006、深層を知る者
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謁見の間。
春奈たちが退出しかけた、そのとき。
空気がわずかに冷えた。凍える寒さではない。澄み切った、山の朝のような冷気。
音もなく、空間の奥に白が立つ。
寒空白雪。
雪の気配をまといながら、しかし溶けるように静かにそこにいる。
その半歩後ろに、腕を組んだハウト。
ハウトは周囲を見回し、にやりと笑う。
ハウト「お、間に合ったか」
軽い。だが、その声で場の温度が少し戻る。
フェイが即座に片膝をつく。
フェイ「白雪様」
くれはは軽く目を伏せる。吹雪は、動かない。
連狼は玉座から視線を向ける。
連狼「来ておったか」
白雪はゆっくりと頷く。
白雪「風が騒いでおったので」
理由はそれだけ。春奈は思わず振り返る。
夏美も、わずかに白雪を見る。
白雪の視線が、夏美に触れる。
ほんの一瞬。
それだけで、“深層”を覗かれた感覚が走る。
だが白雪は何も言わない。
ハウトが春奈たちを見て口を開く。
ハウト「へえ。この子たちか」
値踏みではない。興味だ。
ハウト「レン嬢、あたしらも混ざっていい?」
連狼はわずかに口元を上げる。
連狼「もともとお主が蒔いた種であろう」
白雪が連狼を見る。
静かな目。
白雪「修復は教えたぞ」
一拍。
白雪「使うかどうかは、あなたの意思じゃ」
連狼は目を細める。
連狼「分かっておる」
そこに主従はない。
対等の深度。
春奈は、その空気に飲まれかける。
フォルタが小さく呟く。
フォルタ「環境変化。場のマナ密度上昇」
白雪の視線がフォルタに移る。
白雪「機械……」
否定も驚きもない。
ただ、観る。
白雪「面白いわね」
それだけで終わる。
だが、その“面白い”は研究対象ではない。
“可能性”を見る響き。
ハウトが吹雪に近づく。
ハウト「元気そうじゃん、縫界衛士」
吹雪「……別に」
ハウト「相変わらずだなあ」
くれはが横から言う。
くれは「白雪様。今日は?」
白雪は少しだけ視線を上げる。
白雪「見に来ただけじゃ」
春奈を見る。
白雪「“触れようとしている”子がいるから」
その言葉に、春奈の胸がわずかに震える。
連狼が静かに告げる。
連狼「春奈」
春奈が姿勢を正す。
連狼「修復を見るということは」
白雪が続ける。
白雪「壊れる可能性も見るということ」
言葉は柔らかい。だが逃げ場はない。
春奈は、息を吸う。
春奈「……それでも」
声は小さい。
しかし逃げない。
白雪の瞳が、ほんのわずかに細まる。
ハウトが小さく笑う。
ハウト「いいじゃん」
連狼は頷く。
連狼「ならば、見るがよい」
場が決まる。
吹雪は静かに目を閉じる。
この場に、“深層を知る者”が二人。
紅連狼。
寒空白雪。
そして。
まだ自覚の浅い者が一人。
春奈。
謁見の間は、静かに次の段階へと移る。
雪の気配だけが、ほんのわずかに残っていた。
白雪さん登場です。彼女は師としてあらゆる者を見守っています。
それは修復師か、国か。はたまたそれより深い物か。




