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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

りんご狩り ―果樹園の騎士と赤き女王の影―

作者: 千堂 勝也

※軽い流血・果実破裂描写があります。苦手な方はご注意ください。


りんご狩り


これは大変危険な任務であり栄誉ある騎士の仕事でもある。罠を仕掛けておき、襲いかかるリンゴどもに対して隊列を組んでいなし、罠にはまり戸惑っているところに反撃を加えるのだ。


夜明け前、若き従者アルノは古びたリンゴ槍を握り、甘酸っぱい殺気に満ちた果樹園の気配をうかがった。月明りに揺れる枝々は、まるで熟した兵士たちの列。彼の隣で銀鎧のグレータ騎士団長が低く囁く。

「よいか、リンゴは落ちる瞬間に牙をむく。決して油断するな」


やがて合図の角笛。地面に埋めた網が跳ね上がり、無数のリンゴが赤い弾丸となって空を切った。まだ熟し切らぬ緑のリンゴは茎を鞭のようにしならせて跳びかかり、老木の幹は怒りをあらわに軋んだ。傷ついた仲間を運び出す衛生兵の叫び、砕けた種が跳ね散る乾いた音。アルノは己の鼓動が果樹園の鼓動と同調していくのを感じ、得体の知れぬ畏敬に震えた。


それでも隊列は乱れない。前衛が盾で弾き、後衛の魔香草兵が熱したシナモンの煙で敵の動きを鈍らせる。酸味の霧が漂い、目が痛む。


「いまだ!」団長の号令で、アルノは初めての投槍を放った。矢より速く飛んだ槍は網に絡め取られたリンゴの中心を貫き、ぱん、という爽快な破裂音が響く。甘い芳香とともに赤い皮が霧となって散り、残党は一斉に転がり逃げた。


戦いは終わった。夜が明けるころには果樹園は静けさを取り戻し、騎士たちは戦果を称え合った。アルノも砕けたリンゴ汁にまみれた兜を脱ぎ、勝利のリンゴ酒で喉を潤す。しかし彼の胸には奇妙な違和感が残った。あまりにあっけなかったのだ。


聞けば老兵たちは口を揃えて「森が静まり返るときこそ真の脅威が息を潜めている」と語るという。折れた枝が血痕のように黒く染まり、地に吸われた果汁が不気味に脈動しているのを見て、アルノは言いようのない視線を感じた。誰かに見張られている――いや、森そのものが彼らを観察しているのだ。


ふと、遠い樹海の彼方で風がざわめいた。低いうなりが大地を震わせ、朝焼けの空に黒い影がゆっくりと姿を見せる。巨大な何かが枝を押し分け、無数の葉を従えてこちらを見下ろしている――


甘く、深く、王冠のような萼を戴く、凶々しい気配。


「……女王だ」──医師がモニター越しに囁いた。

顕微鏡下の円形闘技場で、白血球の騎士団に追いつめられた赤い球体は、スパイクを王冠のように震わせている。

「患者さんの免疫が優勢だ。あと一歩で勝てる」

研修医アルノは手袋越しに拳を握りしめた。次の戦いは、まだ始まったばかり──。

【制作メモ】

シナリオ設計後、本文生成に ChatGPT を使用し、加筆・校正しています。

AI由来の誤りがあればご指摘ください。


【改稿のお知らせ】(2025/04/27)

巨リンゴ女王エンドを、〈免疫細胞 vs ウイルス〉の寓話オチへ差し替えました。

初版をご覧いただいた皆さま、混乱させてしまい申し訳ありません。


読了ありがとうございました! 本作は“果物×騎士団”をベースに、

免疫の戦いを重ねた掌編です。

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