虚空の咆哮
主題歌
桜の残響
NectarVow
作詞 泉水遊馬 作曲suno
【https://drive.google.com/file/d/19rRY3gaudXc9RuAylTwrdxDRmyWPCmmf/view?usp=drivesdk】
2079年、下層最深部のヴォイド・コロシアム。
直径300メートルの円形闘技場は、今宵も血と投げ銭の狂宴に染まっている。
天井から吊るされた無数のホログラムスクリーンが、観客の顔を歪に映し出す。アーク・ヘヴンからの貴族たちは、優雅にワインを傾けながら「痛覚シェア」のスライダーを弄ぶ。下層の群衆は、喉を枯らして叫び、デジタルコインを投げ捨てる。
「次なる挑戦者、桜鉄工所、サクラァァァ!!」
アナウンスが轟くや否や、黒い煙と赤い桜吹雪がリング中央で爆ぜた。
現れたのは、黒髪ショートの少女。
赤と黒のオッドアイが、暗闇の中で妖しく光る。
普段ならフリルとリボンの可愛らしいサイバーファッションに身を包む彼女だが、今は違う。
黒のロングコート風スーツが、流線型の義体を覆い、肩から袖にかけて赤い回路が脈打つ。
右手に握るのは、刃渡り1メートルを超える紅桜ブレード――刀身に無数の桜の刻印が浮かび、触れるだけで金属が花弁のように散る。
対峙するのは、アイアン・レギオンの重装戦士。
全身クロームの重装甲、両腕に仕込まれたガトリングとプラズマクロー。
ヘルメットのバイザーには、赤い回路が滴るように走る。
「人間性の残骸か……今宵で完全に消し去ってやる」
低く機械的な声が響く。
観客の投げ銭が一気に跳ね上がり、痛覚シェア率が急上昇する。
80%――90%――ついに100%。
痛みは、戦う者も見る者も等しく共有される。
サクラは静かに息を吐き、紅桜ブレードを構えた。
「散っても……また咲く」
その言葉を合図に、戦場が動き出す。
アイアン・レギオンの戦士がまず動いた。
両腕のガトリングが回転を始め、火線がサクラを狙う。
金属の雨が降り注ぐ中、彼女の体はすでに宙を舞っていた。
桜吹雪が軌跡を残し、黒いコートが翻る。
ブレードが弧を描き、弾丸の雨を斬り裂く――いや、斬り裂くというより、弾丸一つ一つが触れた瞬間に赤い花弁となって散華する。
「――ッ!?」
驚愕の声が敵から漏れる。
次の瞬間、サクラの姿が残像を残して消え、背後に現れる。
紅桜ブレードが、敵の肩装甲を斜めに薙ぐ。
ギィィィン!
火花と金属片が飛び散り、痛覚シェアが即座に観客全員を襲う。
悲鳴と歓声が混じり合い、コロシアム全体が震える。
「まだ……まだだ!」
敵は咆哮し、プラズマクローを振り上げる。
だがサクラの動きは止まらない。
コートの裾が翻り、桜の花弁が嵐のように舞う。
一閃、二閃、三閃
ブレードが敵の装甲を削り取り、内部の回路を露出させる。
血ではなく、冷却液が噴き出す。
それでも痛みは本物だ。
シェア率100%の今、敵が感じる痛みは、サクラ自身も、観客全員も等しく味わう。
「…………痛い?」
サクラの声は、静かだった。
オッドアイが、赤く輝く。
「私も……ずっと、痛いよ」
ブレードが、最後の軌跡を描く。
紅桜の嵐が、敵の胸部を貫いた。
爆ぜる火花。
散る無数の桜。
クロームの巨体が、ゆっくりと膝をつく。
コロシアムが、一瞬静まり返る。
そして爆発的な歓声と投げ銭の嵐。
「勝者、桜鉄工所、サクラァァァ!!」
リングに降り注ぐデジタルコインの雨の中、サクラはブレードを収め、静かに息をついた。
黒いコートの裾が、血と冷却液に濡れている。
人工皮膚の頰に、一筋の赤い線が走る。
傷ではない。
ただ、彼女の目から零れた、桜色の涙。
「レン……シズク……待ってて」
小さな呟きは、歓声にかき消される。
散っても、また咲く。
その言葉だけが、虚空にエコーし続けた。
ガールズバンド
NectarVowの物語
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