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【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下統一〜  作者: Hachiroll
第一章:戦国チートAIで農民から天下統一
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第十五話:「弟の目──小一郎、はじめての戦場」

帰ってきた弟の目が、違った。


天正二年(一五七四年)九月。

長浜城の門が、夕暮れの中で開いた。

先頭に立っていたのは、小一郎だった。

泥と煤で汚れた鎧。

無傷の体。

だが。

(目が……違う)

秀吉は、すぐに気づいた。

いつもの無表情の中に、何か重いものが沈んでいた。

石でも飲み込んだような、そんな目だった。


「……おかえり」

「ただいま」

「怪我は?」

「ない」

「飯は?」

「いらん」

「食わんといかんがね」

「……いらんと言うとる」

秀吉は、それ以上聞かなかった。

夜。

縁側に並んで座った。

琵琶湖が、月明かりを映していた。

しばらく、二人とも黙っていた。

先に口を開いたのは、小一郎だった。

「……兄貴」

「なんだ」

「戦って……こういうものか」

秀吉は、答えなかった。

「信長様が、命令した」

「……うん」

「降伏した者も、逃げようとした者も……女も、子供も」

小一郎は、言葉を切った。

「……全員、焼いた」

ナニワが、静かに言った。

《推定死者数:二万人以上》

秀吉は、眼鏡に手を当てた。

「ナニワ、今は黙っとってくれ」

『……はい』

「俺は……止められんかった」

小一郎の声が、かすかに震えた。

「命令だから。信長様の命令だから、従うしかなかった」

「……そだな」

「でも……」

小一郎は、自分の手を見た。

大きな、百姓の手だった。

「この手で……やった」

「……」

「兄貴が行けばよかったんか?」

秀吉は、少し考えた。

「……俺が行っても、同じだっただろな」

小一郎は、目を閉じた。

「そうか」

「そうや」

「じゃあ……誰が行っても、同じだったんか」

「……うん」

「それが……一番、嫌だ」

二人、また黙った。

遠くで、カエルが鳴いていた。

秀吉は、空を見上げた。

(比叡山の時も、思った)

(勝つことと、正しいことは、同じじゃない)

(でも俺は、信長様に従い続けている)

(いつか……俺が上に立てば、変えられるか)

(変えられるか、本当に)

「ナニワ」

小声で呟いた。

『……はい』

「天下を取った人間は……こういう夜を、何度経験するもんか?」

長い沈黙。

『……記録されている限り、数えきれないほどです』

「そっか」

「やっぱり、そうだわな」

小一郎が、ぽつりと言った。

「兄貴」

「なんや」

「天下、早く取ってくれ」

秀吉は、驚いて弟を見た。

小一郎は、まだ手を見たまま言った。

「こういう夜が……これ以上増えんように」

「……小一郎」

「俺は、兄貴を手伝う。だから……早く取ってくれ」

秀吉は、しばらく黙った。

弟の横顔を見た。

中村で一緒に田んぼに入っていた、あの弟が。

今、こんな目をして、こんな言葉を言っている。

(お前が……そこまで言うんだな)

「わかった」

「……約束する」

小一郎は、何も言わなかった。

ただ、少しだけ体の力が抜けた気がした。

その夜遅く。

秀吉は一人、部屋でナニワに話しかけた。

「ナニワ。小一郎は……大丈夫だと思うか?」

『……体は大丈夫です』

「体の話やない」

眼鏡の光が、ゆっくりと揺れた。

『心の傷は……時間がかかります。でも』

「でも?」

『弟さんは、今夜、大事なことを覚えました』

「なにを?」

『「早く終わらせたい」という理由です』

『人が戦うとき、多くは「誰かを倒すため」に戦います。でも弟さんは……「これ以上増やさないため」に戦う理由を、今夜見つけた』

秀吉は、目を細めた。

「……小一郎が」

『はい』

「それは……俺より、立派だがね」

『……そうかもしれません』

秀吉は、苦笑した。

(弟に追い越されとるがね)

(でも……ええことだわ)

翌朝。

小一郎は、いつもの顔で起きてきた。

無表情で、口数が少なくて。

「飯」

「食うんか、今日は」

「腹が減った」

「昨日はいらんゆうとっただろ」

「昨日は昨日だわ」

秀吉は、笑いそうになった。

「……よかった」

「何が」

「お前が、お前だで」

小一郎は、少しだけ目を細めた。

「……気持ち悪いこと言うな」

「ひどいなぁ」

その日から、小一郎は変わった。

目に、何か宿った。

それは悲しみではなかった。

怒りでもなかった。

静かな、決意のようなものだった。

秀吉は、その目を見るたびに思った。

(こいつと一緒なら、俺は天下を取れる)

(こいつと一緒じゃないと、天下を取っても意味がない)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天正二年(一五七四年)九月。

長島一向一揆、壊滅。

羽柴秀長、初めて独立した軍を率いて戦場に立つ。

そして弟は、兄のために戦う「理由」を見つけた。

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