぼと向かった。


「おかえり・・・・さっきの話は考えてくれた?」

 どうやら俺が席をはずしたのは考える時間が欲しくてはずしたのだと思ったようだ。そんな風に上目使いで聞かれるとたいへん心臓に悪い。しかも、ちづ姉が言った事が意識されて気恥ずかしい。好みかどうかは置いといても、この朝倉ほのかという人は間違いなく美人の部類に入る。

「あーと、突然のことだったんで、もう少し考える時間が欲しいんですけど・・・・・なんかすみません」

「あっ、そっか・・・・・時間はまだいっぱいあるから気にしなくて良いよ。こっちこそ突然押しかけちゃってごめんね」

そう言われると、こっちが悪い気がしてくるから不思議だ。


「あの、ちづ・・・る姉さんとはどういう関係なんですか?」

「う~ん、勝手に話して良いのかちょっとわからないけど・・・まぁいいよね。千鶴先輩とは生徒会のつながりで、先輩は生徒会長で私は書記としていたの・・・」

生徒会長・・・・全然知らなかった。

「ちょっと変な先輩だったけど、面倒見もよくて、すっごいお世話になったんだよ。今期の生徒会長が決まって千鶴先輩も引退しちゃったけど、ちょくちょく顔を見せに来てくれたんだ。それで・・・・」




『千鶴先輩っ!私、生徒会長になりたいです!!私も先輩みたいな生徒会長になれますか?』


『う~ん、無理ね。あなたには色気が足りないから』


『えぇ~!!い、色気ですか!?』


『うふふふ、冗談よ冗談。あなたはあなたのままでいいのよ。無理に私になる必要は無いわ。自分なりの生徒会長になれば良いわ。ま、なれるかどうかはあなた次第だけどね』


『先輩・・・・』


『そうね、私の弟分に誠っていうのがいるんだけど、たぶん来年この高校に入学するから、困ったらそいつに声をかけてみると良いわ。生徒会長になる手助けをしてくれると思うわよ。あいつは私のしごきに耐えた奴だから、生徒会長なんか一発よ。うふふふ・・・・・』


『あ、ありがとうございます先輩』


『どういたしまして、がんばりなさいよ』




「そう言ってくれたの・・・・・まぁ、それが無くても君には声をかけるつもりだったけどね。お世話になった千鶴先輩に報いるためにも、何か困ったことがあったら黒木君の方こそ声かけてね?」

 ちづ姉にはもったいない後輩だ・・・・・それにしてもちづ姉、何言ってくれてるんだ!?絶対楽しんでるだろ!?これじゃあ俺がものすごく悪役みたいじゃないか!?先輩面するなら俺に後を押し付けるとかありえないでしょ!


「さてと、今日は黒木君と話せてよかったよ。選挙はまだまだ先だけど、生徒会に興味があったら覗きに来てね?」

にっこりと綺麗な笑顔で言うと、颯爽と去っていった・・・・・と思ったら戻ってきた。


「どうしたんですか?何か忘れ物でもしましたか」

「うん、したした。はい、これ」

これは・・・・屋上のカギ?

「千鶴先輩曰く、生徒会に受け継がれるカギなんだって。スペアキーはまだまだ持ってるから、黒木君にも一本あげるよ」

 ちづ姉・・・・・絶対それ嘘だろ。あの人そういえば中学の時も屋上のカギ持ってた。9割方、ちづ姉が作った物だな。だけど・・・・。


「ありがたくいただきます」

タラリッラッタラーン!!屋上のカギ、ゲット!!




 ◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆




教室に戻り、クラスメイトの追及をかわす。若林先生が入ってきて、ようやく収まったと思ったら、隣の席から紙が回ってきた。

印南いなみの奴からだ。

どれどれ・・・・・。

『誠へ、一生の頼みがある。俺に朝倉先輩を紹・・・・』

最後まで見るまでもないな。くしゃくしゃにしてごみ箱にシュート。

悲鳴が聞こえた気がしたが、無視無視。

と、そこで隣から袖を引かれる。


「ねぇ、あの先輩。黒木君になんの用だったの?」

如月さんか・・・・・。

「いや大した用じゃないよ、ただ俺の従姉が共通の知り合いでいただけ・・・・・」

「ふ~ん」

 どこか信じてない様子の如月さんに苦笑が漏れる。みんなゴシップ好きだな。すぐに恋愛事に持っていこうとする気持ちは分らないでもないけど、当人からしてみるとなかなか困りものだ。

などと考えていると、再び紙が回ってきた。

『誠へ、後生だから、朝倉先輩のメールアド・・・・』

へりくだった文章がきもい。これまたごみ箱にシュート。

今度は怒声が聞こえてきた()がしたが、若林に叱られて収まった。

やれやれ・・・・・。




 ◆◇◆ ◇◆◇ ◆◇◆




ぱっちん、ぱさ、ぱっちん、ぱさ・・・。


「・・・・仁尾さん」

放課後、言われた通り残ったら・・・・なぜかクラブ案内の冊子を作る羽目になった。

「なにかしら?」

「これ、ほんとに代議委員の仕事?」


ぱっちん、ぱさ、ぱっちん、ぱさ・・・。


「・・・・私は使えるものは使う主義なの」

言ってる事はカッコイイが、この場合使えるものとは俺の事だ。


「・・・・仁尾さん」

もう何冊目だこれ?

「なにかしら?」

「・・・・頼まれても、断った方がその人のためにもなったりするよ」


ぱっちッガキッ・・・・・・。


 図星か・・・。この案内、委員長の仕事にしても多すぎる。他のクラスの分まであるみたいだ。大方、若林がくじ引きで負けて他クラスの分まで作る羽目になったのを仁尾さんまで回したのだろう。日直だった命が朝、職員室が騒がしかったとか、くじ引きがどうで若林が負けたとか言っていた。それほど、この推測に間違いは無いだろう。


ホッチキスの芯の詰まりに苦戦する仁尾さん。見るに見かねてその手からホッチキスを取り上げると、軽く叩いて直してやる。

「・・・・ありがと」

ぼそぼそとお礼を言ってくる仁尾さんに笑いかけてから作業を再開する。


「・・・黒木君?」


ぱっちん、ぱさ、ぱっちん、ぱさ・・・。


「ん?」


「君、人のこと言う割に手際が良いね。手慣れてる感じがする」


「うっ、そんな事は無いと思うよ」

・・・・確かにこの手の作業は得意かもしれない・・・。


「それにちゃんと放課後残ってくれたし・・・」


「それは・・・・拒否権無いって言われたし」

眼鏡が光ってたもん、なんか威圧感あったし・・・。


「うふふ、委員決めで印南君の言ってたことわかる気がする」


「・・・・どうしてここで印南が出て来るんだ?」

「・・・・内緒」

むっ、印南の奴。オタクのくせに委員長にフラグ立てしやがったな!?


ぱっちん、ぱさ、ぱっちん、ぱさ・・・。

二人の息が合って、冊子作りはラストスパートをかけた。リズムよく奏でられる音、積み重ねられていく量が増えていくにつれ、この時間がかけがえのない物の様な気がしてくる。

一足先に作業を終えた俺は、委員長の分の山にも手を伸ばした。

そこで真剣な表情の仁尾さんの横顔に目がいく。そこで印南の言ってたことが頭をよぎる。

『仁尾さんなんかおまえの好みのタイプにストライクじゃないの~?』

 どうだろう?確かに真面目な人が好ましいと思うが、あんなやつに好きな女の子のタイプを当てられたと考えるのも癪だ。それに以前好きになった子のタイプとは違う。やつのことだ、当てずっぽうに言ったに違いない。

首を振り、思考から離れると再び手を伸ばす、が既に終わっていた。

ひじを突きこちらを見つめる仁尾さんと目が合う。


「・・・・なに考えてたの?」

君のことを好きかどうか、考えていたなんて言えねぇ~。


「・・・・別になんにも」


「そう・・・・ねえ、黒木君のこと柏崎君みたいに“誠”って呼んでも良いかな?」



仁尾さんの言葉にイエスと告げながら思う。


(―――仁尾さんと仲良くなれただけでも今日来た甲斐があったよな?)




《すずかぜらいた》です。

思うように進まない執筆、恐るべし恋愛物!!

主人公の黒木君は恋愛ごとに向かない性格なんです。よく考えてみれば、恋愛物の主人公の男で女の子にあまり興味が無い人っていないんですよね・・・・。主人公の性格ミスったかな(汗)

そんなこんなですが、お付き合い下さればと思います。

では、ごゆるりと

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