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多元宇宙の管理者  作者: 黒海苔
一章:魔王襲来

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S8:魔王イザベラ

 準備が整い、私たちは南の大陸へ転移することになった。

 ミレイユが魔法陣を展開する。複雑な幾何学模様が空間に浮かび上がり、淡い光を放つ。

「事前に魔王様には連絡を入れておきました」

 ミレイユが説明する。

「ですので、直接玉座の間に転移します」

「分かった」

「お姉様、手を」

 ミレイユが私の手を取った。

「エレンも」

「はい!」

 エレンが反対側の手を握る。

 三人で手を繋ぎ、魔法陣の中心に立つ。

「それでは、転移します」

 ミレイユが呪文を唱えた。

 光が私たちを包み込む。視界が真っ白になり、浮遊感が全身を襲う。

 次の瞬間――。


 足元に、確かな地面の感触。

 光が消え、目を開けると、そこは広い玉座の間だった。

 黒を基調とした荘厳な部屋。高い天井、立派な柱、そして奥には立派な玉座。

「お久しぶりです。真祖様」

 玉座から、凛とした女性の声が響いた。


 玉座には――。

 黒髪の女性が座っていた。

 長い黒髪は艶やかで、赤い瞳が私たちを見つめている。頭には黒い角が二本生えており、背中には大きな黒い悪魔の翼。そして、長い尾が優雅に揺れている。

 服装は黒と紫を基調としたドレス。胸元が大きく開いており、紫のベルトが腰を締めている。スカートは不揃いに切り込まれ、動きやすそうな作り。

 全体的に、「魔王」という名にふさわしい威厳と妖艶さを兼ね備えた姿だった。

 でも、その表情は――どこか寂しそうに見えた。


挿絵(By みてみん)


「久しぶりね。イザベラ。別に私のことはミレイユって呼んでも良いのよ?」

「……吸血鬼には食料援助などでお世話になってるので、敬意を込めて呼ばせてください。」

「まぁ、いいけど」

 赤い瞳が、私を見た。

「そしてあなたが世界の管理者様ね。事前に話は聞いているわ。」

「はい。サラと言います」

 私は頭を下げた。

「初めまして、イザベラさん」

「それで」

 イザベラが真剣な表情になった。

「世界の管理者が、わざわざ私のところに来たということは……何か用があるのでしょう?」

「はい。イザベラさんのことを、聞きたくて」

「私のこと?」

 イザベラが首を傾げた。


 私たちは、玉座の間の隅にある応接室に案内された。

 ソファに座り、魔族のメイドが淹れてくれたお茶を飲みながら、イザベラは語り始めた。

「私は……本当は、中央大陸の人々と交流したいの」

 イザベラが寂しそうに呟いた。

「魔族だって、人間と敵対したいわけじゃない。ただ、普通に暮らしたいだけ」

「でも、スキル『魔王』のせいで……」

「ええ」

 イザベラが頷いた。

「純粋な人族は、私を見ると無条件で嫌悪する。理由もなく。ただ、私がこのスキルを持っているというだけで」

 その声には、深い悲しみが滲んでいた。

「私は、魔王になりたくてなったわけじゃない。ただ、私は先代の魔王が亡くなった後、世界に次の魔王として選ばれ、スキル「魔王」が私に引き継がれた。」

 イザベラが拳を握りしめる。

「もちろん、魔族を守るために魔王として振る舞っている。でも……本当は、もっと自由に生きたかった」

「中央大陸の街を歩いてみたい。人間と話してみたい。色々な場所を旅してみたい」

「でも、それは叶わない夢」

 イザベラが自嘲的に笑った。

「だって、私は魔王だから」

 その言葉が、胸に刺さる。


「イザベラさん」

 私は口を開いた。

「もし、そのスキル『魔王』を、私が引き継いだら?」

「え?」

 イザベラの目が見開かれた。

「サラさん!」

 エレンが慌てて声を上げた。

「スキル『魔王』は、純粋な人族から嫌われるスキルです! お姉様が引き継いだら、神聖国に住めなくなるかもしれません!」

「大丈夫」

 私は落ち着いて答えた。

「私には、スキル『艶美』がある」

「艶美……?」

 イザベラが首を傾げる。

「常時、軽度の魅了状態異常を周囲にばら撒くスキルです」

 私は説明する。

「つまり、人々から好意的に見られやすくなる」

「それと魔王が……何の関係が?」

「もし、スキル『魔王』の嫌悪効果と、スキル『艶美』の魅了効果が打ち消し合ったら?」

 私は続けた。

「マイナスとプラスで、ゼロになるかもしれない」

「それは……」

 イザベラが驚いたような顔をした。

「でも、もし失敗したら……」

「その時は、またイザベラさんに返せばいい」

 私は微笑んだ。

「物は試しだよ」

「サラさん……」

 イザベラの目が、潤んでいた。

「本当に、いいの? 私のために、そこまで……」

「うん。だって、イザベラさんは悪くないもん」

 私ははっきりと言った。

「だって、望んでもないのに勝手に魔王として人生を縛られるなんておかしい」

「だから、助けたい」

「サラさん……」

 イザベラが涙を流した。

「ありがとう……本当に、ありがとう」


「それでは、スキル『魔王』を引き継ぎます」

 イザベラが立ち上がった。

「どうすればいいの?」

「手を、握ってください」

 イザベラが手を差し出した。

 私はその手を取る。

「そして、私が『スキルを譲る』と強く念じれば、引き継がれます」

「分かった」

 イザベラが目を閉じた。

 数秒後――。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【システムメッセージ】


 イザベラからスキル『魔王』を継承しました


【スキル『魔王』】

 効果:スキル『勇者』に対して特効

  純粋な人族から嫌悪される


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

「……これで、終わり?」

「ええ」

 イザベラが目を開けた。

「もう、私は魔王じゃない」

 その声は、信じられないという感じだった。

「何十年も……いえ、生まれた時からずっと背負ってきた重荷が、消えた」

 イザベラが自分の手を見つめる。

「本当に……自由になれたの?」


「さて、実験しないとね」

 私は立ち上がった。

「神聖国に戻って、街を歩いてみよう」

「ちょっと待ってください。このままの服装だと目立ちます。だから目立たないような服装をサキさんから貰ってから街に出ましょう」

 エレンが言う。

 私たちは再び転移魔法で、神聖国に戻った。


 サキのいる所へ転移する。

「サキ。何か目立たないような服装ない?」

「びっくりしました。急に後ろから現れないでください」

「ごめん、ごめん」

「それでなぜ、目立たないような服装がいるんですか?」

 私は事情を説明した。

「なるほど。スキル『艶美』の効果で、スキル『魔王』のデメリットを打ち消すことができるのではないかということですね」

「そうそう」

「確かに、これは試してみる価値がありますね。ちょっと待っててください」

 数分後

「この服装はどうでしょうか?」

「それは?」

「これは聖職者達が街で奉仕活動をする時に着る物です。フードも着いているので、顔も隠せます」

「ちょっと着てみるね」


挿絵(By みてみん)


「どう?似合ってる?」

「はい。いい感じです」

「それじゃあ街に行こっか」


 そして、街の中心部へ。

 人々が行き交う広場。

 私は、深呼吸してから歩き出した。

 周囲の人々が、私を見る。

 でも――。

「お、聖職者さんか。いつもこの街を綺麗にしてくれてありがとうな。」

「本当にありがたいわね。」

 人々の反応は、普通だった。

 嫌悪の目ではなく、むしろ好意的な視線。

「成功……した?」

 私は呟いた。

「どうやら、本当に打ち消し合ったようですね」

 エレンが安堵したように微笑む。

「すごいです!」

「やった!」

 私は思わず飛び跳ねた。

 これで、イザベラを救える!


 神聖国の街を一通り歩いた後、私たちは再び南の大陸に戻った。

「イザベラさん! 成功したよ!」

 私は興奮気味に報告した。

「本当に!?」

 イザベラの顔が輝いた。

「うん。誰も私を嫌悪しなかった。普通に接してくれた」

「それなら……私も、中央大陸に行ける?」

「もちろん!」

 私は頷いた。

「もう魔王じゃないんだから、自由に行けるよ」

「サラさん……」

 イザベラが私に近づいてきた。

 そして――抱きしめられた。

「ありがとう。本当に、本当にありがとう」

 イザベラの声が震えている。

「先代魔王が死んでから、何百年と私は苦しかった。助けてくれて本当にありがとう。」

「あなたは、私の恩人よ」

 イザベラが私から離れ、膝をついた。

「だから、お願い。私を、あなたの配下にしてください」

「え?」

「あなたに仕えたい。あなたの力になりたい」

 イザベラが真剣な目で私を見た。

「私にできることは限られているけれど……それでも、恩返しがしたいの」

「イザベラさん……」

 私は少し考えた。

 そして、手を差し出した。

「配下じゃなくて、仲間でいいよ」

「仲間……?」

「うん。上下関係じゃなくて、対等な仲間として」

 私は微笑んだ。

「一緒に、この世界を良くしていこう」

 イザベラの目から、また涙が溢れた。

「……ありがとう」

 イザベラが私の手を取った。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【システムメッセージ】


 イザベラがあなたの配下になりました


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 こうしてイザベラがサラの配下になった。

「イザベラさん……」

「よろしくね、サラ」

 イザベラが微笑んだ。

 その笑顔は、先ほどまでの寂しげな表情とは全く違う、心からの笑顔だった。

 こうして、私は魔王イザベラを救うことができた。

 でも、まだやるべきことがある。

 勇者と聖女も、同じように苦しんでいるはずだ。

「次は、勇者だね」

 私は決意を新たにした。

面白いと感じましたら、ブクマ、評価、コメント等をよろしくお願いします。

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