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海野 大洋③

大洋視点です。

思ったより長くなりました。

 父さんが家を去ってから俺は母さんと家で2人きりの生活を送ることになった。

離婚時の財産分与と父さんからの養育費……それに母さんのパート代もあるので当分の生活費は保証されていた。

俺自身もバイトをしていたが……アオカちゃんにほとんど捧げているから初めからないものとして考えていた。

あと……父さんと母さんの離婚理由だが、周囲には性格の不一致ということにしていた。

俺と母さんが体を重ねたくらいで父さんがブチキレた……なんて恥ずかしくて言える訳がない。

父さんもおじいちゃん達もそれでいいと、口をつぐんでくれた。

その影響か……近所の人たちや学校の連中は俺に同情的だった。

両親が離婚したことで俺が傷心していると勝手に思っているらしい。

ショックだったことは事実だが……もうどうでもいい。

父さんが自分勝手に家族を捨てるというのなら……俺もあの人を養育費だけ運んでくれるATMとしか思わない。

それに父さんがいなくなったことで、思う存分……母さんと家で性を発散することができる……そう考えたら、母さんと2人きりで生活するというのも良いものだ。


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「母さん……かあさぁん!!」


「大洋……いい!! いいわぁ!!」


 気兼ねなく母さんを抱けるというのは実に良い。

特に母さんを後ろから突くのが最高に気持ち良い。

単純な相性が良いから……だけじゃない。

そこには俺にしか適用されないメリットがある。

実は母さんとアオカちゃんの後ろ姿はかなり似ているんだ。

どちらも黒髪ロングで、身長もやや低め。

母さんは年齢よりも若く見えるから、肌の差もそこまで違和感がない。

スタイルもアオカちゃんには敵わないけど、そこそこ良い。

つまりはだ……後ろから母さんと繋がれば、疑似的にアオカちゃんと繋がっているような感覚になれる!!

まあ似ているとは言ったが……アオカちゃんと後ろ姿が似ている女なんて探せば結構いるし、似せようとすれば誰でも簡単になれると言えばそれまでだ……。

でも俺にとってはこれ以上の利点はない。

声はさすがに似せることはできないが……そんなの俺の脳内で変換すれば済む話だ。

それに体を重ねる際、母さんは俺を必死に求めてくる。

それをアオカちゃんとして受け入れると……なんだかアオカちゃんと結ばれたような晴れ晴れとした気分に浸れる。

全く……良い母親を持って幸せだな。


--------------------------------------


 そんな幸せな生活を送っている俺の元に……信じられない報道が飛び込んできた。

それは……アオカちゃんが実の父親と関係と持ち、さらには子供まで身ごもっているという耳を疑うような内容だった。


「なっなんだよこれ……」


 しかもネット上では、アオカちゃんが枕営業で今の人気を得ているとか……パパ活で小銭を稼いでいるとか……根拠もないばかばかしい空想話が飛び交い始めた。

当の本人であるアオカちゃんからは特にコメントや記者会見もなく……父親の方は警察に逮捕されたらしいし……俺は不安な気持ちを抑えきれずにいた。

あのアオカちゃんが……絶対のアイドルであるアオカちゃんが……俺以外の男と体を重ねた?

ハハハ……そんな馬鹿なことがある訳がない!!

100歩譲って関係があったことが事実だとしても……それはアオカちゃんが父親に脅迫されていて無理やり従わせたに決まっている。

俺のアイドルを……俺の未来の花嫁を汚しやがって……。

正直、父親って奴をぶち殺してやりたいが……すでに刑務所にいるんじゃどうしようもできない。

そんな父親……死刑にしてしまえばいいんだよ。

だって普通……血の繋がった子供を異性として見る親がいるか?

我が子とヤリたいなんて思う親が存在して良いのか?

もしそんなのが実在しているというのなら……それは親じゃねぇ、性欲しか頭にないイカれたモンスターだ。

……俺もその父親と同類?

そんな訳がないだろう?

俺と母さんは互いに公認し合って体を重ねているわけだ。

それに俺はアオカちゃんの代わりに母さんを抱いているに過ぎない……故に、俺は母さんの体こそ異性として見ているが、母さんの内面そのものはあくまで母親として見ていない。

比べてアオカちゃんの父親は、自分の娘の気持ちを無視してアオカちゃんを強姦し、自分の妻を裏切った極悪人だ。

まじで家族の大切さってやつを考えろって話だ。

マジで性欲しかないケダモノだな……。

こんな奴と比べたら、俺の方がずっとまともだ……。


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 アオカちゃんに対するネットでの批判は日に日にひどくなっていった。

彼女を擁護していたファンの中にすら……ネットのくだらない話を鵜呑みにしだし、アオカちゃんから離れてく始末……。

さらにはドルフィンガールズそのものに対し、非難が殺到し出した。

事務所側はグループ全体を守るのに必死で、アオカちゃん個人についてはほとんど守る姿勢を見せようとしない。

もう彼女を守れるのは俺しかいない……。

そう躍起になっていた矢先……恐れていた事態が起きてしまった。


【ドルフィンガールズのアオカ。 芸能界引退を発表】


 アオカちゃんが体調不良を理由に芸能界を去ってしまった。

言うまでもないが……アイドルも引退となる。

俺は頭の中が真っ白になった……。

俺のアイドルが……女神が……輝かしい光の舞台から降りてしまった……。

俺はこれから何を目的に生きればいい?

誰を愛し続ければいい?

俺は一体……どうすればいいんだ?

……いや、そんなの決まっている。


”アオカちゃんと添い遂げる!!”


 アイドルでなくなったとしても、彼女が俺の愛しい女神であることに変わりない。

誰も彼女に味方しないというのなら……俺が一生彼女を守ってやる!!


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 アオカちゃんを守ると誓った俺は、さっそく彼女の居場所を探すべく……ネットで情報を集めた。

アオカちゃん自身のSNSはすでに閉鎖されていて、見ることはできなかった。

だが関連性のある情報はまだSNSにいくつか転がっているはずだ……。

顔を出している芸能人やスポーツ選手は面倒な人間が押し入らないように、自宅や実家に関する情報を一切漏らさないようにしているのは言うまでもない。

だがネットは膨大な情報の海……。

何かの拍子に情報の一部が漏れたら……そこから情報が露見するなんて話はざらにある。

マシてや今の時代……スマホ1台あれば、簡単にほしい情報が集められる。

一般人ならともかく……元人気アイドルが相手なら情報はそれなりに集めやすいだろう。

しかもアオカちゃんはネットで大炎上したアイドル……。

引退後の生活をドキュメンタリー気取りで追いかけようとする奴らもちらほらいた。

俺はそんな奴らが提示する情報を集め……アオカちゃんの足取りを掴むべく、彼女がいそうな場所へと足を運び続けた。

探偵を雇ってしまえば楽だろうけど……依頼料だって馬鹿にはならない。

財産分与と養育費で生活に不便さはないが……ウチは決して余裕がある訳じゃない。

金に糸目をつけないほど、俺は愚かじゃない。

俺がこの先……アオカちゃんと将来結ばれたら……その時一文無しなら、彼女を不幸にしてしまう。

だから俺が自分自身で探すしかないんだ……俺の女神を……。

そりゃあ平凡な俺が探偵みたいに人探しに明け暮れるなんて、想像以上につらく感じる。

でも今のアオカちゃんは孤独だ……。

アオカちゃんは俺を待っている。

真に彼女を想うこの俺を……。

だから迎えに行かないといけないんだ……。

この俺が……。

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 アオカちゃんが芸能界を去ってから……約1年の月日が流れた。

ネットにはアオカちゃんの名前が全く出てこなくなり、彼女のことを批判し続けていた連中は……最初からいなかったかのように跡形もなく消え去っていた。


「こっこれは……」


 世間がアオカちゃんに関心を持たなくなった頃……とうとう俺の執念が実を結ぶ時がきた!

それはとある田舎町で催された小さなカラオケ大会の内容が掲載されていたSNSの記事。

そこにはカラオケ大会の様子を収めた写真がいくつか載せられていたんだが……その中の1枚にアオカちゃんの姿が収められていた。

収められていたとは言ったが……実際は見知らぬ家族の集合写真の隅に偶然映し出されていただけだがな……。

今の時代……ネット上で他人の写真を載せる際には本人の了承を得るのが必然的なマナーだ。

アオカちゃん自身がOKしたのか……拡大機能でも使わなければ目立たない位置にいるからとSNS発信者が編集を疎かにしてしまったのか……。

まあどの道、彼女がこの田舎町にいた証拠にはなる。

だがこの写真だけでは、この町にいたことを証明できても住んでいるという証拠にはならない。

そこでもう1つ決め手が必要になる。

そして俺は……ようやくそれを掴むことができた。

それはアオカちゃん関連のSNSやエックスを遡って見つけた駆け出し時代の彼女のインタビュー映像。

そこには初々しいアオカちゃんが緊張感を漂わせながら、記者からのインタビューを受けている愛らしい姿がそこにあった。

そしてその中で、俺が注目したのは……お盆休みについて……。

当時夏休み真っただ中ということもあり……記者が何気なくお盆休みに帰省するのかと世間話程度にアオカちゃんに尋ねていた。


『お盆休みは田舎の実家に帰ってのんびりします』


 そんなありきたりな回答で済ませば終わる話だったのだが……当時のアオカちゃんはまだ中学生……インタビュー慣れしていない彼女は口を滑らせ、実家のある町についての情報を少し漏らしてしまった。

本人は町のアピールのつもりだったのかもしれないが……その町はカラオケ大会が開かれていたあの田舎町だった。

まあ当時のアオカちゃんは売れないアイドルであったため、その爆弾発言はただ笑い話で済んだ。

だが時が流れた今の俺には貴重な情報だった。

カラオケ大会に姿を見せたこととその田舎町に実家があるということを踏まえると……アオカちゃんがその町に住んでいる可能性がある。

確実ではないけれど……可能性がある以上、足を運ぶ価値はある。


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 俺は学校を休み、アオカちゃんが住んでいると思われる田舎町へと向かった。

あとこれは偶然だが……その田舎町には俺と母さんを捨てた父さんの実家もある。

小さな頃は何度か家族で遊びに行ったことがあったから……ルート自体は頭に入っていた。

電車やバスを乗り継ぎ……どうにか町にまでたどり着いた。

この日は真夏日で最高気温を更新していた……暑さで汗がじわじわと噴き出してくる。

その上田舎町とはいえ、人を探すには広い。

ネット環境も都会に比べるとあまり発展していないため、ネットの力を当てにすることはできない。

…地味で大変だが、人に尋ねていくしかない。

もちろん、片っ端から声を掛けるなんて非効率なことはしない。

やるならある程度絞らないといけない。

そう思った俺が狙ったのは学生だ。

アオカちゃんが一般人に戻ったのなら、学生として人生をリスタートさせている可能性が高い。

田舎ゆえに、学校の数も都会に比べるとあまり多くない。

しらみつぶしに家を探すよりも、通っている学校を特定する方がまだ効率が良いと思って……。


--------------------------------------


 俺はさっそく駅から最も近い学校へと足を運んだ。

俺が通っている学校と比べると、校舎がボロくて汚い。

俺なら恥ずかしすぎて不登校になるレベルだ。


「あの……すみません」


 俺は帰宅していく学生の中から俺でも話しかけられそうな大人しめな男子に声を掛け、アオカちゃんについて尋ねてみた。

アオカちゃんの親戚と名乗り……彼女の家に遊びに行く途中に、スマホの充電が切れて迷ってしまったと適当な口実を述べた。

俺もそうだが……こういう意思が弱そうな人間には咄嗟の判断力というものがかなり乏しい。

見知らぬ人間がいきなり話しかけてきた……そのプレッシャーに押し負けてその学生はあっさりと口を割った。


「ひっ広田さんですか? かっ彼女は家が近いですけど……」


「そうなんですか? じゃあ申し訳ないですけど、案内してもらえますか?」


 俺はいきなり当たりを引いたみたいだ。

やはり俺とアオカちゃんは結ばれる運命なんだな……。

俺はその学生にやや強引に家へと案内させ、学校から30分ほど歩いた場所にあるアオカちゃんの家を見つけることができた。

遠目からだが、アオカちゃんの姿も確認することができた。

そのまま家に押し掛けてもよかったが……こんな汗だくのみっともない姿で愛しいアオカちゃんと再会するというのもあまり嬉しくない。

俺ははやる気持ちを抑え、一旦駅の近くのホテルに一泊することにした。


--------------------------------------


 そして翌日……。

俺は身なりを整えて再度アオカちゃんの家へと向かった。

俺の手には彼女から手渡された思い出のタオルがある。

これを俺の想いと共に彼女に捧げるんだ……。


 ピンポーン……。


 アオカちゃんの家へとたどり着いた俺は意を決してインターホンを鳴らす。

ただのインターホンだというのに……なんだか俺達を祝福してくれるウェディングベルのように心地よい音だ……。


「はーい……」


 可愛い声と共にドアが開いてくれたのは……アオカちゃんだった。

今まで映像越しや遠目でしか見ていなかったけど……間近で見る彼女の姿はあまりに眩しい。

目の前に立っただけで……俺の中にある悪いものが全て浄化されそうだ……。


「あの……どちら様でしょうか?」


「おっ覚えてないかな? 昔、ライブでこのタオルを君がくれたんだ」


 俺は思い出のタオルをアオカちゃんの目前に突き付けた。

これを見て、彼女が俺を思い出してくれば……俺達はきっと結ばれるはずだ。

そう期待に胸を膨らませていた時だった!!


「蒼歌」


 背後から聞き覚えのある声が聞こえた……。

俺は反射的に振り返ると……そこには父さんが立っていた。


「父さん……父さんがなんで、アオカちゃんの家に来てるんだよ」


「それは……蒼歌に呼ばれて……」


 父さんが馴れ馴れしくアオカちゃんを呼び捨てた瞬間……俺の中で何かが弾け、思わず口調が強くなった。


「蒼歌?……おい父さん。 何、馴れ馴れしくアオカちゃんを呼び捨てにしてるんだ? 失礼だろ?」


「彼女がそう呼んでいいと言ってたから呼んでいるだけだ。 俺達は友達だからな」


 俺はあまりに非現実的な言葉を並べ立てる父さんに飽きれた。

加齢と暑さでボケが来たのか?


「はぁ? 父さんみたいな中年のおっさんが、こんな若くて可愛い蒼歌ちゃんと友達になれる訳ないだろ?

妄想も大概にしろよ!」


 男の身勝手な妄想ほどキモいものはない。

しかもその対象がアオカちゃんのような可愛い女の子であれば……父さんのような独身の中年男が変な気を起こして何をしでかすかわかったものじゃない。

偶然の立ち位置だが、俺は父さんからアオカちゃんを守るべく……彼女を背後に隠した。


「妄想なんかじゃないよ。 あたしがしおくんにそう呼んでいいって言ったの」


 背後で守っていたアオカちゃんの口から信じられない言葉が出てきた。

しおくん?

それって父さんのことか?

なんでそんな……仲の良い幼馴染のような呼び方をするんだよ……。

アオカちゃんと父さんは……どんな関係なんだ?

パパ活?……それとも弱みを握って無理やり関係を迫っているのか?

色々考えている内に俺は怒り狂い……気が付けば父さんの胸倉を掴んでいた。


「良い歳した大人がこんな若い子にちょっかい掛けるとか……恥ずかしくねぇのかよ!? 常識ってもんがねぇのか! みっともねぇ!!」


 俺はさらに激しい口調で父さんを非難した。


「独り身に戻ったからってアオカちゃんに近づこうとしてんじゃねぇよ!!

そんなんだから母さんに捨てられるんだよ!

このエロ親父!!」


 アオカちゃんは……俺が守るんだ!!


次話も大洋視点です。

もうぼちぼち堕ちてもらおうと思います。

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