R1:AIオンライン
リン視点です。
ついに、この日が来た。
私が事前情報を何度も読み返し、静かに待ち続けていたVRMMO――
『Alvaria Incognita Online』。
異世界『アルヴァリア』を舞台にした、フルダイブ型VRMMO。
世界の大半をAIが創造したという、前代未聞のゲームだ。
βテストなし。
先行プレイも、攻略情報も、存在しない。
「何が起こるかわからない」
その一点だけで、人をここまで惹きつけるゲームも珍しい。
そして、このゲームには二つのプレイモードが用意されている。
一つは「サブスク型」。
死亡しても教会で復活できる、一般的なVRMMOに近い形式。ただし、種族やスキルには制限がある。
もう一つは「買い切り型」。
死んだら終わり。一度きりの人生。その代わり、制限はほぼない。
……私は、サブスク型を選んだ。
理由は明確だ。
まずは、この世界のルールを知る必要がある。
リスクを取るのは、その後でも遅くない。
サービス開始時刻。
VR機器を装着し、ログインボタンを押す。
視界が、白に塗り潰された。
目を開けると、何もない白一色の空間。
その中央に、淡い光をまとった小さな精霊が浮かんでいた。
「私はサポート精霊です。キャラクター作成をお手伝いします」
機械的だけれど、冷たさはない声。
「まずは、名前とアバターを設定してください」
「名前は、リンで」
アバターは、ほぼ現実の私そのまま。
大きく変える必要は感じなかったので、そのまま確定する。
「次に、種族を選択してください」
私は迷わず人族を選んだ。
基準になる存在。だからこそ、比較もしやすい。
「次に、サブスク型のスキル制限について説明します」
精霊の言葉と同時に、ウィンドウが表示された。
――装備できるスキルは、合計で十五個まで。
――装備中のスキルのみが、戦闘・行動時に使用可能。
――ただし、能力強化系のパッシブスキルは控えに入れていても効果が反映される。
なるほど。
スキルは「持っている」だけでは意味がない。
どう装備し、どう入れ替えるか――それ自体が戦略になる。
「それでは、初期スキルを五つ選択してください」
一覧が表示される。
私は、あらかじめ考えていた構成を確認しながら、一つずつ選んでいった。
⸻
リンが選択した初期スキル
① 魔力操作(初級)
魔力の流れを安定させ、魔法の失敗率を下げる。
② 火魔法(初級)
小さな火球を放つ、基本的な攻撃魔法。
③ 魔力感知
周囲の魔力反応を感じ取り、敵や異常を察知できる。
④ 詠唱短縮(初級)
簡単な魔法の詠唱時間をわずかに短縮する。
⑤ 鑑定(初級)
対象の名前や基本情報を確認できる。
⸻
攻撃、補助、探索、情報。
どれか一つに偏らない、慎重な構成。
「次に、初期装備と初期武器を選択してください」
装備一覧が展開される。
私は、フード付きの黒いローブを選んだ。
軽装で動きやすく、魔法向けの補正が付いた、実用本位の装備。
武器は――
木製の魔導杖。
先端に紫色の魔力結晶が埋め込まれた、極めて基本的な一本。
派手ではない。でも、最初の相棒としては十分だ。
「設定を確認します」
「人族・リン。初期スキル五種、初期装備および初期武器を確認。よろしいですか?」
「はい」
精霊が、静かに手をかざす。
「あなた様に、女神アイシア様の加護を」
温かな光が、身体を包み込む。
言語理解。環境適応。世界干渉の許可。
この世界で“生きる”ための最低限の条件。
「それでは――未知なる世界『アルヴァリア』を、お楽しみください」
視界が、再び白に染まった。
次に目を開けたとき、私はもう――
杖を手に、ローブを纏った一人の魔法使いとして、この世界に立っているはずだ。
慎重に。確実に。
この世界を、理解しながら。
こうして、
私――リンの異世界生活が始まった。
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次話の投稿はだいぶ先になりますので楽しみにお待ち頂けたら幸いです。




