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ネクサス・ジャッジメント

ヴォイド・コロシアム、中央仲裁サーバー「ネクサス・ジャッジメント」。

無機質な白い空間に、巨大なホログラム球体が浮かぶ。

その表面に、無数のデータストリームが赤と青で交錯し、

二つの通報がほぼ同時刻に到達した瞬間――

球体の中心で、赤い警告灯が激しく点滅を始めた。


通報1:Iron Legionアイアン・レギオンより

内容:桜鉄工所Netクラス・シズクによる不正侵入・データ窃取

証拠:侵入ログ、ハッシュ値(添付)

要求:制裁措置(不利環境投げ銭許可、ランク凍結検討)通報2:桜鉄工所より

内容:Iron Legionアイアン・レギオンによるバックドア設置・不正監視

証拠:改変ウイルスパケットのハッシュ、逆流ログ(添付)

要求:Iron Legionアイアン・レギオンへの制裁措置、投げ銭制限

仲裁AI「ネクサス」は、0.3秒で両者のログを解析。

相互に矛盾する証拠が、完璧に衝突した。

ログのタイムスタンプはほぼ同一。

侵入経路は双方が「甘い穴」を利用した形跡。

ウイルスと逆流データのハッシュ値は、互いに相手を指し示す鏡像のように一致。

ネクサスは判断を下す。

声は機械的で、しかしどこか楽しげに響く。


「通報内容:相互不正行為確認。

証拠の信憑性:双方87.4%以上。

衝突率:99.8%。

これは、ヴォイド・コロシアムの歴史において、稀有な『鏡像ハッキング事件』に該当」

観客向けの公式アナウンスが、コロシアム全域に流れる。


「緊急告知:

Chrome Rank所属・桜鉄工所 vs Neon Rank所属・Iron Legionアイアン・レギオン

両チームによる不正行為の相互通報が発生。

仲裁AIは『中立判定』を下しました。

これにより、通常試合を中止し、特別ルールによる『決着試合』を即時設定します」

画面に、特別ルールの詳細が投影される。

特別ルール:Mirror Voidミラー・ヴォイド

試合形式:1vs1(サクラ vs Vera Ironヴェラ・アイアン

環境:ランダム投げ銭禁止。代わりに「鏡像フィールド」固定

→ 両者の行動がリアルタイムで「鏡像反転」され、相手の動きを予測・逆利用可能

追加ルール:Netクラス介入完全禁止(シズク、Forgeフォージ含む)

→ ハッキング試行は即失格

勝利条件:相手のエコー・ロス率を100%に到達させる、または降伏

投げ銭特典:観客は「どちらの側に味方するか」をリアルタイム投票

→ 投票率が高い側に、環境が有利に傾く(例:桜側優勢なら桜吹雪強化、鉄側優勢なら溶融鉄雨)

賞金:通常の3倍。敗北チームはランク1段階降格+資産凍結の可能性


アナウンスの最後で、ネクサスが付け加える。

「これは、ただの試合ではありません。

『鏡』の中で、どちらの絆が本物か――

ヴォイド・コロシアムが、判定します」

――ジャンク・クレーターの夜空に、巨大なホログラムが浮かぶ。

桜の花びらとクロームの鷲が、互いに睨み合うように交錯し、

観客の投げ銭が、すでに雪崩のように流れ始めていた。

桜鉄工所、工房内。

シズクはスクリーンを凝視し、息を飲む。

「……やった。

でも、これ……予想外にデカいことになった」

クゥちゃんが膝の上で「にゃーん!」と鳴き、

シズクは慌てて寝室へ駆け込む。

「レン姉! サクラ! 起きて!

大事な話があるの!

あたし……Vera Ironヴェラ・アイアンを、直接引きずり出した!」

工房の桜ロゴが、激しく赤く脈打つ。

散っても咲く絆が、今、最大の試練を迎えようとしていた。



一方、Iron Legionアイアン・レギオン本拠地「フォージ・コア」。

ヴェラ・アイアン《ヴェラ・アイアン》は、ハイバックチェアに深く腰を沈め、

ホログラムに映るMirror Voidのルール詳細を、冷たい瞳で読み込む。

Forgeフォージが静かに報告する。

「Iron Queenアイアン・クイーン

仲裁AIは中立判定。

Net介入禁止……私たちのバックチャネルも封じられます」

ヴェラの唇が、ゆっくり弧を描く。

それは怒りではなく、むしろ楽しげな、獰猛な笑み。

「ふふ……面白いじゃない」

彼女は立ち上がり、銀灰色のコートを翻す。

「鏡像フィールド。行動が反転されるなら、

私の溶融鉄攻撃は、彼女の紅桜ブレードを鏡で跳ね返すことになる。

予測のゲーム……Neon Rankの私が、Chrome Rankの少女に負けるはずがないわ」

Forgeフォージが義眼を点滅させる。

「観客投票が鍵です。

Iron Legionアイアン・レギオンの支持率は現在68%。

投げ銭が鉄側に傾けば、溶融鉄雨が強化され……」

ヴェラは指先でホログラムを撫で、

サクラの戦闘映像を拡大する。

黒コート風スーツで桜吹雪を舞わせる姿を、じっと見つめて。

「…可愛い子ね、サクラ。

鏡の中で、あなたの『散っても咲く』がどれだけ脆いか、

この手で確かめてあげる」

彼女はForgeフォージに視線を移す。

「準備を。

私の義体を、鏡像対応でフルチューニング。

そして……観客に、鉄の女王の支配を見せつけるわ」

Forgeフォージが一礼する。

「了解しました。

Iron Queenアイアン・クイーンの狩りが、始まります」

クローム鷲のロゴが赤く脈打ち、

フォージ・コア全体が、静かな戦意に震え始めた。




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