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海野 瑞希②

瑞希視点です。

 風呂場に来た私達は室温調整と後始末を含めて、浴槽に湯舟を張った。

浴室内が十分整った所で、私と大洋は衣服と下着を脱ぎ……浴室へと足を踏み入れた。

その一連の流れまで、私達は沈黙を守り抜いた。

何も言葉が浮かばなかったんだと思う……少なくとも私は。


--------------------------------------


「……」


「……」


 大洋と一緒にお風呂に入るなんて、何年ぶりだろう……。

まさか高校生になった大洋とお風呂に入ることになるなんて夢にも思わなかった。

いつの間にかこんなに大きくなっていたんだ……この子。

これから大洋と体を重ねるなんて……今でも実感が湧かない。


「とっとりあえず、体を洗いましょうか」


「うん……」


 行為の前に、礼儀としてお互い体を洗うことにした。

普段入っている浴室で、普段使っているシャンプーで、普段通りに体を洗っている。

ただ、普段と違うのは……ここで大洋も体を洗っているということ……。

それだけでここが違う世界のように見える。


「……」


 体を洗っている最中……私の脳裏に潮太郎の顔が思い浮かんだ。

大洋を助けるためとはいえ、夫以外の男性と体を重ねることには違いない。

私は潮太郎以外の男を知らない……。

浮気や不倫ではないことは明白だけど……心のどこかで罪悪感がわずかながら芽生えているんだろう……。

このまま大洋を助けるべきだという親心と……貞操を守るべきだという妻としての心が私の中で争っている。

それが要因となり、この土壇場で私に迷いや不安を与えているんだ。


※※※


「大洋……母さん、終わったら。 次はあなたが洗いなさい」


 軽く体を洗った後……私は湯舟に浸かって待っている大洋に声を掛けた。

大洋はゆっくりと湯船から立ち上がった……。


「!!!」


 私の目に映ったのは……異様なほど盛り上がった大洋の下半身だった。

潮太郎よりもすさまじいモノ……滴る水が張り付き、照り返すように輝いている肌はまさに若さの証。

ここ最近、夫とは体を重ねていなかったからか……それとも私の中の女が異性として大洋に反応しているのか……。

どちらにしても……私が太洋の体を見て発情しているのは言い訳の仕様がない事実だった。

私は大洋と入れ替わるように浴槽に浸かった。


※※※


 ひとしきり体を洗い終えた後、大洋は浴槽に足だけ浸かり……はちきれそうに盛り上がった下半身を私に見せつけるように浴槽内で仁王立ちした。


「母さんお願い……もう頭がどうにかなりそうなんだ」


 まるで発情期を迎える犬のように息が荒く、私に下半身を押し付けてくる大洋の必死な姿に……私はもうこらえきれないんだと理解した。

今まで堪えていたからだろうけど……もしかして、私の体に大洋も反応しているの?

私を……女として意識しているということ?

そう思うと、なんだか嬉しさがこみあげてくる。

私達は血の繋がった親子ではあるけれど……いえ、親子だからこそ、愛する息子から女として求められることに、母としてこれ以上の幸せなんてあるかしら?


「大丈夫よ……母さんがあなたを助けてあげるからね」


 私はその想いを示すように、大洋と唇を重ねた。

そしてその直後、大洋は性に目覚めた獣と化し……私は1匹のメスとなった。


※※※


「はぁ……はぁ……はぁ……」


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 気が付くと、私達は汗だくで脱衣所に横たわっていた。

大洋はまだ子供だから本番までしなくても、果てるだろうと思っていた私が甘かった。

彼の性欲は潮太郎なんか話しにならないくらいにすさまじいものだった。

潮太郎のために買ってきた避妊薬を飲んではいるけれど……買ったの大分昔だし……、大量の体液を注がれたんだ……。

正直、妊娠が何度も頭を過ぎったけど……私は大洋を拒まなかった。

彼から与えられる潮太郎以上の快楽に逆らえなかったんだ……。

大洋を救うためとはいえ・・・・・・潮太郎を裏切っているような感覚が、背徳感となって私の体にさらなる熱を加えた。

途中からほとんど記憶がない……。

いつの間に脱衣所へ出たのかも覚えていない……。

体中、汗と熱に包まれている……。

体が重いと感じるほどの疲労感が体にのしかかるけど……それがたまらなく心地よい。


「……」


 私の隣で力尽きた大洋がすやすやと眠っている……。

疲れ果ててしまったんだろう……。

悪いものを全て吐き出してスッキリしたようなその寝顔は……途方もなく愛おしい。

愛おしくてたまらなくなった私は大洋の頭を胸に寄せた。

若さ特有の汗臭さが私の鼻孔をくすぐる……。

体がまだ熱を保っている……。

潮太郎との行為でもここまで心が高ぶったことがなかった。

周囲の何もかもがキラキラして見える……世界が広く感じる……。

一体私はどうしてしまったのか……この時はまだよくわかっていなかった。


--------------------------------------


 それ以降も私達は定期的に体を重ねるようになった。


「母さん……したい。 いいでしょ?」


「仕方ないわね……少しだけよ?」


 学校から帰宅した大洋が真っ先に私の元へと駆け寄り、甘えるような声で行為を求めてくる。

そんな愛おしい息子の願いを拒否することなんてできるわけもなく……私は何度も大洋を受け入れた。

もちろん避妊は徹底していた。

大洋のためとはいえ、妊娠はさすがに家庭崩壊につながる可能性がある。


「母さんもう1回……もう1回だけ……これで終わるからさ」


「もう……そろそろお父さんが帰ってくる頃だから、これで終わるのよ?」


 大洋の性欲はすさまじいものだった……。

耐久力……アレの大きさ……初々しさ……全てが潮太郎をはるかに超えていた。

もうキスだけで体中が発情するくらい……私は大洋に夢中になっていた。

ちなみに大洋とのことは潮太郎には話していない。

大洋が落ち着くまでの関係とはいえ、言ったらきっと拗ねてしまうわ。

男の人はみんな焼きもち焼きだもの……。


--------------------------------------


「……」


 家事の最中、ふとしたことで大洋の顔が頭を過ぎる……。

それ同時に、彼から与えられる快楽が全身に蘇る。

大洋に舌で舐められた時の感触……あの子の体をまさぐった時の指の感触……。

そして……私の体を何度も貫いた大洋の熱いモノ……。


「はぁ……はぁ……」


 想像しただけで……発情した犬のように体が熱を発し、無意識に股をもじもじとさせてしまう。

この現象は……大洋と体を重ねてから度々起きるようになった。

それが何を指し示すのか……私にはわかっていた。

私の体が異性として大洋を求めているんだ……たまらなくほしいんだ……あの快楽を……。


「ただいま……」


「おかえりなさい、大洋。 お風呂沸いてるから、一緒に入る?」


「うん」


 私はいつからか……自分から大洋を誘うようになっていた。

もちろん大洋は私の誘いを受けてくれる。

それはつまり……大洋も私を女として求めてくれているということ。

決して性のはけ口だけの存在とは思っていない。

愛する息子と心も体も結ばれるなんて……母親としてこれ以上の幸せはない。

だけど忘れてはいけない……。

私には潮太郎という夫がいるということを……。

いくら大洋と体の相性が良いからって、潮太郎を忘れることは私には許されない。

私は潮太郎の妻で、大洋は私の息子……それだけは決して忘れてはいけない。

忘れては……いけなかったんだ……。


--------------------------------------


「母さん……今日も一緒にお風呂に入ろうよ」


「えっ? でも今日は……お父さんが早めに帰ってくるのよ?」


「まだ時間はあるでしょ? それにいつも帰る前にラインしてくるんだし、大丈夫だって……」


 この日は潮太郎が通常時間でいつもより早く帰宅する予定だった。

さすがに今日はまずいと思ったけど……大洋の言う通り、帰宅まで時間があるし……帰宅前に潮太郎はラインを送ってくる。

食材はすでに買ってあるから……ラインが送られてきたら、簡単な料理を作って待っていれば良い。

大洋はもう辛抱たまらないと言わんばかりに、上目遣いで私の腕を掴んでくる……。

そんな風に求められたら……私だって我慢できなくなるじゃない。


「そっそうね……」


 私達は欲求を抑えきることができず、2人で風呂場へと向かった。


「母さん早く!」


「えっえぇ……」


 湯舟を張るのも待ち遠しい大洋は、互いに全裸になった途端……私を風呂場へと強引に連れ込んだ。

そしてそのまま行為に及ぶと……私も何も考えられなくなり、ただ快楽だけを求める獣とへと堕ちた。


※※※


「大洋……お母さん……幸せよ」


「幸せ? 父さんとシテいる時よりも?」


「えぇ……私の心は大洋だけのものよ」


「母さん……愛してる」


「私もよ……」

 

 互いに愛をささやく私達……。

ここにいるのは親子ではなく、1匹のオスとメスなんだ……。

そして……今の私は大洋だけの物……。

今この時だけは、大洋の女……。

はぁぁぁ……幸せ……。


バンッ!!


 だが……その幸せは突如として泡のようにパッと消えてしまった。


「あっあなた!!」


「とっ父さん!!」


「お前達……これはどういうことだ? 説明しろ」


 ドアの前に立っていたのは……激怒している潮太郎だった。

どうして潮太郎が……最初はそう思ったが、よく考えたら早めに帰ると言っていたんだから当然だ。

むしろ、帰宅前にラインが来るとわかっていたのにスマホを脱衣所に置きっぱなしにしていた私がうかつだったんだ。


「えっと……違うのよ。 たまには親子水入らずでお風呂に入ろうって大洋にせがまれちゃって……」


 無意識に出た苦しい言い訳だったが……当然、潮太郎には通用しない。

私達は……潮太郎に全てを話すしかなかった。

でも大丈夫……。

潮太郎は私と大洋を愛している……だからきっと、わかってくれる。

話し合えばまた……いつも通り、3人で幸せに暮らせるわ。


「お前……自分が何をしたのかわかっているのか!?」


「わっ私が何をしたというの!?」


「何をしただと!? 血の繋がった母親と息子が体を重ねてんだぞ!? それがどれだけ常識を逸脱したことなのかわからないのか!? お前はいつからそんな救いようのない馬鹿に陥ったんだ!?」


 だけどどういう訳か……潮太郎の言葉には常に怒りが纏っている。

確かに黙っていたのは悪いとは思うけど……そこまで怒ることなの?

私達は親子……親子で体を重ねるなんてことはそうないかもしれないけれど……別に犯罪行為じゃない。

無論、不倫行為でもないわ。

だって相手は私達の血を分けた息子だもの……。

言わばこれは……親子のスキンシップ。

それを何度も潮太郎に説明したけれど……彼はわかってくれなかった。


「大洋! お前もお前だ! いくら多感な時期だからって、実の母親とこんなことをして自分が恥ずかしくないのか!?」


 それどころか、大洋にまで強い口調で責め立ててくる始末。

一体、潮太郎はどうしてしまったというの?


「ねっねぇ……あなた。 もういいでしょう? こんなのちょっとした親子のスキンシップだとでも思えば……ね?」


「そうだよ父さん。 それに俺達……家族じゃないか。 これからも3人で仲良くやっていこうよ」


 私と大洋が潮太郎の怒りを鎮めようと言葉を掛けるも……返ってきたのは冷たい言葉だった。


「離婚しよう……親権はお前に渡す」


 それは……家族という物語が終わる、終幕の合図だった。

次話も瑞希視点です。

次で区切りをつけて、大洋視点に行きたいと思います。

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