旅立ち
序章:秘境への旅立ち
陽が落ちる頃、少女リリアは小さな荷物を手に、丘の上に立っていた。
まだあどけなさが残るリリアは、半年後に15歳になるため、子供と大人の真ん中にいる。
後ろには、両親が営む賑やかな商団の本拠地が見える。遠くには朝焼けに染まる商隊のテントが連なり、煙が空へと昇っている。その風景をしばし眺めた後、リリアは振り返らずに歩き出した。
リリアの両親は、小さな行商人からはじまり、定住をやめ旅商人として商団を率いる事になった。
両親はリリアも一緒に行く事を望んだが、リリアは、祖母の残した家に一人移り住むことに決めた。
「リリア、本当に一緒に行ってはくれないのかい?」
お父さんが、寂しそうに聞く。大好きなお父さん、商団の長として、威厳があってかっこいいけど(ちょっぴりお腹が出てるけど、まだまだイケてるよ)今日は少し小さく見える。
「あなた、リリアは言い出したら聞かない子なんだから、仕方ないでしょ。リリア、行ってみて辛かったら、いつでも連絡してくるのよ!」
と隼を用意してくれるお母さん。お母さんは、私と姉妹に間違えられるくらい若々しくて、きれいだ。
あ、隼を渡した後、すぐ向こうを向いちゃった。肩がふるえてる。
「お父さん、お母さん、ごめんね。でも私も、もう半年もしたら、大人として認められる年になるわ。一人で出来る事をやってみたいの。」
そして、翌早朝、両親に別れも告げず、一人旅立った。まだ誰も起きていないようだったが、煙が立っているのを見ると、丘まで来る間に朝の支度がはじまっているようだ。
「さあ、出発〜!どんな楽しい事がまってるかなぁ」
と鼻歌交じりに歩き出した。頬には一筋の涙が伝ったが、ぐいっと拭い、歩き出す。
空では隼が旋回した後、リリアの道案内をするかのように飛んで行った。