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はじめまして、運命の人。  作者: 意思疎通
はじめまして、運命の人。

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2/7

第1話 失敗の連続

 私の名前は月乃雪。今年から高校生になる。

 中学までの恋愛の失敗を活かし、高校では絶対に失敗しないようにと思ってたのに……。


「か、可愛い」


 目の前で慌てた様子の女の子が1人。

 身丈に会っていない制服を見るに、きっと私と同じ新入生なのだろう。

 どこへ向かえばいいのか分からない様子の彼女。道を説明しようかと話しかけるか悩みに悩むも、既に先生へと話しかけてしまっていた。

 せっかくの話しかけるチャンスを逃し、悔しい思いで拳を握りしめる。


「雪、話しかけたいなら今のうちに行けば?」


 隣を歩いていたウルフカットの少女、旗ノ沙月。

 沙月は私の幼なじみで、これまでの恋愛の失敗談を全て打ち明けてきた唯一の相手。


「そう、だよね。でも話しかけるのは……」


「あ、行っちゃうよ?」


 物理的に沙月に背中を押され、仕方なく彼女に近付くことにした。

 足を進める事に、心臓がバクバクうるさい。

 どうしよう、なんて話しかけよう。

 頭の中を思考がぐるぐる回り、あろう事か、1つの結論に至ってしまった。


 ——ぶつかってみよう。


「わっ……!」


 ……なんてことをしてしまったんだ!!

 自分でした行動ではあるけど、すぐに後悔してしまった。

 ぶつかりたかった訳じゃないのに。傷つけてしまっていたらどうしよう。


「あ、大丈夫? ごめんね、ぶつかっちゃったみたいで」


 ぶつかっちゃったみたいで??

 いやいや、私がわざとぶつかってしまったんです。

 ごめんなさい、ごめんなさい!

 こちらを見あげてくる少女に、心臓が激しく鼓動しているのをバレないよう、1歩引いた。


「え、あ……」


 え、もしかして本当にヤバい?

 まって、そんな、ごめんなさい!


「大丈夫? どこか、強くぶつけちゃった?」


 心配になり、彼女の顔を覗き込む。

 胸元を抑えながら、冷や汗が止まらない様子の彼女。

 嘘、でしょ?

 本当にやらかしちゃった。私、一目惚れした相手にこんなことを……。

 やっぱり、私は恋愛しちゃダメなんだ。


「だ、大丈夫ですよ! めっっちゃ、元気です!」


 これは……。

 無理してる、ね。

 明らかに大きな声量で応える彼女。無理をして、言葉を発しているに違いない。

 ごめんなさい。いつも、私は間違えちゃう。


「……大丈夫そうなら良かった。私は先に行くね」


 振り返り、入学式の行われる体育館へと向かおうとしたのだけど……。


「どうしたの?」


 服の裾を、彼女が引っ張っていたらしい。

 傷付けてしまったのに、どうして引き止めてくれるの?

 彼女の方へとまた体を向けると、あわあわと身振り手振りで焦っている様子が伝わってくる。


「あ、あの!」


 意を決した様子で、何かを口にしようとしている。


「お名前はなんて言うんですか?」


 名前……?

 傷付けられた相手に対して、そんなことを聞くなんて。

 とても優しい子なんだね。ますます、好きになってしまう。

 もう少しだけ関わっても、許されるよね?


「……私の名前は月乃雪。また何処かで会ったら、よろしくね」


 笑顔でそう応え、私はすぐさまその場を後にした。


「あれは良くないでしょ」


 沙月の元へと戻ると、第一声がこれだった。

 確かに、自分でも反省してる。凄く顔色が悪そうだったから。


「そうだよね、私も反省してる」


「でもまあ、良かったじゃん。名前聞いてくれたんでしょ?」


 聞こえてたの?と私が聞くと、沙月は笑いながらこちらを向いた。


「当たり前でしょ。あの場にいた子は皆見てたからね。会話も聞こえてたよー、普通に」


 なんという事だ。

 とても、恥ずかしい。

 耳を真っ赤にさせながら、ぽこぽこと沙月の肩を叩いた。


「忘れてね」


「さぁ、どうだろ」


 入学式が始まり、長く退屈な校長先生の話を聞いている。

 つまらないなと思い、隣に立っている沙月と手遊びをして遊んでいた。


「え、えぇー!!!???」


 突如響き渡る可愛い声。

 聞こえてきた方向に視線を向けると、先程の少女が立っていた。


「あ……ご、ごめんなさい」


 何か考え事でもしてたのかな。

 全方位にぺこぺこと頭を下げ、謝罪をしている姿はとても愛おしく、小動物を見ているようだ。


「可愛いな……」


 そういうと、隣に立っている沙月がはぁ、とため息をついた。


◇◇◇


 その後は何事もなく入学式が終わり、そそくさと教室に足を踏み入れた。

 沙月も同じクラスらしく、一緒に名簿を確認し、席に着く。

 私の席は1番前の2列目。前の席なのは解せないけど、目があまり良くないので良しとする。

 沙月の席が遠いことに悲しみを抱きながら、隣に座ってきた少女へと視線を向けた。

 挨拶でもしようかな、なんて呑気に思っていたのに。


「あれ、さっきの子だよね」


 目の前に座ったのは、先程の彼女だった。


「ゆ、雪さん!?」


 驚いた表情も可愛いな。


「良かった、また会えて。貴方の名前を聞いてなかったから」


 良し、素晴らしいぞ私! ちゃんと名前を聞けるなんて!


「あ、あぁ! そうですよね! 私ばっかり名前聞いちゃってた!」


 また慌ててる。

 身振り手振りで慌てた様子が分かりやすい彼女に、笑みがこぼれる。


「私の名前は、朝比奈美雨です! みう!」


 下の名前を繰り返したのは、きっとそう呼んで欲しいからなんだろうな。

 胸を張り、自信満々に応える美雨ちゃん。とても、愛おしい。


「美雨ちゃんね。改めて、よろしく」


 あわよくば手に触れたいという願望から、手を差し出してみた。

 すると、か細い指が重なり、掌が合わさる。

 なんだか良い匂いがする。


「……そんなに見つめないで? 照れちゃうから」


 美雨ちゃんの方へと視線を向けると、じーっと手の方を向いている。

 何故そんなに見つめるの?は、恥ずかしい。

 もっとハンドケアしておけば良かったかも。

 

「ご、ごめんなさい! 指が綺麗だなと思って……」


 えっ……?


「ありがとう。照れちゃうな」


 照れちゃう所ではない。

 心臓が痛い、ドキドキが止まらない。

 美雨ちゃんに微笑み、余裕のあるように見せるため髪を耳にかけた。

 大丈夫、私は照れていない。大丈夫、きっと社交辞令だ。


「雪さん、もしかして本気で照れてたり……?」


「えっ……!!?」


 しまった、きっと耳が赤くなってたんだ!

 手で覆い隠すと、熱が密かに伝わってくる。最悪だ、余裕のあるお姉さん的なものを装って行こうと思っていたのに。恥ずかしい、やらかした。

 もう、仕方ない。認めてしまおう。


「美雨ちゃんに褒められたから、照れるのも仕方ないでしょ……」


 あぁ、顔まで熱くなってきた。

 もう終わりだ、穴があったら入りたい。

 そっと美雨ちゃんの方へと視線を戻す。


「照れてる雪さんも素敵ですね。可愛い」


「なっ……」


 細い指が近付いてきて、顔にかかっていた髪を耳にかけてくれた。

 微笑んでいるその顔が、とても輝いて見えて……。

 

「ふふ、また赤くなりましたね!」


 自信満々に、光のような笑顔を向けてくる彼女。

 私はきっと、初めて本当の恋に落ちたのだ。


 ——この笑顔を、1番近くで見ていたい。

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