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広田 蒼歌①

蒼歌視点です。

長くなったので区切ります。

 あたしの名前は広田ひろた 蒼歌あおか

物心つく頃からアイドルに憧れ、14歳の頃にアイドルオーディションに受かり……ドルフィンガールズというアイドルグループのメンバーとして活動するようになった。

最初は小規模なライブを開いたり……積極的に動画配信を行ったりと地道に努力を重ねていた。

そうした努力のかいあってか……活動範囲はテレビ……女優……声優……ドームライブとどんどん広くなっていき、ドルフィンガールズの知名度はどんどん上がっていった。

みんなが私達を応援してくれる……みんなが私達を見てくれている……。

まるで世界が私達を認めてくれているかのような気持ちに浸れるのがこの上なく心地よかった。

でも何より嬉しかったのは……大好きな両親からの声援だった。


『蒼歌、映画観たぞ! さすがお父さんの娘だな! 最高の演技だったぞ!!』


『えへへ……ありがとう! これからもっと頑張るよ』


『蒼歌、次のライブでセンターに決まったんだって? すごいじゃない!』


『うん。 今まで頑張ったかいがあったよ!』


 誰よりもあたしを愛してくれて……誰よりもそばであたしを支えてくれた両親には感謝してもしきれない。

そんな両親に恩を返したいと、アイドルとして稼いだお金を家に入れていた。

少しでも2人に楽をさせたいと思って……。

特にお父さんは、アイドルになりたいというあたしの夢を誰よりも応援してくれた。


『蒼歌! お金のことなんて気にするな。 お父さんが頑張って稼ぐからな! お前は夢を追うことだけに集中しなさい』


 ボイトレやダンスレッスン等……アイドルに必要なスキルを身に着けるために、お父さんは一生懸命働いてくれた。


『大丈夫だぞ、蒼歌。 お父さんがついてるからな!』


 挫折しそうになった時も……お父さんはいつだってあたしを慰めてくれた。

あたしにとって……お父さんは人生最大の理解者だった。


--------------------------------------


 だけど……そんな幸せな時間は突如として終わりを迎えた。

それはあたしが17歳の誕生日を迎えた日の夜……。

その日はドルフィンガールズのみんなと共にバースデイ動画の生配信に出演し……帰宅後は両親と小さな誕生日パーティーを開いた。

みんなにお祝いされて幸せに満ちた1日だった……でもその反面、はしゃぎすぎてとても疲れ切ってしまった。


「ふわぁぁぁ……眠い……限界……」


 寝る支度を済ませたあたしはそのまま自室のベッドへとダイブし……意識の奥底に吸い込まれるように眠りについた。


※※※


「……」


 何がきっかけなのかはわからないけれど、ふと目が覚めた。

覚めたとはいっても意識だけで、瞼が重くて開ききっていないし……体も重く感じて起きづらい。

だけどあたしの五感の一部は、この場に起きていた”異変”をすでに感じ取っていた。

鼻を抑えたくなるようなツンとくる生臭さ……肌に触れている生温かいもの……激しい息遣い……。

そして……ようやく開き始めた瞼の隙間からうっすらと見えたのは……見慣れたお父さんの顔。

ゆっくりと視界が鮮明になっていくと……発情期の犬のようにだらしなくなっていたお父さんの顔がそこにあった。


「おとう……さん……」


 寝ぼけた頭のままそうつぶやくと……突然お父さんは私に顔を近づけてきた。

そして……生温かいお父さんの唇が私の唇に触れた。

一瞬何が起きたのかわからなかったけど……これが世間一般的にキスと呼ばれているものだと脳が理解した瞬間、寝ぼけていたあたしの意識は一気に覚醒した。


「やだっ!」


 あたしはお父さんを勢いよく突き飛ばし、ベッドから飛び降りた。

そのまま本能的に逃げようとしたが……お父さんが足を掴んできたせいでそれは叶わなかった。


「何をするんだ? 蒼歌。 お父さんに暴力を振るうなんてひどいじゃないか……」


「おっお父さんこそ、あたしに何をしたかわかってるの!?」


「何って……ただのキスじゃないか。 親子なんだから普通だろ?」


「何を言ってるの!? 親子でキスなんて……!!」


 言い返そうとしたその時……あたしは体の異変にようやく気が付いた。

寝る前にはしっかりと身に纏っていた部屋着と胸に着けていた下着がなくなり、上半身が裸になっている。

しかも体中に生臭い液体がこびりついている。

知識でしか知らないけれど……それが男性の体液であることはすぐに理解した。

そしてそれは、お父さんのものに間違いはなかった。

あたしがそう確信できた根拠は、お父さんが衣服や下着を一切身に着けていない生まれたままの姿であたしの目の前に立っているということ……。

それらの物証や状況が一体何を指すのか……それほど頭が良くないあたしでも察することができた。

信じられないけれど……いや、信じたくないけれど……。


”お父さんはあたしを犯そうとしている”


 直感的にあたしはそう確信できた。

事実……たった今、あたしのファーストキスまでお父さんは奪った。

いくら大好きなお父さんだからって……ひどすぎる!!


「やめてっ! 離して!!」


「どうしてそんなことを言うんだ、蒼歌。 大好きなお父さんだぞ?」


 お父さんはあたしを逃がさないように覆いかぶさり……出しっぱなしの胸を触り、首筋まで舐めてきた。


「やめてっ! 気持ち悪い!!」


「なっなんて口を利くんだ蒼歌。今までお父さんがどれだけお前の力になったと思ってるんだ?

愛する蒼歌がアイドルを目指したいと願ったから、お父さんは今まで頑張ってきたんだぞ?

夢のためとはいえ……可愛い蒼歌をいやらしい男共の視界にさらすことが、お父さんにとってどれだけつらかったか……わからないのか?」


「知らないわよ!!」


「俺はなぁ! 蒼歌のことをずっと……1人の女として愛していたんだ!」


「なっ何を言って……」


「そりゃあ、生まれた頃は可愛い娘だと思って愛してたさ……だけど、蒼歌が成長していくうちに、どんどんお前に惹かれていったんだ!」


「変なこと言わないで! あたし達、血の繋がった親子じゃない!」


「血が繋がっているからなんだ? 俺は男で蒼歌は女……男と女が愛し合うことは普通のことじゃないか」


「こんなことして……お母さんに申し訳ないと思わないの!?」


「お母さん? あぁ……あれはもう女じゃない。 結婚当初は愛していたが……蒼歌を生んだ今のあいつはただのおばさんだよ。

もう愛情なんて欠片も残っていない。

許されるのなら……あんなおばさんとは別れて、蒼歌と再婚したいくらいだ」


 あたしにはお父さんが……この人が何を言っているのか全く理解できなかった。

嫌悪感を通り越して……ただただ恐怖心だけがあたしの心を縛り付けている。


”本当にこの人はあたしのお父さんなの?”


 そう疑いたくなるほど……今までの優しいお父さんと目の前にいるケダモノはかけ離れていた。


「ずっとこの日を待っていた……蒼歌が17歳に実ったこの日を……」


「ひぃ!!」


 お父さんはあたしのズボンとパンツに指を掛けると、一気に引きはがし……あたしの下半身を露わにする。

これから何をする気なのかは明白だった……。

お父さんは……この男は、あたしのファーストキスを奪っただけに飽き足らず、あたしの純潔まで奪うつもりだ……。


「いやっ!!」


 あたしは絶対にそれだけは阻止しようと懸命に抵抗した……。

だけど体格的にそれは多少の時間稼ぎにしかならない。


「大丈夫だよ、蒼歌。 お父さん……優しくするからさ」


 いやらしい笑みを浮かべながら、お父さんは膨張した下半身をあたしの下半身に押し付けてきた。


”絶対に受け入れたくない!!”


 あたしは抵抗しながら、辺りに何かこの状況を打破できるものがないかを探した。

すると……視界に映ったのは偶然床に落ちていたあたしのボールペン。

あたしは考えるよりも先にペンにすばやく手を伸ばし……掴んだペンの芯を出して、あたしに絡みついているお父さんを刺した。

刺した場所は、膨張した男性のアレ。

絶対に犯されたくないという拒絶とお父さんを狂わせた欲望の象徴を壊したいと言う怒りから、その場所を選んだ。


「がぁぁぁぁ!!」


 女であるあたしには想像できないほどの激痛なんだろう……。

お父さんは下半身を両手で押さえながらもがき苦しみだした。

あたしはその隙に部屋から出ることに成功した。


「蒼歌! どうしたの!? 何かあったの!?」


 お父さんの悲鳴を聞いたお母さんが寝室から飛び出して、あたしの元へと駆け寄ってきた。

ちなみにあたしがあれだけ部屋の中で騒いでいるのに、どうしてお母さんが気づかなかったというと……。

あたしは自主的にボイトレやダンスの練習をするために、自室を防音にしているからだ。

でも今は、ドアを全開にしているから防音効果は失われている。


「蒼歌……一体何があったの?……!! あっあなた! どうしたの!?」


 あたしを介抱してくれたお母さんは状況が理解できずに動揺したみたいだけど……何かあったと直感的に察し、警察と救急車を呼んでくれた。


--------------------------------------


 お父さんは病院に搬送され……手術の結果、命に別状はなかった。

そしてあたしは……家に駆けつけてきた警察官に、お父さんに犯されかけたことを説明した。

もちろんこんな非現実的な話を口頭だけで説明した所で、誰も素直に信じようとはしない。

あたしだって、当事者でなければそんな創作みたいな話は信じない。

だけどその後の警察の捜査によって、あたしの証言が真実であるという証拠がお父さんのスマホから出てきた……いや、出てきてしまった。


「なにこれ……」


「……」


 お父さんのスマホには、明らかにあたしを盗撮した写真や動画がいくつもも保存されていた。

あたしが寝室で着替えている時……あたしがトイレで用を足している時……あたしがお風呂に入っている時等……あたしの性的な写真ばかり……。

しかもこの写真を元にして家中を調べると、何台もの隠しカメラが発見された。

それらは全て、お父さんが購入したものだということもすぐに判明した。

保存されていた写真や動画がネットにアップされた形跡はなかったようなので、個人的に収集していたものだったみたい。

さらに、あたしの寝室に設置されていた隠しカメラに……あたしがお父さんに犯されかけた場面がばっちり映っていた。

考えなしの犯行だったのか……バレないと高をくくっていたのかは知らないけれど……。

お父さんは盗撮と強姦未遂の罪で逮捕されることになった。

あたしもショックだったけど……お母さんもかなりのショックを受けた。

当然の話だ……。

心から信頼していた夫にこんな形で裏切られたんだから……。


--------------------------------------


 それから数週間後……お父さんは裁判で有罪判決を受けて刑務所に服役することになった。

最後まで愛ゆえの行動だとか訳のわからないことを口走っていたけど……もう哀れみすら感じる。

もちろん、お母さんはお父さんと離婚し……あたしはお母さんについていくことにした。

だけど……あたしの悪夢はこれで終わりじゃなかった。



次話も蒼歌視点です。

蒼歌がアイドルをやめた経緯を書き終えたいと思います。

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こっちも近親者か。
67〜118行が直前の内容とダブってます
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