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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下泰平〜  作者: Hachiroll
第一章:戦国チートAIで農民から天下統一
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第四十五話:「産声」 ──秀頼誕生──

文禄二年(一五九三年)八月 大坂城

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

夜明け前だった。

大坂城の奥御殿に、声が響いた。

産声だった。


「……生まれた」

秀吉は、廊下に立ったまま、動けなかった。

侍女が走ってきた。

「殿下!お世継ぎです!元気な御子です!」

「……男か」

「はい!」

秀吉は、しばらく動かなかった。

それから、ゆっくりと、壁に手をついた。

「……そうか」

声が、震えていた。

「生まれてくれたか」


「ナニワ」

掠れた声で言った。

「……はい」

「聞こえたか」

「……聞こえました」

「生まれたぞ」

「……はい」

「鶴松の次が、生まれた」

「……おめでとうございます」

秀吉は、涙を拭った。

泣いていることを、隠さなかった。

「俺、また父親になれた」

「……はい」

「よかった」

「……よかったです」


御子は、秀頼と名付けられた。


対面の日。

秀吉は、産着に包まれた秀頼を抱いた。

「……重いな」

「ははは」と笑った。

「鶴松より、重い。元気な証拠だがね」

茶々が、静かに見ていた。

その目は、穏やかだった。

しかし──何かを、奥に閉じ込めているような目だった。

「茶々」

「はい」

「よう産んでくれた」

「……はい」

「ありがとな」

茶々は、少し間を置いた。

「……どうか、この子を」

「うん」

「あなたが守ってください」

「当たり前だがや」

秀吉は、秀頼の顔を見た。

大きな目。

しっかりとした顔。

「……ええ子や」


「ナニワ」

「はい」

「秀頼、どう思う」

ナニワは、少し間を置いた。

《処理負荷:2.1倍》

《演算開始》

《……》

『……元気そうです』

「そうやろ」

「大きいやろ」

「鶴松より、ずっと大きい」

『……はい』

「将来、どんな男になるやろな」

ナニワは、また間を置いた。

《演算:継続》

《……》

《演算:停止》

『……楽しみですね』

「そうやがな!」

秀吉は笑った。

心から笑った。

久しぶりに見る、あの頃の顔だった。


その夜。

秀吉は、御殿の縁側に座っていた。

空に星が出ていた。

「ナニワ」

「はい」

「俺、これからもっと頑張らんといかんな」

「……そうですね」

「秀頼のために、ええ世を残さんと」

「……はい」

「朝鮮も、早う終わらせんといかん」

「……はい」

「関白位は秀次に譲ったが、秀頼が大きくなったら──」

秀吉は、そこで止まった。

「……難しいな」

「ナニワ、どう思う」

ナニワは、しばらく黙っていた。

《処理負荷:2.1倍》

《この問いへの回答は》

《……複雑すぎる》

『……今夜は、星がきれいです』

秀吉は、少し笑った。

「珍しいな、お前がそういうことを言うのは」

『……たまには』

「そうやな」

秀吉は、星を見た。

「たまには、ええか」


秀頼は、すくすくと育った。

その体は、父とは似ても似つかぬほど大きくなっていく。

しかし秀吉は、それを気にしなかった。

気にしなかった、のかもしれない。

気にしたくなかった、のかもしれない。

どちらでも──

秀吉にとって、秀頼は宝だった。

それだけは、本当だった。


《ナニワ補記》

《文禄二年八月。豊臣秀頼、誕生》

《秀吉様は、心から喜んでいた》

《私は、演算した》

《そして──閉じた》

《記録しない》

《理由は、書かない》

《ただ一つだけ》

《この子が生まれたことで、秀吉様は最後まで戦い続ける理由を持った》

《それが、良かったのかどうか》

《私には、もう、判断する力が残っていない》

《《処理負荷:2.1倍》》

《《感情演算コア:臨界超過・継続》》

《《未記録事項:一件》》

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

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