表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラスティア群像劇~第2章~  作者: niseimo38


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/18

10、恐怖の正体

AI作成

春奈は窓の外に目をやる。街はいつも通りの喧騒に包まれているが、心の奥は静かに揺れていた。

裂け目の余波は収まり、夏美にも目立った変化はない。

しかし、胸の内に芽生えた感情は、誰にも見せられない重みを帯びていた。


恐怖。


自分を失い、取り返しのつかないことになるかもしれないという恐怖。

その感覚は、裂け目そのものの危険よりも深く、静かに春奈の心を締めつける。


視線は自然と夏美へ向かう。

目は虚空を見つめているようで、でも確かに姉を思う何かがそこにある。

春奈はその微かな揺れを探るように見つめ、胸の奥で小さく息をつく。


ふと、部屋の扉が静かに開く音がした。

「春奈」

声の主はハウト。柔らかさの中に力強さを帯びた存在感。春奈は少しだけ肩を張り、立ち上がる。

ハウトは座ることもなく、静かに、しかし確かな重みで語り始める。


「春奈、お前が恐れるのは当然だ。私も白雪様に仕えると決めた日から、常に恐怖と向き合ってきた」


その言葉は遠い過去の自分自身への告白のようでもあり、春奈への共感でもあった。


「白雪様に導かれ、共に立つことを誓った日、私は誓いを忘れ、白雪様が傷つく結果を生んだこともある。その痛みを背負い、私はここに立っている」


春奈の胸はざわついた。

彼女の恐怖と、ハウトの語る経験が重なる。

「私は……怖い。もし、夏美が変わってしまったら、もし自分を失ったら……!」

声に出さなくとも、心の奥で叫んでいる自分を、春奈は否定できなかった。


ハウトはその思いを静かに受け止めるように頷く。


「恐怖の正体は、夏美ではない。お前自身が失われることへの恐怖だ。それを知ることこそ、強さへの第一歩だ」


春奈は深く息を吸い、ゆっくりと吐く。

その呼吸と共に、胸の奥でざわめいていたものが静まる。

恐怖の正体を知った瞬間、視線は再び夏美に戻る。


目はまだ虚空を見つめている。だが、指先の微かな動きが、姉を思う気持ちを示している。

春奈はその小さなサインを見つけ、唇の端にわずかに微笑を浮かべた。

「大丈夫……私が守る」

胸の内でそう呟くと、心の奥に確かな安心が広がった。


ハウトは満足そうに頷き、静かに部屋を後にする。

扉が閉じられる音が、かえって落ち着きをもたらす。


春奈は再び窓の外に目をやる。

街の喧騒は変わらないが、内面は静かに整い、そして確かな覚悟が芽生えていた。

恐怖を知り、受け入れたことで、春奈は自分自身と夏美を守る力を、わずかにだが確信する。


夏美の存在が、恐怖を越えた勇気の源となっていることを、春奈は静かに確かめるのだった。


ハウトは長年白雪に仕えていました。多くを学び、多く失敗した。その彼女が今度は春奈を導く。

春奈はまだ学び途中。恐怖と戦っている最中である。それゆえ、ハウトの話はより鮮明に映っただろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ