003、落ちている
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港町の潮風が、春奈たちの髪をわずかに揺らす。
船を降りた三人の前に、自警団員の男――エルクが立ちはだかった。
「君たち、入国の目的は?」
低く落ち着いた声。背筋がぴんと伸びる。
春奈は夏美の肩に手を置き、落ち着いた声で答えた。
「裂け目の修復の見学をしたいのです」
エルクは小さく頷くと、ケータイを取り出し誰かに連絡を入れた。
「少し待ってくれ」
春奈は夏美の服の乱れを整えながら、港町の雑踏を見やる。
人々の話す声、波の音、船のきしむ音が入り混じる。静かに待つ。
やがて、エルクの連絡を受けて現れたのは、白銀の髪をした青年――吹雪だった。
その瞳は、いつも通り静かに、しかし確かな鋭さを宿して春奈を捉える。
視線は一度春奈から夏美へ。
そして、微かに表情を変え、一言――
「落ちてるね」
春奈はその意味を読み取ろうと、ゆっくりと吹雪の目を見る。
吹雪も、じっとそれを受け止め、視線を交わす。言葉はない。
港町の喧騒が、まるで遠くへ吸い込まれたかのように静まり返る。
長い沈黙の後、春奈は小さく息を吐き、淡々と口を開く。
「なるほど」
吹雪はわずかに頷いた。
春奈は落ち着いた声で改めて言う。
「裂け目の修復の見学希望です」
吹雪は静かに立ち、指先で歩みを促す。
「……おいで」
港町の風に混じる塩の匂いの中、春奈は夏美の肩に手を添え、静かに吹雪の後を追った。
吹雪は見抜いている。夏美が「落ちて」植物状態になっていることを。
視線を交わし、互いの真意を窺う。そして春奈は納得し、吹雪は春奈の決意を見抜く。
言葉少なだが情報の交換量は莫大だっただろう。




