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リリンの食事

 辺りを見渡しても、ずっと森が続いている。

 人が住んでいる気配は一切なかった。


「......どこ? ここ?」


 リリンが女の子に聞く。


「......わかんない」


 女の子は今にも泣きだしそうな声で返答する。


「行きは特に迷わなかったのかい?」


 女の子を刺激しないように、優しく聞く。


「うん......。村にはすぐ行けたんだけど......」


「そうか......」


 空は既に夕焼けで赤くなり、視界も悪くなっていた。


「なぁ、今日は一旦諦めて、ここで野宿しないか?」


「そうだね。夜間に活発になる魔物もいるだろうし、動くのは得策じゃない」


 リリンは俺の意見に納得する。


「それじゃあ、私が見張りをします! 天使は一日くらいなら寝なくても余裕なので!」


 エルンが自信満々に言う。


「一応、私も起きておくよ。エルンちゃんがうっかり暴走したら、私たちも殺されかねないから、ライトくんを起こす役として」


「リリンは寝なくて平気なのか?」


「錬金術師を舐めないでよ。一日や二日実験するのなんて普通だから」


「とにかく、ライトくんはゆっくり休んでよ。君はこの中で圧倒的に強いエルンちゃんを操れる、重要な戦闘要員なんだ。君の調子が、私たちの命に関わることになるんだから」


「じゃ、じゃあお言葉に甘えて......」


 俺はリリンの言う通り、夜の間はゆっくり休ませてもらうことにした。


「じゃ、役割も決まったことだし、夕食にしよっか」


「ご飯ですか!? やった!」


 エルンが夕食と聞き、喜んだ。


「それじゃあライトくん。リュックサックを下ろして?」


「ああ」


 俺はリリンから預かっていたリュックサックを地面に置いた。

 リリンはおんぶしていた女の子を下ろし、リュックサックをガサゴソと漁り始める。

 俺たちは地面に座り、リリンの食事の準備を待つことにした。


「私は食事のために毎日を頑張ってるといっても過言ではないくらい......」


「はいどうぞ」


 リリンはエルンに何かを手渡した。

 それを見たエルンは、急にテンションが下がった。


「......なんですか? これ」


「私が考えた長期保存ができる栄養食。はい、ライトくんにも」


 俺はリリンから食事を受け取った。


「......本当になんですか? これ」


 渡されたのは、見た目は黒く、やわらかく、ほのかに臭う塊だった。


「はい。君にもどうぞ」


 女の子にも手渡すが、明らかにドン引きしている。


「ま、まぁ味が良ければ食べれないこともないですし......。いただきまーす......」


 エルンが黒い塊を口に含む。

 口をモゴモゴ動かし、そして盛大に噴き出した。


「まっずー!!!」


 エルンが大声で叫ぶ。


「リリンさん!? これ魔物用の毒餌とかじゃないですよね!?」


「そ、そんなことないよ! 体に配慮した、健康的な食事だよ!」


「......ちなみに、材料はなんですか?」


「えーっと......。木の実、野菜、魚、肉......。あとは......」


「......とりあえず、食べるべきではない物ということはわかりました」


「えー。手軽に栄養補給できるいい食事だと思うんだけどなー」


 リリンは躊躇うことなく、口に入れ、咀嚼して飲み込んだ。


「錬金術師ってもしかして自分を実験台として使ってるせいで、味覚とかおかしくなってるんですかね......?」


「ああ、多分そうだと思う......」


 俺とエルンがコソコソと話す。


「ライトさん......。この料理どうにかできませんかね......?」


「うーん......。この辺に何があるか、それと、リリンが他に何を持ってるかによるなぁ」


「ちょっと他に何か無いか聞いてみてくださいよ」


「よし......」


 不味い食事を食べたくない俺は、どうにかすることにした。

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