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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下統一〜  作者: Hachiroll
第一章:戦国チートAIで農民から天下統一
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第二十二話:「知略の男──黒田官兵衛、参る」

「この城を、差し上げます」

男は、

静かに言った。

秀吉は、

思わず聞き返した。

「……え?」

「姫路城を、

 羽柴殿の本拠地として

 お使いください」

「いや、待て待て待て」

秀吉は手を振った。

「お前今、

 城を「差し上げます」言うたか?」

「はい」

「自分の城を?」

「はい」

「俺に?」

「はい」

秀吉はしばらく

この男を見つめた。

黒田官兵衛。

播磨の国人領主。

年は秀吉より五つ下。

細身で、

目だけが異様に鋭い。

「……お前、

 正気か?」

官兵衛が、

わずかに口角を上げた。

「至って正気です」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


天正五年(一五七七年)秋。

信長の命を受けた秀吉は、

播磨の攻略を任されていた。

西へ向かうための拠点が、

必要だった。

「播磨の豪族を、

 どう取り込むかだがね」

秀吉が悩んでいると、

「羽柴殿に

 お目通りを願いたいという者が」

と、家臣が告げた。

「誰や」

「黒田官兵衛と申す者です」

「聞いたことがないわ」

「姫路城主にございます」

「……姫路城?」

秀吉の目が光った。

姫路は、

播磨の要衝だ。

「通せ」


現れた官兵衛は、

拍子抜けするほど物静かだった。

礼儀正しく頭を下げ、

「羽柴殿のご活躍は、

 かねてより存じております」

と言った。

「ほう」

「信長様の天下統一は、

 もはや時間の問題かと」

「そう思うか」

「思います。

 ならば──」

官兵衛が、

まっすぐに秀吉を見た。

「私は、

 その天下の側に立ちたい」

「俺の側に?」

「はい。

 信長様の側ではなく、

 羽柴殿の側に」

秀吉は、

眉を上げた。

「……信長様ではなく、

 俺に仕えると?」

「はい」

「なんでだ?」

官兵衛が、

静かに答えた。

「信長様は天才です。

 でも天才は、

 天才でなければ理解できない」

「私は天才ではありません。

 ですが──」

一拍、置いた。

「羽柴殿ならば、

 私の言葉を聞いてくれると

 思いました」


秀吉は、

この男を面白いと思った。

「ナニワ」

小声で呼ぶ。

『……はい』

「こいつ、どう思う」

しばらく間があった。

《人物分析中》

『……危険です』

「危険?」

『頭が切れすぎます。

 私と──似た思考をしています』

「計算機と似た思考?」

『先を読む力、

 情報を整理する速度、

 感情より論理を優先する判断。

 私のデータ処理に近い』

「ほう……」

『ただ』

「ただ?」

『信頼できます』

「矛盾しとるがや」

『危険だけれど、信頼できる。

 そういう人間が、

 世の中にはいます』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「官兵衛」

秀吉は言った。

「一つ聞く」

「はい」

「お前は、

 城を俺に渡すことで

 何を得る?」

官兵衛は、

少しだけ笑った。

「羽柴殿は、

 正直な方ですね」

「当たり前だがね。

 騙し合いをしとる暇はないわ」

「私が得るのは──」

官兵衛が言った。

「天下の趨勢を、

 最前列で見る権利です」

「それだけか?」

「それだけです」

秀吉は、

この男の目を見た。

嘘はない。

でも──

全部を語ってもいない。

「……腹の底まで

 読めんがね、お前は」

「そうですか」

「でも──」

秀吉は、

ふっと笑った。

「気に入ったがね」

こうして、

黒田官兵衛は

羽柴秀吉の参謀となった。

姫路城は、

秀吉の播磨攻略の本拠地になった。

「官兵衛」

初日の夜、

秀吉が言った。

「ナニワっていう俺の参謀に、

 お前を紹介したいがね」

「……ナニワ?」

「俺の眼鏡や」

「眼鏡が、参謀?」

「まあ、見てみ」

秀吉が眼鏡を指で叩くと、

ナニワが言った。

『はじめまして、官兵衛殿。

 あなたのことは、

 よく知っています』

官兵衛の目が、

わずかに見開かれた。

「……この眼鏡、喋るのですか」

「喋るがね」

「……」

官兵衛は、

しばらく眼鏡を見つめた。

それから、

静かに言った。

「羽柴殿は──

 やはり、ただ者ではない」

『官兵衛殿も、

 ただ者ではありません』

「眼鏡にそう言われるのは、

 初めてです」

『光栄です』

秀吉は、

二人(?)のやり取りを見て、

「なんか、

 似た者同士だがね」

と、呟いた。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


翌朝。

官兵衛が地図を広げた。

「播磨攻略の順序ですが」

「聞かせてくれ」

「まず別所長治を──」

「待って」

秀吉が手を挙げた。

「その前に一つ聞いていいか」

「なんですか」

「お前、朝メシは食うたか?」

官兵衛が固まった。

「……は?」

「メシだ。

 空腹で軍議をしても

 頭が動かんがね」

「……私は食わなくても」

「食え」

「は」

「食ってから話せ。

 俺はそういうやつやがね」

官兵衛は、

しばらく呆気に取られた顔をしていた。

それから、

小さく笑った。

本当に小さく。

でも秀吉は、

それを見逃さなかった。

(こいつ、笑うじゃないか)

(いい顔するがね)


後に、

官兵衛はこう語ったとされる。

「羽柴殿に仕えると決めたのは、

 朝メシを食えと言われた朝だった」

「そういう人間に──

 俺は弱いのかもしれない」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


その夜、ナニワが言った。

『秀吉』

「なんだぁ」

『官兵衛殿は、

 本当に優秀です。

 でも──一つだけ、

 気をつけてください』

「なんで改まって」

『あの方は、

 あなたを超えることを

 考えています』

秀吉は少し黙った。

「……わかっとるわ」

「でもそれは、

 悪いことじゃないがね」

「俺を超えようとする奴が

 隣にいてくれるなら──

 俺も頑張れるがね」

ナニワは、

少し黙った。

『……あなたは、不思議な人ですね』

「なんで」

『普通、そういう人間を

 恐れます』

「恐れてどうするんだがね。

 使えばええ」

秀吉は、

あっけらかんと言った。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天正五年(一五七七年)秋。

黒田官兵衛、参る。

この出会いが──

羽柴秀吉の天下への道を、

大きく加速させることになる。

でも今夜は、

ただ、

二人の男が酒を飲んでいた。

「官兵衛、飲めるか?」

「……少しは」

「少しでええがね。

 一緒に飲もう」

「……御意に」

姫路の夜は、

静かで、

長かった。

【次回、第二十三話】

天正七年(一五七九年)。

官兵衛が、

囚われた。

有岡城。

荒木村重の裏切り。

そして──竹中半兵衛の、

最期の戦い。

第二十三話「半兵衛よ、逝くな──有岡城の闇と、友の死」

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