表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新約】『俺のメガネ、喋るんですけど!?』 〜AIチートで天下統一〜  作者: Hachiroll
第一章:戦国チートAIで農民から天下統一
14/51

第十三話:「今浜を、長浜と呼ぼう──禿鼠、城主になる」

天正元年(一五七三年)秋。

「北近江三郡、くれてやる」

信長は、そう言った。

藤吉郎は、一瞬言葉を失った。

「……さんごおり?」

「三郡だ。今浜を拠点に、好きにせい」

「……城主、ということですか」

「ほかに何がある」

藤吉郎は、深々と頭を下げた。

(俺が……城主)

(中村の百姓が……城主)

頭の中で、母の顔が浮かんだ。

今浜の地を初めて踏んだとき、藤吉郎は琵琶湖を見た。

広かった。

海のように、広かった。

「ナニワ。ここで城を作るんやがね」

『はい。湖岸に築けば水運が使えます。物資の輸送と商業の発展、両方に有利です』

「そういうことや。ここは城だけやなく、町も作る」

小一郎が隣に立った。

「……兄貴、気が早すぎやろ」

「早いくらいがちょうどええんやがね」

藤吉郎は湖に向かって、大きく息を吸った。

風が、まっすぐ吹いてきた。

まず、藤吉郎は名前を変えた。

木下藤吉郎から。

羽柴秀吉へ。

「羽柴……」

小一郎が首をかしげた。

「どこから来たんや、その名前」

「丹羽長秀殿の『羽』と、柴田勝家殿の『柴』をいただいた。あとは信長さまから『秀』の一字を」

「……わかった。それで、俺は?」

「お前は羽柴秀長や」

「……なんで俺まで変わるんや」

「家族やからに決まっとるがね」

小一郎は、しばらく黙った。

「……まあ、ええわ」

次に、地名を変えた。

「今浜を……長浜と呼ぼう」

ナニワが聞いた。

『長浜、ですか?』

「信長さまの『長』をいただく。この町は大将のおかげで生まれた町やからな」

小一郎が、静かに頷いた。

「兄貴らしい名前や」

「そうか?」

「決して忘れんという意味やろ。誰のおかげかを」

藤吉郎は、少し照れた。

「まあ……そういうことだがね」

長浜の建設が始まった。

ナニワが設計した「都市計画」を、藤吉郎が人の言葉に直して伝える。

『市場は南北の街道沿いに。職人街は東、商人街は西。水路は……』

「職人と商人の町を分けて、市場を真ん中に作る。水路はここや、ここに引く!」

『藤吉郎様、それを「インフラ整備」と言います』

「戦国時代に通じる言葉で言えやがね!」

『……道と水を整えると言います』

「最初からそう言え!」

作業員たちが、笑いながら働いた。

笑いが絶えない現場だった。

疲れても、また笑って、また動いた。

城が完成した夜。

秀吉は天守の上に立ち、琵琶湖を見渡した。

月が、水面に映っていた。

「ナニワ」

『はい』

「俺は百姓だったんだがね」

『はい』

「百姓が城主になって……長浜という町を作った」

『はい』

「これ、夢やないよな?」

眼鏡の光が、ほわりと揺れた。

『夢ではありません。あなたが、自分の力でここに立っています』

秀吉は、深く息を吸った。

琵琶湖の風が、髪を揺らした。

(母ちゃん、見えとるか)

(俺、城主になったで)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

天正元年(一五七三年)。

木下藤吉郎、羽柴秀吉となる。

今浜は長浜となり、城と町が生まれた。

百姓の子の物語は、まだ続く。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ