村の手前の町
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リリアは両親の元を離れ、約1週間かけて目的地手前の町にたどり着いた。道中は比較的安全な道のりだったものの、何が起こるかわからないため、男の子のような格好をして軽装で旅をしていた。しかし、これから始まる新生活のために、必要な物を整えることにした。
まずは商業ギルドへの登録を目指す。本来、ギルド登録は15歳からが原則だが、商業ギルドでは家業の引き継ぎを行う若者もいるため、13歳から登録が認められている。リリアも無事に登録を終え、旅の途中で採取した薬草をギルドに買い取ってもらった。登録料は銀貨2枚であったが、薬草の買取価格は銀貨1枚と銅貨5枚にとどまり、少し足りなかった。
登録の際、出店の仕組みについても詳しく教えてもらうことにした。
「露店は1日銅貨3枚で出店可能ですが、5のつく市の日には出店料が銅貨5枚になります。また、事前に場所を予約する場合は追加で銅貨2枚が必要です。」
その説明を聞きながら、リリアは思わず眉をひそめた。銅貨5枚あれば、朝食付きの宿に泊まれる金額だ。先行きが不透明な今、この出費は厳しいと感じた。
「もう少し安く出店する方法はありませんか?」
そう尋ねると、受付の女性は優しく答えてくれた。
「そうですね、移動販売なら銅貨1枚から始められますよ。また、特定のお客様への納品だけであれば出店料はかかりません。」
「そうですか。それなら、生活が落ち着いたらまずは移動販売から始めてみようと思います。」
受付の女性は親切で、リリアに布地屋や安い肉屋の場所を教えてくれた。
その上、私が女の子だとわかると、
「これからは女の子の格好に戻るのね?」
と、リボンまでくれた。どうやら同年代の妹がいるらしく、親しみを込めた様子だった。
「またいつでも来てね。」
手を振って見送られると、リリアは少し胸が温かくなった。一人っ子の自分にも、姉妹がいたらこんな気分なのだろうかと、ふわふわとした気持ちでギルドを後にする。
「さて、まずは食料とワンピース用の生地、シーツ、調味料を買わなくちゃ。あと、薬草の相場も調べておこう。」
そう自分に言い聞かせながら歩くリリアの足取りは軽かった。商人の娘として、物の価値を見極める目はしっかり持っている。これから何度も訪れるであろうこの町を思い描きながら、リリアは新しい生活への期待を胸に買い出しへ向かっていった。
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